映画『ヘルボーイ(2019年版)』感想  無双系主人公は悪魔!?この世に異世界転生しちゃった!!

超常現象調査防衛局(B.P.R.D)のエージェント、ヘルボーイ。彼は、悪魔でありながら、人の世で暮らし、平和を守っていた。
ある日、飲み友達のエージェント・エステバンが音信不通になり、彼の救出に向かう。しかし、エステバンは魔物と変化していた。
仕方なく、彼をぶちのめすヘルボーイ。しかしエステバンは、そのいまわの際に、不気味な予言を垂れる、、、

 

 

 

 

監督はニール・マーシャル
イングランド出身。
監督作に、
『ドッグ・ソルジャー』(2002)
『ディセント』(2005)
『ドゥームズデイ』(2008)等がある。

また、TVシリーズ『ゲーム・オブ・スローンズ』で、
いくつかのエピソードを監督している。

 

原作は、マイク・ミニョーラのアメコミシリーズ『ヘルボーイ』。

 

出演は、
ヘルボーイ:デヴィッド・ハーバー
ブルーム教授:イアン・マクシェーン
アリス・モナハン:サッシャ・レイン
ベン・ダイミョウ少佐:ダニエル・デイ・キム

グルアガッハ:(声)スティーヴン・グレアム

ニムエ/ブラッドクイーン:ミラ・ジョヴォヴィッチ

 

 

 

海外の、日本文化をこよなく愛するオタク監督と言えば、
ギレルモ・デル・トロ。

中でも、モンスターの造型は素晴らしく、
『ブレイド2』(2002)
『パンズ・ラビリンス』(2006)
パシフィック・リム』(2013)
シェイプ・オブ・ウォーター』(2017)等で描かれた、
数々のクリーチャー達は、生き生きとしていました。

中でも、
「主演はロン・パールマン以外、有り得ない」と言って譲らず、
スタジオと喧嘩してまで作った『ヘルボーイ』(2004)は、

その世界観、評価、
共に、ギレルモ・デル・トロ監督ならではの作品と言えるでしょう。

続篇である『ヘルボーイ/ゴールデン・アーミー』(2008)も制作され、
その人気の程がうかがえます。

 

その、「ヘルボーイ」の映画が、
11年ぶりに公開されます。

しかーし、

本作は、
ギレルモ・デル・トロ監督の「ヘルボーイ」とは別物。

そう、

アメコミ原作映画お得意の、
リブート(再起動)作品なのです。

 

なので、
全くの初見でも、楽しめる作品となっております。

 

しかし、逆に、
今までの「ヘルボーイ」が好きな人は、逆に不安があるかもしれません。

『シェイプ・オブ・ウォーター』で、アカデミー賞まで受賞した、
あの、ギレルモ・デル・トロの後では、
見劣りするのではないのか?

そういう心配も、確かに、観る前はありました。

 

で、実際に本作はどうなのか?

アクション重視のホラーファンタジー!

 

そういうテイストの作風は、
普通に面白いですね。

 

更に本作は「R15」。

グロチックな、過激な描写も多く、
作品に「ダーク」な一面も与えています。

 

それでいて、
作品全体の雰囲気は、暗いものではありません。

ヘルボーイが、無双系の主人公、
それでいて、
ちょっとオトボケも交える「少年漫画」的なタイプ

 

だからです。

高い戦闘力に、
それ以上のタフネスぶり、

なのに、
イカツイ見た目に反して、
割と、繊細というか、

一々、オーバーリアクションで感情を表現する所に、
観ていて「ギャップ萌え」があります。

 

悪魔でありながら、
人間に与し、

強面でありながら、
割とビビりな所もある。

でも、一度暴れさせると、
超強い!

ストーリーも、テンポ良く進むので、

アクション好き、
ホラー、ファンタジー好きも、
充分に楽しめる作品となっております。

新生『ヘルボーイ』は、
王道少年漫画的なノリを楽しめる作品です。

 

 

  • 『ヘルボーイ』のポイント

お茶目で強い、ヘルボーイ

ダークなアクションファンタジー

生まれか、育ちか

 

 

以下、内容に触れた感想となっております

 

 


スポンサーリンク

 

  • 無双系主人公は、異世界転生

本作『ヘルボーイ』は、
無双系の主人公です。

赤ん坊時に、現世(地上)に召喚され、
人間(ブルーム教授)に教育され、

悪魔でありながら、
悪魔退治の専門家になっています。

こういう、
悪魔の力で以て、悪を制す、みたいなノリの漫画は、
本邦でも、
『デビルマン』や『地獄先生ぬ~べ~』などの作品もあります。

 

そして、本作、
異世界転生の要素もあるんですね。

昨今、ラノベなどで流行った、「異世界転生」モノは、
現実社会(風)に生きる平凡な主人公が異世界へ行くと、
そこで「無双」出来るという設定が多いですが、

本作は逆で、
「異世界」から「現世」へと転生して来ているのですね。

まぁ、その結果、
「現世」で無双出来ているという辺り、
厨二的なノリの作品なんですよね。

 

そんな無双系主人公のヘルボーイは、
硬派でありながら、
何処か、軽妙さも兼ね備える

正しく、少年漫画の主人公的な存在。

戦闘では、
攻撃力以上に、タフネスさが目立ち、
終始、危なげなくバトルを乗り切っています。

故に、本作において、
主人公の陥る危機は、
肉体的な側面というより、
精神的な部分に、フォーカスが当たっております。

 

  • 生まれか、育ちか

本作の敵役であるニムエは太古の魔女であり、
かつて、人間(アーサー王)に騙し討ちに遭い、
恨みの内に封印された過去を持っています。

その彼女が現世に復活し、
恐るべき潜在能力を持つヘルボーイに目を付け、

「虐げられている仲間を、我らで救済しよう」と、
仲間になる事を求めます。

 

自分が本来帰属している、悪魔の仲間になるのか、
それとも、
自分を育てた、人間界の肩を持つのか。

生まれか、育ちか、
その二者択一の心理的葛藤が、
本作における、メインのバトルとなっているのです。

 

勿論、
我々観客は人間なので、
ヘルボーイに人間の味方になって欲しいとは思うのですが、

よくよく観てみると、
本作において、悪魔の描写とは、
殆ど、「自然現象」レベルの害悪さであり、

強いて、排除する様な存在でも無いのですね。
(バーバ・ヤーガみたいな、明らかな害悪もいますが)

むしろ、
人間が、過去に迫害した為に、
過度に、相手の逆襲を誘っているのではないのか?

そういう考察も出来る様に作られている訳です。

 

しかし、ヘルボーイは、
迫害されている同胞の復権を目指さず、

あくまで、
自分が所属するコミュニティを守る事を選択するのです。

 

この辺り、
育ての親のブルーム教授の教育が良かったのでしょう。

『キン肉マンⅡ世 究極の超人タッグ編』で、
ウォーズマンがマンモスマンの教育を失敗し、
裏切りに遭ったのと対象的です。

 

…しかし、何処か、釈然としない部分があるのも確か。

もし、過去に人間と悪魔が同盟を結んでいたら、
もっと違った世の中になっていたのかもしれない。

どうしても、
現在、マイノリティとなっている、
悪魔側に、肩入れした見方をしてしまう部分もあります。

その辺り、
意識して、悪魔が「完全なる悪」としては描かれていない所に、

本作のバランス感覚があると思います。

 

この、観る方をも巻き込んだ葛藤が、
強面で、軽妙なヘルボーイという存在に、
深みを与えているのですね。

 

まぁ、単純に、
ミラ・ジョヴォヴィッチに誘われて、
彼女の仲間にならないのが、不思議という部分もありますがね!

 

  • オタク的知識前提のストーリー展開

本作は、
映画版「ヘルボーイ」のリブート版です。

しかし、
そのストーリー上で、

例えば、
アリスが「過去に助けてもらった」とか、
グルアガッハやバーバ・ヤーガが「過去の恨みを晴らす」とか、言うので、

観ている方としては、
「アレ?もしかして、監督と俳優は交代しても、ギレルモ・デル・トロ版と世界観は繋がっている感じ?」
と、勘違いしてしまいます

 

勿論、本篇が進むと、
昔のエピソードを挟む部分もあるので、
アリスやグルアガッハの言う「過去の因縁」も解るのですが、

しかし、
観ている間に、
過去の映画2本を思い出して、
「アリスやグルアガッハやバーバ・ヤーガって、出てたっけ?」
と、混乱してしまう部分もあるのです。

 

この様に、本作は、
ある程度「ヘルボーイ」という世界観を、あらかじめ知っている人向けに作られており、

キャラの設定を一から深く掘り下げるという描写を省略する事で、
ストーリーとバトル展開のテンポ良さを獲得しています。

 

別の世界観ではありますが、
一度、ギレルモ・デル・トロ版にてヘルボーイのキャラ設定は、描かれており、

また、
原作漫画もある事から、
過剰な説明を、スッパリ省いているのです。

 

確かに、テンポは良いです。

しかし、反面、
そういう「設定を知っている事が前提の面白さ」を描いている部分が多々、
見受けられます。

例えば冒頭、

吸血鬼の潜入捜査をしていた同僚のエステバンが、
覆面レスラーの「カマゾッツ」と名乗っているシーンがあります。

この場面も、
カマゾッツ」(カマソッソ、ケマゾツ)は、
確か、マヤ文明由来の、コウモリの見た目の悪魔だったな、
つまり、
吸血鬼の捜査をしていた人物が、コウモリ悪魔の名前を名乗るという事は、
悪魔になっちゃったんだな、

と、設定を知っていれば、
瞬時に理解出来るものとなっています。

 

バーバ・ヤーガは、
スラヴ神話のキャラクターで、
「鶏の足の上に立つ小屋」の描写で、
直ぐに、彼女だと解ります。

物語で描かれるバーバ・ヤーガは、
子供を食し、
また、主人公に助言を与え得るが、見返りを要求するという存在なので、

「鶏の足の上に立つ小屋」が出た時点で、
何か、ヘルボーイは、彼女と取引をする事になるなと、
解る様になっています。

因みに、
バーバ・ヤーガの戦闘方法は、
ゲーム「ソウルキャリバー」シリーズの「ヴォルド」を彷彿とさせます

 

ベン・ダイミョウ少佐も、
彼は、ジャガーに変身(ウェアジャガー)しますが、

それも、
人狼(ウェアウルフ、ワーウルフ、ライカンスロープ、ルー・ガルー)タイプの、
「獣頭人体」系の魔物の爪で傷付けられると、
相手と同じ魔物になる呪い、伝染病を被るという設定を知っていれば、

アリスに自分の由来を話した時点で、
豹人間に変身するな、と推測出来る様になっています。

 

また、
「イギリス」で「巨人」が「3体」というと、
イギリス出身の作家、J・R・R・トールキンの『ホビット』に出て来た、3体のトロルを彷彿とさせる部分があります。

 

そういう、
原作漫画の設定というか、
ファンタジーあるあるを知っていれば、
本作はより楽しめますが、

逆に、そういうオタク的知識を知らないと、
「アレ?これって続篇だっけ?」と混乱してしまう部分もあります

 

観る方のファンタジーリテラシーに乗っかって、
敢えて、無駄な説明を省いて、ブラッシュアップしたストーリー展開にしたというのが、
本作の特徴でもあるのです。

 

 

 

強面で、それでいて、ちょっとお茶目、
しかし、一度戦闘が始まれば、無双の強さを発揮する。

正しい少年漫画的な主人公を描く『ヘルボーイ』。

テンポ良く、
グロく、
楽しいダークファンタジーとして、
手堅くまとまった、レベルの高い作品と言えるのではないでしょうか。

 

 

現在公開中の新作映画作品をコチラのページで紹介しています。
クリックでページに飛びます

 

映画に多大な影響を与えたと思われる原作のエピソードが、コチラ


スポンサーリンク