映画『プー あくまのくまさん』感想  まさかの二次創作でやりたい放題!!?

100エーカーの森で幼少期を過ごしたクリストファー・ロビン。そこで出会ったくまのプーさんやピグレット、イーヨー、ラビット、オウル達と楽しく過ごしていた。
しかし、大学進学を機に100エーカーの森を離れたクリストファー・ロビン。残されたプー達は、冬の時代、食べるモノも無く飢え、見捨てられてしまい、遂には生きる為に仲間を食べた。そしてプー達は狂い、その元凶のクリストファー・ロビンを憎むのだった、、、

 

 

 

 

 

 

監督は、リース・フレイク=ウォーターフィールド

出演は、
マリア:マリア・テイラー
クリストファー・ロビン:ニコライ・レオン
プー:クレイグ・デイビッド・ドーセット 他

 

 

 

A・A・ミルン原作の児童小説『くまのプーさん』(Winnie-the-pooh)。
1926年に発表されたこの作品は、
E・H・シェパードの挿絵の魅力も相俟って、
世界中で親しまれて来ました。

特に、使用許可を得て映像化した
ディズニーのアニメ作品、
『プーさんとはちみつ』(1966)に始まる
「くまのプーさん」シリーズは、
アメリカ等で大人気になり、

現在でも、
ディズニーの稼ぎ頭の一人と言えるでしょう。

 

そんな世界中で愛される「くまのプーさん」。

著作権保護の期間が切れ、
パブリック・ドメイン化されたのが2022年。

これ幸いとばかりに、

プーさんが殺人鬼になって、
人をブチ殺したら、面白くね?

 

という、
身も蓋もない、アホな発想で作られたのが、
本作『プー あくまのくまさん』です。

 

本作はいわゆる、二次創作です。

悪ノリから端を発していますが、
作り自体は、割と真面目です。
(予算云々はともかく)

そう言えば日本では、
漫画やアニメの二次創作は盛んですよね。

例えば、
漫画家の「クリムゾン」さんは、
ファイナルファンタジーのキャラクターの「ティファ」を陵辱した同人作品で有名になりました。

本作は、そんなノリですかね。

もっと例えると、
『となりのトトロ』(1988)のトトロが、
メイちゃんを頭から丸かじりした様な感じでしょうか?

 

世界中で愛されるキャラクターを、
速攻で闇堕ちさせるという発想と、フットワークの軽さ。

「愛されキャラの闇堕ち」展開モノに先鞭を付けたという、
記念碑的作品と、
本作は言えるのではないでしょうか。

 

でも、映画館の客入りは、
結構、良かったンだよなぁ~

『君は放課後インソムニア』とか
『大名倒産』を観るよりは、

「プーさん」を観に行こうと考えたのでしょうかね。

まぁ、先週、
『ザ・フラッシュ』
『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』
4Kリマスター版『ビデオドローム』(1982)『氷の微笑』(1992)と、
超大作の公開が重なった為、
食傷気味になった状況で、

箸休めに丁度良い感じなのでしょうね。

 

まぁ、ぶっちゃけ本作、

典型的なB級映画です。

 

なので、過度な期待は禁物。

実際、
前半の展開はヌル過ぎて、眠くなりました。
って言うか、寝ました

しかし、
後半は見事なスラッシャー(殺人鬼)映画

元愛されキャラプーさんという過去が忖度されず、
マーダー街道まっしぐらです。

 

 

まぁ、
雑に人が死ぬ映画が観たいな~っていう、

B級映画ファンならば、本作は楽しめます。

良くも悪くも、
それだけに注力した作品です。

殺人鬼くまのプーさん、
それが、
『プー あくまのくまさん』という作品です。

 

 

  • 『プー あくまのくまさん』のポイント

パブリック・ドメインを速攻でホラー映画化するというフットワークの軽さ

思ったより殺人するプーさん

意外!?殺人鬼の葛藤

 

 

以下、内容に触れた感想となっております

 

 

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  • 普通に暴れるプーさん!!

本作『プー あくまのくまさん』は、
「くまのプーさん」と「100エーカーの森」の仲間達が闇堕ちし、

殺人鬼となって暴れるという作品。

もう、本当にそれだけの作品。

前半はかったるくて眠ってしまいますが、
プー達が暴れ出す後半は、
普通にスラッシャー映画で、面白いです。

 

パンフレットに、
スタジオジブリの鈴木敏夫とか、
AKBとかのプロデューサーの秋元康がコメントを寄せていますが、

いかにも、
実際には観ていなくて、
人から内容を聞いただけでコメントしている感が現われていて、
その点も、ウケる作品です。

 

クリストファー・ロビンが大人になり、
世間に揉まれて、人生に疲れ、
幼い頃に共に過ごしたプーに久々に会うという
プーと大人になった僕』(2018)という作品があります。

『プーと大人になった僕』とか、
実写化してヒットした『ピーターラビット』(2018)が、
原作の世界観を大事にしているとするならば、

同じ二次創作でも、
本作は悪ノリ系。

こういう「怒られちゃう」系の二次創作は、
本来不可能なのですが、

パブリック・ドメイン化した作品なら、
何しても良いだろう!?という発想が、
身も蓋もないながらも、逞しく感じます。

 

本作、
何故だが、各国で割とヒットしているそうですが、

それは、
「くまのプーさん」というキャラクター、世界観が、
予め周知されているからだと思われます。

 

映画に限らず、
創作物におけるキャラクターの魅力は、
作品の評価に直結します。

その点、本作は、
既に「出来上がっている」キャラクターを使っているので、

余計な説明が不要であり、
それだけ、
単純に暴れさせる場面を多く作られるのです。

 

「バットマン」の映画で、
毎回、両親が死ぬシーンを入れていたら、ダルいですよね。

「スパイダーマン」の映画で、
毎回、オジサンが死ぬシーンがあるのは、ダルいですよね。

「ハルク」の映画で、
毎回、放射線を浴びて凶暴化するまでの過程が描かれるのは、ダルいですよね。

 

本作では、
そのダルい部分を、
サクっと終わらせ、
「プー達、凶暴化したから」という雑な設定の説明だけで済ました事が、

逆に、良かったのだと思われますね。

 

  • 葛藤する殺人鬼

「くまのプーさん」と言えば、
メインキャラの一匹に「ティガー」という虎(のぬいぐるみ)がいます。

ですが、本作では登場せず。

どうやら、権利の問題で、名前すら出せなかったそうです。

で、
他のメンバーとして、
ピグレット、イーヨー、オウル、ラビットが言及されますが、

イーヨーは仲間に食べられ、

後半、
メインに出演するのは、
プーとピグレットのみ、となっております。

果たして、オウルとラビットも食べられたのか?
それとも、続篇で出て来る伏線なのか?

興味は尽きません。

そもそも、
原作は「ぬいぐるみ」設定ですが、
本作では「謎の生き物」設定というのが、
少し、違う所です。

 

あ、本作、
続篇が決定しているらしいですよ?

ラスト、
「マーベル・シネマティック・ユニバース」みたいなノリで、
Winnie-the-pooh will return(プーさんは帰ってくる)」って書いてあったのは、笑えました。

なんか、
結構本作で儲けたので、
予算が潤沢らしです。

 

さて、
本作は、B級ホラー映画ですが、
ちょっと、他の作品と違うポイントもあります。

その一つは、
「犠牲者の見た目」です。

 

ホラー映画において、
「死に役」は、ある意味、重要なファクター。

なので、
キャラクターとして、他と被らないように、立ててあるのが基本です。
ファッションとか髪型とかの見た目、
性格とか、言動とかで差別化されます。

しかし、
本作は、その差別化が出来ていないのです。

メインの犠牲者の女子5人組は、
自撮りエロ女子と眼鏡女子以外の3人の見分けがつきません。
5人中、3人が同じ顔(に見える)という致命的な欠点があります。

で、
メンバーで一番キャラが立っている自撮りエロ女子が最初に死ぬので、
4人中、3人が同じで、
「誰が誰だっけ?」とこんぐらがります。

まぁ、結局みんな死ぬので、
誰が誰でも同じですがね!!

更にウケるのが、
追加で殺される酔っ払い男性陣(4人組)が、
浮浪者風の見た目で、
これまた同じに見えるというのが又、
「もうわざとやってるのか?」というレベルで配慮が足りてないです。

まぁ、結局みんな死ぬので、
誰が誰でも同じですが、
「プー」の強さを際立たせる雑魚っぷりで、
仕事は見事に果たしていました

 

さて、そんな本作、
ピグレットは、割と普通ですが、

「プー」のスラッシャーとしての実力は、
かなりのもの。

その系統は、
先行するホラー映画の、
ジェイソン:「13日の金曜日」シリーズ
ブギーマン:「ハロウィン」シリーズ
レザーフェイス:「悪魔のいけにえ」シリーズなどの、

いわゆる、
不死身のパワー系スラッシャーの系譜を継いでいます。

 

そんな本作の「プー」ですが、
他の作品のスラッシャーと違う点として、
どうやら、良心の呵責があると見受けられる所があります。

 

スラッシャープーにも、
実は、過去のクリストファー・ロビンとの美しい記憶が残っている様です。

そこから見捨てられ、
可愛いさ余って憎さ百倍、
親しみが反転して闇堕ちし、恨みを抱いて凶暴化してしまいました。

しかし、
理性はどうやら残っており、
「もう、戻れない」と、悪事を繰り返す不良高校生さながら、
自分の所業を悔いながらも、
悪行を繰り返すという自己矛盾に苦しんで、涙を流している描写もありました。

 

また、その観点からすると、
クリストファー・ロビンを殺さず、
鞭打ち、
痛めつけていたのは、

恨みを晴らしていたというより、
まるで、プーが、
自分の良心を傷付ける自傷行為とも見えます。

 

不死身のパワー系スラッシャーであり、
犠牲者をいとも簡単に屠っているのに、

その実

心の中では葛藤があるというのが、
本作の「プー」の興味深いキャラ付けだと思います。

それ故に、
「お前は俺を見捨てた」と呟き、
ラストシーンでマリアをメッタ刺しにするのは、
残虐さに加え、何処か、哀切さも漂っていました

 

 

 

まぁ、基本、B級ホラー映画であり、

ホラー映画としては想像の範疇ですが、

忖度無く、プーさんを闇堕ちさせている様子に、
想像以上の奇妙さが窺えます。

愛されキャラの殺人鬼、
その辺りのアンビバレンスな感情が、
本作『プー あくまのくまさん』が、
世界中で割とヒットしている要因なのかもしれませんね。

 

 

全てはここから始まった…

 

 

 

 

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