少女ジェシーはモデルへの夢を携えて田舎からロサンゼルスに出てきたばかりの16歳。無垢なジェシーの魅力はたちまち見る者を虜にし、瞬く間に成功への階段を駆け上がってゆくが、、、
監督はニコラス・ウィンディング・レフン。
他の作品に
『ヴァルハラ・ライジング』(2009)
『ドライヴ』(2011)
『オンリー・ゴッド』(2013)等がある。
極彩色の色使い、特徴的な音楽、独特の雰囲気に
何処かデヴィッド・リンチを思わせるところがある。
彼のファンにも是非見て欲しい。
主演のジェニー役にエル・ファニング。他の出演作に
『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』(2008)
『SUPER 8』(2011)
『幸せへのキセキ』(2011)
『マレフィセント』(2014)
『トランボ ハリウッドに最も嫌われた男』(2015)等。
姉は女優のダコタ・ファニング。
身長が175センチもあってけっこうデカイ。
他、出演に
ジェナ・マローン(ルビー役)
ベラ・ヒースコート(ジジ役)
アビー・リー(サラ役)
キアヌ・リーブス(管理人ハンク役)等。
まずは予告映像を見てもらいたい。
このプロモーションビデオを作った人間は優秀だ。
というか優秀過ぎた。
これに名場面、名ゼリフ、印象に残る音楽そのほとんど全てが詰め込まれている。
よって、この予告を見て「スルー安定」と思った方はそうしてもらって構わない。
しかし、何か言いしれぬ不安感を感じた方は是非『ネオン・デーモン』を見るべきである。
予告では巧妙に秘された陰の部分にこの映画の真骨頂がある。
私が劇場で鑑賞した時、
オバチャンは恐ろしさに途中退席し、
女子高生達はロビーにて次の回を待っている人達の前で嬉々としてラストのオチについて語っていた。
いろんな意味で問題作の『ネオン・デーモン』。
あなたも観ては如何だろうか?
以下ネタバレあり
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サイン(警告)を無視するべからず
ジェシーはラストに災厄に見舞われる。
その予感は、成功への階段を登っている只中でも散見された。
部屋へ侵入する山猫。
不穏な管理人が部屋へ侵入して来る夢。
危うく押し入りに侵入されそうになる事件。
そして、決定的だったのは鏡の異様な落書き。
ジェシーはそれらの「サイン」を無視すべきではなかった。
もっと注意深く立ち回らねばならなかったのだ。
しかし、瞬く間に認められ、自分が他人より優れていると知ってしまい、ジェシーは優越感に溺れてしまった。
その傲慢さが「サイン」を見えなくさせ、正に命とりとなってしまうのだ。
自分が「不幸に会うはずが無い」と思い込んでしまうのは大変危険である。
私は、この映画を観て帰宅途中にこんな事があった。
夜、バイクで走っている。
前方は十字路で私の信号は青。
しかし、右手にふらふらしているバンが見える。
あなたはどうするか?
私はスピードを落とし、そのバンに注目した。
そいつは、何を思ったのか信号無視して十字路を直進、危うく衝突するところ、危機一髪で回避できた。
運転中は、どんなに自分が正しくても、他人を信用してはいけない。
優先道路、一方通行、一時停止、踏切、信号、それらを無視して突っ込んで来るアホは必ずいるのだ。
今回は、ふらふらしている怪しい挙動、それがサインだった。
そして『ネオン・デーモン』を観た直後、サインに敏感であった私は上手く回避出来た。
『ネオン・デーモン』さまさまである。
「サイン」とは超常現象ではなく、直感と洞察力によって得られる予測である。
あなたも、日常に潜む「サイン」を見落とさず、注意深く生きて欲しい。
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スタッフ補足
サラ役のアビー・リーは元モデル。
身長が180センチもある。
デビューはあの『マッドマックス 怒りのデス・ロード』(2015)である。印象的だった「五人の妻」の一人だ。
スティーヴン・キング原作の『ダーク・タワー』にも出演するらしく、今後の活躍に目が離せない。
特徴的で鮮烈な衣装デザインを担当したのはエリン・ベナッチ。
『ドライヴ』の衣装も手がける。
他、デレク・シアンフランス監督の
『ブルーバレンタイン』(2010)
『プレイス・ビヨンド・ザ・パインズ/宿命』(2012)
『光をくれた人』(2016)等。
どの作品も素晴らしい。
彼女の衣装が作品に花を添えているのは間違いない。
以下、核心に触れますので、必ず本編を観た後にチェックして下さい
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何故喰ったのか?
ジェシーを喰った3人には各人なりの理由がある。
私なりの解釈を披露したい。
一番分かり易いのがサラである。
彼女はジェシーを喰う事によって、彼女の美を自分に取り込もうとしたのだ。
実際、劇中でもジェシーの傷口に吸い付くシーンがあった。
また、儀式的カニバリズムにおいては、斃した死者を自らの血肉とし力とする為に相手を喰らう。
サラの行為はまさにそれだろう。
一方、ジジがジェシーを喰ったのはノリである。
彼女は整形医の口車に乗せられ、手術を繰り返している。
また、医者から「バイオニック・ウーマン」などと呼ばれても、それを嬉々として良い方にとってしまう。
とかく、利用されやすい、流されやすい感じを受ける。
そんな彼女だ、恐らくノリだけで喰ってしまったのだろうが、冷静に考えるとキモくなったのだろう。
だから、自らの犯した罪の意識で切腹を敢行するという驚きの行為をみせる。
そして、一番倒錯しているのがルビーである。
気を持たせておいて→振って→再び気を持たせて→突き放す、というジェシーは結構ヒドイ。
しかし、だから言ってフラれた腹いせに殺してしまうのはやり過ぎである。
ジェシーを殺した動機はそれでも、その目的は何なのか?
手に入らないのなら、いっそ殺して喰って一つになりたい、という不気味な思考なのか?
それとも、一度ジェシーを自分の胎内に入れ、彼女を生み直す事(象徴の行為)によって自らの(プライドの)再生を図ったのか?
私はルビーについては確たる解釈が出来ないでいる。
これは、観た人間がそれぞれ何を思うか、監督自身が観客に委ねた問題だと思う。
あなたは何を思いましたか?
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さて、次回は『ツイン・ピークス』第15章について解説したい。