映画『50回目のファーストキス』感想  お前は今までやったキスの回数を憶えているのか?

 

 

 

ハワイ、オアフ島でツアーガイドをしている弓削大輔。そのツアーの女性客相手に浮名を流し、短い関係に終始していた。恋愛より天文学と豪語し、星空を眺める毎日だったが、ある日、カフェで見かけた瑠衣に一目惚れしてしまう、、、

 

 

 

 

監督は福田雄一
「勇者ヨシヒコ」シリーズや
『コドモ警察』(2012)等のTVドラマを手掛ける一方、
映画監督としてもヒットを飛ばす。
主な監督作に
『HK 変態仮面』(2013)
『女子ーズ』(2014)
銀魂』(2017)
斉木楠雄のΨ難』(2017)等がある。

 

出演は
弓削大輔:山田孝之
藤島瑠衣:長澤まさみ
ウーラ山﨑:ムロツヨシ
藤島健太:佐藤二朗
藤島慎太郎:太賀 他

 

本作はピーター・シーガル監督の『50回目のファースト・キス』(2004)のリメイク作品です。
アダム・サンドラーとドリュー・バリモアが出演していました。

 

 

福田雄一監督と言えば、
コメディ重視の監督のイメージがあります。

その監督が挑むラブストーリー。

果たしてどんな映画なのか?
その興味で観に行った本作『50回目のファーストキス』。

 

カフェで偶然出会った瑠衣に興味を持った大輔。

アプローチが成功し、翌日も同じ場所で会う約束をします。

そして、その翌日。
瑠衣に話しかけた大輔は、キツイ言葉で拒絶されます。

あっけにとられる大輔。
その様子を見たカフェのママが大輔を外へ連れだし、説明します。

瑠衣は事故で短期記憶が1日しか持たないとの事。
瑠衣は事故の日から同じ一日をずっと繰り返していたのです。

しかし、
その事情を知った大輔は、
瑠衣へ毎日アプローチを決行します、、、

 

本作は、正に、

コメディ+ラブストーリー。

 

意外と親和性があるのか!?

ラブストーリーでありながら、
随所に挟まれるユーモアにクスっときます。

いわゆる「ロマコメ」ってヤツですね。

 

今となっては、懐かしいジャンルではあります。

 

出演者も、山田孝之、ムロツヨシ、佐藤二朗という、
「いつもの」福田組の面々。

そして、昨年の映画『銀魂』にて出演していた長澤まさみがヒロイン。

勝手知ったる何とやら、
和やかな雰囲気で気持ちの良い爽やかさがあります。

それもそのハズ、

本作はハワイロケ、
現地の美しい風景が映画の随所に拡がっています。

 

現地スタッフと協力する関係上、キチンとスケジュールが決まっていて、
逆に快適な撮影環境だったというハワイロケ。

確かに日本では有り得ない光景、風景にも癒やされる作品です。

 

コメディタッチで進むストーリー。

しかし、ユーモアがあるからこそ、
切ないラブストーリー部分も引き立ちます。

コメディ好きの方にも、
ラブストーリー好きの方にも、

等しく面白く、そして爽やかな印象を残す作品、
それが『50回目のファーストキス』です。

 

 

  • 『50回目のファーストキス』のポイント

懐かしき香りのロマンティック・コメディ

美しいハワイの風景

成就してからも続く恋愛

 

 

以下、内容に触れた感想となっております

 


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  • ハワイが舞台という豪華さ

本作『50回目のファーストキス』は、
コメディメインで作品を作って来た福田雄一監督の本格ロマコメ

コメディ部分の面白さはお手の物。

ちゃんと観客を笑わせる事が出来るからこそ、
ラブストーリー部分の切なさも引き立ちます

 

さて、本作の舞台はハワイ。

当然現地でロケをしているのですが、
この空気感、雰囲気、開放感、
とても日本では味わえない爽やかさがあります。

場所一つでこれだけ違う

日本映画ですが、
ハワイという空気感が広大さを演出しています。

特に、
瑠衣がカフェへ向かう途上の道、
『ジュラシック・パーク』や『ジュマンジ ウェルカム・トゥ・ジャングル』なども利用したクアロア・リージョナル・パークでのシーンが良かったですね。

「映画の『ジュラシック・パーク』で撮影したんだよね」
という台詞を映画の中で言うメタ発言がまた、面白い所です。

 

  • エンドレス・ラブストーリー

ラブストーリーを盛り上げる必須条件に、
「何らかの困難が立ち塞がる事」が上げられます。

『50回目のファーストキス』では、
瑠衣の前向性健忘、いわゆる、
短期記憶が一日しか持たない(寝たら記憶消去)がそれに当たります。

 

映画で言うと、
クリストファー・ノーランの『メメント』(2000)が記憶喪失を扱ったサスペンスとして有名ですが、
本作はラブストーリー。

この状況が切ないスパイスとなります。

 

恋愛が発展するのは、積み重ねのエピソードがあるからこそ

しかし、本作ではヒロインの瑠衣の主観では、
その積み重ねが無い。

この「ラブストーリー」なのに、
「ラブストーリーの前提」自体を拒否、壁として扱っているアイデアが本作の面白い所なのです。

瑠衣は起きる度に記憶を喪失する。

ならば、起きる度に、再び初恋が始まる。

状況を悲劇と捉えず、
むしろロマンティックと受け取る。

発想を180度転換している所がポイントとなっています。

 

瑠衣は目覚めると、ビデオを見て自分の状況を確認します。

そして、一日の最後には日記を付けて、
自分の記憶の代わりとします。

今は良いけれど、
10年後には、ビデオと日記を見返すだけで一日終わるでしょ?
とかいうツッコミは置いておきましょう。

さて、
ビデオと日記で自分の人生の続きを生き直す日々。

これは、
毎日初体験の連続、
自分が知らない状況に毎日投げ出される日々のストレスは想像に難くないです。

しかし、エンディングの瑠衣はそんな日々を繰り返し、
子供までいます。

つまり、
毎日、恋が成立している、という事なんですよね。

 

毎日、初めて出会う人と接する瑠衣。

一方大輔は、毎日瑠衣に自分が夫だと認め貰わなければならない。

恋が成就したら、そこでラブストーリーは終わります。

しかし、
本作ではむしろそれがスタート地点

お互いに、新しい恋を毎日続けて行く日々が始まるのです。

 

その象徴的なものが、「夜明けの星空」です。

大輔と瑠衣がハング・グライダー・リッジで初めて一夜を共にした夜、
大輔は夜明けの星空が一番綺麗で、それを瑠衣に見せたいと言います。

夜明けを見ようと二人は言い合いますが、いつの間にか寝過ごしてしまいます。

恋人同士として結ばれて、
そのエンディングとして美しい「夜明けの星空」を見ようとするも、失敗するんですね。

しかし、映画のラストシーンにて二人は「夜明けの星空」を眺めます。

それは、朝。

一日の終わりでは無く、
一日の始まりに「夜明けの星空」を眺めるのです。

これはつまり、
本作においては、ラブストーリーがそこで終わるのでは無く、
むしろ二人のラブストーリーの始まりを描いていると言えるのではないでしょうか。

 

映画によって完結するのでは無く、

むしろそこから始まるラブストーリーを描いた、
『50回目のファーストキス』はそういう作品なのだと思います。

 

 

 

昔懐かしいロマコメの香り。

ちゃんと笑わせて、
そして切なく、愛おしいラブストーリー。

ハワイというロケーションも素晴らしい。

観た後に爽やかな気持ちになれる、
そういう幸せな作品、それが『50回目のファーストキス』です。

 

 

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映画版の原作、2004年作品です

 


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