映画『ジェミニマン』感想  己に打ち克て!?つーか、本人 V.S クローン!!

DIA(Defense Intelligence Agency:アメリカ国防情報局)からの以来で、暗殺ミッションを請け負う凄腕のヒットマン、ヘンリー・ブローガン。彼は老いと衰えを感じ、引退を決意した。
その決断を、旧友のジャックに報告したヘンリー。しかし、ジャックが言うには、ヘンリーの最後の標的はテロリストでは無く、ロシアの生化学者であったとの事。何となくきな臭い雰囲気を感じつつも二人は別れたが、その夜、ヘンリーとジャックは暗殺者に急襲される、、、

 

 

 

 

 

監督はアン・リー
中国・台湾出身。
アメリカに渡り、映画制作を学び、アカデミー賞を2度獲得している。
監督作に、
『ウェディング・バンケット』(1993)
『いつか晴れた日に』(1995)
『グリーン・デスティニー』(2000)
『ハルク』(2003)
『ブロークバック・マウンテン』(2005)
『ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日』(2012)等がある。

 

出演は、
ヘンリー・ブローガン&ジュニア:ウィル・スミス
ダニー・ザカレウスキー:メアリー・エリザベス・ウンステッド
バロン:ベネディクト・ウォン
クレイ・ヴァリス:クライヴ・オーウェン 他

 

 

 

皆さん、
幼少の頃、スポーツをやっていましたか?

私が思うに、
幼少時に慣れ親しんだスポーツによって、
運動神経がどう発達して行くか決まるのだと考えています。

ざっくり言うと、

対人戦のゲーム的なスポーツ
(野球、サッカー、テニス、ラグビー、柔道、剣道 etc…)をやった人は、
勝つ為の「手段」を突き詰めるタイプになります。

一方、体力勝負、記録勝負の競技、
(陸上競技、水泳、フィギュアスケート etc…)をやった人は、
自分の限界に挑戦するタイプだと言えます。

 

後者も勿論、
対人戦の駆け引きはありますが、
前者ほどではありません。

むしろ、
如何に、己に打ち克つか?

時に、結果より、
その過程が重視され、拘りがちになるのが、
体力勝負のスポーツ競技なのだと言えます。

 

そう、
最大の敵は、自分。

自分を納得させる為には、
楽な攻略法など無く、
正攻法で突破するしかない故に、
最も手強い相手と言えるでしょう。

 

そんな「自分」が、
実際に、目の前に肉体を持って現われたとしたらどうか?
しかも、自分より若い!!

本作『ジェミニマン』は、

自分自身戦いを描いた作品と言えるのです。

 

…まぁ、見た目通りですがね!

 

ヒットマンとして成功したヘンリー。

そんな自分が引退間際に、
これから全盛期を迎えようとする、
若かりし頃の自分が現われる、、、

これって、どういう事?

 

というのが、メインのストーリーですが、

ヘンリー(現在のウィル・スミス:50代)に、
若いヘンリーこと、「ジュニア」(若いウィル・スミス:20代)が対面する訳ですが、

この若ウィル・スミス、
なんと、フルCG!!

 

このビジュアルインパクトが強いです。

 

ほ~ん、そう?それで?
と、いう印象でしょうが、

何が凄いというと、
実在の人間に見えると言う事。

 

最近のCGアニメーションの技術は進化し、

例えば、
去年の『プーと大人になった僕』(2018)は、
ぬいぐるみが喋っているとしか見えませんでしたし、

今夏公開された『ライオン・キング』(2019)なんかは、
もう、実物のライオンが演技している風にしか見えませんでした。

ぬいぐるみ、
動物、
ときて、
とうとう、人間のCGでも違和感がなくなった

短期間で技術レベルが数段進化する、
このスピード感が、個人的には衝撃的です。

 

「ジュニア」の演技は、ウィル・スミス自身が、
アクションシーンは、スタントマンが演じ、

そのモーションキャプチャーを元に、
一から、アニメーションの存在「ジュニア」を作り上げているのです。

 

映画のCGキャラクターと言えば、

『ターミネーター2』(1991)のT-1000型、
『ジュラシック・パーク』(1993)の恐竜、
『マトリックス・レボリューションズ』(2003)のエージェント・スミス、
『アイアンマン』(2008)のアイアンマンなどを思い出しますが、

現在に至るまで、
映画の観客が違和感を感じないのは、
非・人間タイプのCGキャラに限られていました。

ですが、本作では遂に、

人間タイプのCGアニメーションキャラクターにて、
「不気味の谷」を越える事に成功しているのです。

 

 

人間は、自分に似た存在
もしくは、
自分が慣れ親しんだ存在の、
「良く似た偽物」に、強烈な違和感と不快感を感じます

ジョーダン・ピール監督の映画、『アス』(2019)は、
それを題材にした映画ですね。

なので、
「CGで作った人間」という存在に、
まるで、リアルな人形を見る様な違和感が、
今までの映画や、ゲーム作品にはありました

それでも、
今までは、
その「違和感」も味として楽しんでいた訳ですが、
本作では、
言われないと気付かないレベルのクオリティなのです。

 

本作の一番の目玉は、
ぶっちゃけ、それ。

CG人間の凄さを観て!って事です。

 

ウィル・スミス本人曰わく「ギャラが、俺の2倍かかっている」という、
CG人間「ジュニア」の凄さを観るだけでも本作は価値があります。

 

本作は、
そのCGキャラを違和感なく画面に映すため、
様々な演出が施されています。

その一つに、
背景すらも、合成にて撮影しているという点があります。

背景も作り物だからこそ、
CGキャラクターが、背景の中で浮かなく見えるのですね。

この様にして観客は、
CGキャラを観て、違和感を感じないという感覚、
=自分の若い頃を観て、違和感を感じないヘンリー・ブローガンの感覚という、
主人公が感じる、「自分と良く似た者を見ているのに、違和感を感じない」事の違和感を感じるのです。

だからこそ、
フルCGアニメーションで、若いウィル・スミスを作る必要があったのですね。

 

まぁ、それ以外の部分、
ストーリーは強引過ぎて、ツッコみ所満載ですが、

アクションは、何も考えなくても、
普通に楽しめます。

 

映画の演出技術の歴史に名を刻んだ作品『ジェミニマン』、
一見の価値ある作品です。

 

 

  • 『ジェミニマン』のポイント

人間タイプのフルCGアニメーションキャラの凄さに驚愕!!

若い肉体 V.S 老いた人間の説得力

ツッコみ所満載のストーリーを、逆に楽しむべし

 

 

以下、内容に触れた感想が、もうちっとだけ続くんじゃ

 

 


スポンサーリンク

 

  • 若い肉体 V.S 老いた人間の説得力

フルCGアニメーションで作り上げたキャラクターが凄い作品、
『ジェミニマン』。

本作では、
老いたウィル・スミスが、若いウィル・スミスと対決するのですが、

そのバトルの、
互いの武器が違う所が、面白い所。

 

若いウィル・スミスこと「ジュニア」は、
その肉体を武器に、
老いたウィル・スミスこと「ヘンリー・ブローガン」を圧倒します。

師匠も同じであり、
ヘンリー・ブローガンを仕込んだノウハウで、徹底的に鍛えたという設定であるなら、
若い方が、体力的も、技術的にも勝っているのです。

 

対するヘンリー・ブローガンは、バトルでは勝てない、
ならばどうするのかというと、
人生経験を語るという「説得力」で対抗するのです。

 

何不自由なく暮らしていても、
しかし、
人生にて「家族」を作れなかったという過去を持つ、ヘンリー。

父は若い頃に出奔し、
母とも、疎遠の内に死に別れしています。

そういった、
家族の欠落を抱えるヘンリーは、

同じく、
戦闘力に特化した生活を営むジュニアが、
自分と同じ道を進むと、虚しい人生を送る事になると、

ヘンリーは語るのです。

 

人は誰しも、
「人生、これを、こうしておけば良かった」と、
後から後悔する事が、多いと思います。

誰もが、
『北斗の拳』のラオウの様にはいかないのです。

しかし、
もし、自分と同じ人物が現われて、
その人物が、
自分が歩んだ「誤った道」を是正してくれるのなら、

それは、
ある意味、
自分の成功でもあるのです。

 

そういう意味で本作は、
ヘンリー・ブローガンの視点で見ると、
ちょっと、感慨深いものがあります。

 

 

ストーリー展開自体は強引ですが、

本作『ジェミニマン』は、

CGを見せたい、
若さと老いの対決を見せたい、

という、
観せたいものを表現するというテーマ性においては、

丁寧な作りの良作と言えると思います。

 

 

現在公開中の新作映画作品をコチラのページで紹介しています。
クリックでページに飛びます

 

 


スポンサーリンク