プエルトリコの医療開発施設にて、人間の意識をロボットに移植する実験をしている神経科学者のウィリアム。実験は成功したかに見えたが、被験者は暴走し、研究自体の存続も危ぶまれてしまう。そんな折り、気分転換に家族と週末を過ごすハズが、交通事故で、妻と子供3人が死んでしまう、、、
監督はジェフリー・ナックマノフ。
TVドラマシリーズの監督なども手掛ける。
他の長篇映画監督作に
『トレイター 大国の敵』(2008)がある。
出演は、
ウィリアム:キアヌ・リーブス
アリス:モナ・フォスター
エド:トーマス・ミドルディッチ
ジョーンズ:ジョン・オーティス 他
クールで、飄々とした感がある、キアヌ・リーブス。
イケメンよりの見た目ですが、
意外にも、昔から変な映画に出演し続けている印象があります。
アクション映画の出演が多いですが、
SF作品にも、
大ヒットした『マトリックス』(1999)とその続篇や、
ビートたけしと共演した『JM』(1995)、
フィリップ・K・ディック原作、
奇妙な映像のアニメ作品『スキャナー・ダークリー』(2006)
ハリー・ベイツ原作の短篇小説の映画化であり、
1951年公開の『地球の静止する日』のリメイク作である、
『地球が静止する日』(2008)、
など、
印象的な作品に、多く出演しています。
そんなキアヌ・リーブス出演の、
SFであり、
アクション要素もある作品、
それが本作『レプリカズ』です。
不意の交通事故で家族を喪ってしまうウィリアム。
その事実を受け入れられず、
ウィリアムは、禁断のクローン再生に手をだします。
ロボットの開発をしている会社ですが、
何故か(!?)たまたま?
クローン研究も行っており、
しかも、
たまたま地下室に放置されていたクローン装置を盗み出し、
友人のエドを半ば脅し、
なだめすかしつつ、
家族をクローン再生させようとします。
「実験でロボットが暴走したのは、生身でなかったからだ」
そういうウィリアムは、
死者の記憶を抽出し、
クローンの脳に移植して、
家族を取り戻そうとするのですが、、、
ちょこっと粗筋を語っただけで、
それでも何となく気付いてしまうと思いますが、
本作、
割とツッコみ所が多いです。
最近の映画の脚本は、
割と隙が無く、
整合性に汲々としている印象がありますが、
本作は、
「細けぇ事は、いいんだよ!」
と、言わんばかりに、のびのびと作っています。
観る方は、
その開き直りぶりを楽しむのも、また一興です。
とは言え、
その作品テーマは、面白いモノがあるのは事実。
科学技術を使える立場に居るとして、
あなたなら、どうする?
それが、倫理や道徳に抵触しても、
家族を蘇らせるのか?
それを、観客に問いかけてきます。
最も、
本作はツッコみ所満載ですし、
何よりエンタテインメント。
肩肘張らずに、
楽しみながら観られるのが、良い所。
その意味では、
予告篇のナレーションとして立木文彦を採用し、
去年の『ランペイジ 巨獣大乱闘』(2018)をパロった感じの作りにしたのは、
作風に、
意外にも作風と合っていると思います。
あのコマーシャルを観て、
ワクワクした人なら、
ツッコみつつも楽しめる、
『レプリカズ』はそんな作品と言えるでしょう。
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『レプリカズ』のポイント
倫理や道徳に抵触しても、手段が有るなら実行する?
ギャグスレスレの暴走!
ツッコみ所も楽しめ!
以下、内容に触れた感想となっております
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死者蘇生とAIとクローン
交通事故で死んだ家族を、
クローンと記憶移植で蘇らせる。
一言で言えば、
『レプリカズ』は、それにまつわるあれこれを描いた作品と言えます。
その、本作で描かれるのは、
死者蘇生とAIとクローン。
いずれも、
文学や映画作品では禁忌(タブー)として扱われる事の多い題材ですが、
それを一堂に会したのが、
本作の面白い所。
死者蘇生と言えば、
古くは、W・W・ジェイコブズの怪奇短篇小説『猿の手』や、
映画もされたスティーヴン・キングの『ペット・セマタリー』、
これらの作品では、
死者蘇生の悲劇が描かれます。
AIと言えば、
日本では、
ロボットとの共存は、明るい未来として描かれる事が多いですが、
アメリカの映画作品などでは、
AIは、発達するとやがて暴走して人間を支配しようと目論む、
人類の敵として描かれる事が多いです。
例えば
『ターミネーター2』(1991)のスカイネットや、
『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』(2015)のウルトロンなどがそうです。
クローン技術は、現代は、
それを人間に行う事は、
倫理に抵触する科学技術として忌避されていますが、
いずれ、なし崩し的に解禁される日が来ると、
私は信じています。
クローン技術で蘇った存在としては、
漫画の『刃牙道』の宮本武蔵が印象的です。
『刃牙道』では、
肉体のみがクローン技術で復活しても無意味なので、
生前の記憶と体術を会得した「魂」を、
肉体に「下ろす」というオカルトで、
現代に宮本武蔵を半ば無理矢理復活させました。
そう、
クローンでの肉体の代替において、
最も壁となるのは、
「記憶の存続」という点です。
「脳」の研究も、
これまた倫理、道徳的な問題により研究が進んでいない分野です。
「記憶」とは、
脳のシナプスの繋がり、経路によって、作られます。
その経路を再現すれば、
全ての人間に、同じモノが共通するのか?
それとも、完全に個人毎のオリジナルなのか?
それすらも、
未だ、解明されていません。
脳に、
まるでコンピュータの様に、
記憶をダウンロードやアップロード出来れば、
その問題も簡単に解決出来るのに、、、
その発想の基、
あ、ロボット研究とクローン技術を組み合わせれば、
それも解決するのでは!?
しかも、
死者蘇生という、
映画としてオイシイテーマも扱える!!
その部分に気付いたのは、
本作の面白い所です。
その意味で、
SF作品として、広い心で本作を観た場合、
確かに、興味深い作品です。
しかし脚本が、
SFのアイデアをゴリ押しする事に徹するあまり、
展開的にツッコみの多いものとなってしまったのは、
ちょっと残念です。
テーマは、良いモノがあると、思うんですがねぇ。
しかし、
そのツッコみを楽しんでこそ、
映画の醍醐味というもの。
さておき本作は、
「死者蘇生」と「AI」「クローン」という、
普段、禁忌として扱われ、
悲劇として終わるテーマを組み合わせる事で、
むしろ、
その技術を肯定している点が、
他には無い個性と言えるのです。
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人生の優先順位とは?
クローンと記憶移植により、
死者蘇生を図る。
ともすれば、陰惨なホラーになりかねませんが、
本作は、
その「死者蘇生」の過程の描写が、
一番面白い部分であり、
奇妙なユーモア感覚もあります。
友人のエドを無理矢理手伝わせ、
死んだ家族から抽出した記憶から、
「死亡した」という事実を消去、
更に、
生き還させる人間に制限があった為、
末っ子のゾーイを諦め、
そのゾーイの思い出も、皆の記憶から消去。
記憶移植の課題に挑戦しつつ、
クローンが成長する間の、
家族のアリバイを、
妻の職場や、子供の学校、交友関係におけるまで、
強引にケアする。
キアヌ・リーブスの演技って、
基本、常にクールで飄々とした感じなんですよね。
そのキアヌが、いつもの表情で、
しかし、
半ギレでテンパり、
そして、哀しみながら、様々な事態に対処する。
観ている方は、
「コレ、どう対処するんだろう?」と、
他人事だからこそ、困難を突破する様子を楽しめるんですが、
キアヌのくそ真面目な表情だからこそ、
そのテンパり具合が、
傍目では、ちょっと滑稽で面白いんですよね。
他人から見ると、
ちょっと滑稽。
それでも、本人からすると、死活問題。
そう、
キアヌ演じるウィリアムは冒頭、
その仕事人間ぶりを発揮していますが、
いざ、家族を喪うと、
何ものにも代えず、家族を取り戻す為に、
なりふり構わぬ行動に出ます。
傍目から見ると、暴走や、滑稽でも、
本人には、最重要課題。
更にそこに、
倫理や道徳が加わった時、
人は、それを乗り越えてしまうのか?
本作のウィリアムは、
家族を取り戻す為に、
その、全てを乗り越えます。
倫理的な規範、
道徳的な心理状況、
会社のコンプライアンス、
技術盗用、etc…
ウィリアムが一線を越える度に、
観客も、無意識に自身の意思と行動規範とも照らし合わせて、
考える事になります、
「自分なら、どうするのか?」と。
心情的には、ウィリアムを応援したい、
しかし、
理性の部分では、ストッパーがかかってしまう。
その葛藤が本作の面白さであり、
また、
そういう体験を、エンタメの中で味わえるというのが、
本作の一番の特徴だと言えるでしょう。
SFやホラーで多く扱われる、
死者蘇生やAI、クローン技術というテーマを混合した作品『レプリカズ』。
観客としては、
ウィリアムの暴走を追いながらも、
自分は、大事なモノの為に何処まで出来るのか?
そういう事を見つめ直す契機ともなる、
そんな作品と、
本作は言えるのではないでしょうか。
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