映画『オーメン:ザ・ファースト』感想  過去作へのリスペクト溢れる、お上品?だけどエロチック?なホラー作品!!

旧知の枢機卿ローレンスの誘いで、アメリカからイタリアへと渡ったマーガレット。彼女は協会内の女児孤児院にて奉仕活動を行い、修道女を目指す。
要注意人物と言われたカルリータとも打ち解けるマーガレット。そんなある日、カトリック教会を破門されたブレナン神父が接触して来て、、、

 

 

 

 

 

 

監督はアルカシャ・スティーブンソン
本作が長篇映画初監督作品。

 

出演は、
マーガレット・ダイノ:ネル・タイガー・フリー
ローレンス枢機卿:ビル・ナイ
シルヴァ修道院長:ソニア・ブラガ
カルリータ・スキアーナ:ニコール・ソラス
ルス:マリア・カバイェロ
ガブリエル神父:タウフィーク・バルホーム
ブレナン神父:ラルフ・アイネソン 他

 

 

有名なホラー映画『オーメン』(1976)。

「666」という数字の並びが
「悪魔の数字」と周知されたのは、
『オーメン』からと言われています。

 

…しかし、
そういう知識はあっても、
実際の映画の感想はどうかと言われると、
ちょっと怪しいです。

 

何しろ、
観たのは子供の頃なので、

『オーメン』と
『オーメン2/ダミアン』(1978)の内容の区別が怪しい状態なのです。

それどころか、
『ローズマリーの赤ちゃん』(1968)
『エクソシスト』(1973)
『ポルターガイスト』(1982)
あたりの作品の内容もゴッチャになっており、

どれが何の作品のエピソードだったのか、
渾然一体として、
記憶があやふやな状態です。

 

そんな「オーメン」にわかが観た本作は、
如何だったのかというと、

普通に面白かったですね。

 

一作目の『オーメン』をリスペクトしつつ、
頑張って作りました!!

 

という印象、意気込みを受けます。

 

一作目のオマージュを交えつつ、
ちゃんと考えてきたストーリーを披露してくれます。

何だか、真面目に作っているな~、
と思いました。

 

一昔前のホラー映画と言えば、
基本、B級路線だった印象ですが
最近はちゃんとした映画が多いです。

本作も、そう。
優等生的な印象。

 

それを、
ホラーへと引き戻すのが、

主演、マーガレット役の、

ネル・タイガー・フリーの
艶めかしい演技です。

 

ホラー映画のヒロイン像としては、

何とか生き延びようとする、サバイバル系
兎に角叫ぶ、スクリーム系
黒幕だったり、憑依されて狂ったりする、メンヘラ闇堕ち系

などが居ますが、

本作はさながら、
艶めかしさが漂うエロチック系
言えるのかもしれません。

恐らく監督は、
ネル・タイガー・フリーを格好良く、
不気味に描写したかったと思うのですが、

それが何とも言えないくねり具合を生んで、

ホラーシーンをより際立たせる、
趣深さがあります。

 

まぁ、ぶっちゃけ、
格別に「面白い!!」という部分はありませんが、

手堅く、真面目に作られている印象。

普通に面白くて、
逆に戸惑います。

 

また、
私の様に、記憶があやふやな人間でも楽しめたので、

「オーメン」の過去シリーズを知らずとも、
本作は楽しめるのではないでしょうか。

 

まぁ、真面目と言えども、ホラー映画
こういう『オーメン:ザ・ファースト』みたいな映画も、偶にはいいものです。

 

 

 

  • 『オーメン:ザ・ファースト』のポイント

一作目へのオマージュ

生真面目な作り

ネル・タイガー・フリーのホラーヒロインぶり

 

 

 

以下、内容に触れた感想となっております

 

 

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  • 真面目な作りのホラー映画

ホラー映画、
と言ったら、何となく
=「B級映画」みたいな印象がありませんか?

私はホラー映画好きではありますが、
そんなイメージを持っています。

 

低予算で、場面も限定的、
ストーリー、構成、脚本も疑問点が満載

しかし、
その緩さ、テキトーさのツッコみどころが逆に
ホラー映画の面白さの一面だったとも言えました。

愛すべきバカ映画、とでも言いますか。

 

しかし最近の
特にハリウッド系のホラー映画は真面目に作っており、

低予算で限定的なシチュエーションでも、
作品のテーマやストーリーを練って、
伝えたい事、表現したい事を明確に絞って表現する、
ちゃんとした作品が増加傾向にあります。

 

そういった作品群は、
ある程度のレベルは保証されており、
観て「面白い」と思わせる秀作ばかりです。

しかし、

昔の突飛なノリのホラー映画の様な、
馬鹿馬鹿しくも、自由で過激なイメージの奔流に、
ムムムッと唸らせられる様な事が少なくなった様に感じます。

まぁ、B級ホラー映画は
大抵は駄作ですが、
クソの中から宝石の様な「良い部分」を探すようなワクワク感は、
薄れてしまったなぁ~

(例:ピーター・ジャクソン監督の『ブレインデッド』(1992)とか)

ない物ねだりというか、
贅沢な悩みを抱える今日この頃です。

 

  • ネル・タイガー・フリーのホラーヒロインっぷり

そんな本作『オーメン:ザ・ファースト』も、
真面目な作りのホラー映画です。

特に、
一作目を意識したオマージュシーンなども多数あり、

ちゃんと、過去作をリスペクトした上で、
それを下敷きに作っているのだという事は伝わってきます。

冒頭で、チャールズ・ダンス演じる神父が死ぬシーンや、
中盤で、火を付けて飛び降り首吊り自殺するシスターなどは、
一作目のオマージュですよね。

 

しかし、
本作が真面目系ホラーで終わっていないのは、

主演であるネル・タイガー・フリー演じるマーガレットが、
只管、妖艶に描かれている事です。

 

本作は、その設定にて、
野犬と交わる人間との異種交雑によって、
悪魔の子を人為的に産ませる、
という禍々しい企みが描かれています。

なので、
そういう倫理的に人道に外れたシーンが描かれそうですが、

そこは、
場面の直接描写を避けて、誤魔化しています。

 

因みに、
オーメンで描かれた悪魔崇拝者の集団が、
本作に於いては、
実は、教会の過激な神の信奉者だったという設定は、

善と悪が表裏一体に描かれていて、
興味深い所です。

 

さて、
直截な性的描写を避けてはいるものの、

本作は、監督がそう意図したのか、
主演のネル・タイガー・フリーが、兎に角、
美しく、妖艶に描かれています。

清楚なシスター服から
夜遊びに行く時のドレスのギャップが凄いですし、
寝起きの気怠げな表情も良いです。

懲罰房に閉じ込められて、
ギャァギャァ喚く姿も良かったですが、

一番迫真と感じたのは、
二つあった叫ぶシーンです。

 

一つ目は、
群衆に揉まれて幻覚を視るシーン。
二つ目は、交通事故の後、
たちまち腹が大きくなり、破水して血溜まりを作るシーンです。

 

先ず一つ目、
マーガレット視点では、
群衆の暴動に巻き込まれて、
不気味な手に体を触られる「幻覚」を視るのですが、

それは、第三者視点では、
マーガレットが不気味に叫んでいるだけというシーンです。

シルヴァ修道院長もそうでしたが、
観客もドン引き。

そして観客が、このシーンにて
アレ?実はマーガレットがダミアンの母親じゃね?
と気付くシーンでもあります。

 

そして、二つ目、
交通事故の後、
闇堕ちした教会過激派に捕まる直前、

みるみるうちに大きくなったお腹が破水し、
血溜りの中で叫ぶシーン。

一つ目のシーンもそうでしたが、
二つ目のシーンは、更に、長い。
結構長く、叫んでいるんですよね。

そして、一つ目のシーンは、
観客が察するシーンでしたが、
二つ目のシーンは、
マーガレット自身が、
自分がダミアン(悪魔の子)を産むという事を察するシーンでもあります。

故に、
叫びのシーンは、
威嚇であり、そして、絶望の叫びでもあるのです。

 

中盤、
マーガレットが目撃し、気絶した、
女性の出産シーンの描写を仄めかす事で、
マーガレット自身の境遇をシンクロしています。

またこれを、直接描写の代わりにしている部分もあります。

そしてマーガレット自身には
性交や出産の場面の直接描写は避けているものの、
それが、「叫び」の描写に転写されていると言えます。

彼女にとって、
意図せぬもの、望まぬ境遇、
しかし、決して屈せざる意思の表示
それが表現されていたのではないでしょうか。

 

  • ホラー映画ヒロインの系統

ちょっとオマケで、
ホラー映画ヒロインの系統について語ってみます。

 

ホラー映画のヒロインにはタイプがあって、

生き残りを懸けて奮闘するサバイバル系:『エイリアン』(1979)のリプリー

叫んで喚くスクリーム系:『ハロウィン』(1978)のローリー

セクシーなお色気枠、エロチック系:『スペースバンパイア』(1985)のバンパイア

実は、元凶だった的なメンヘラ闇堕ち系:『何がジェーンに起こったか?』(1962)のブランチ

などがあります。
(あくまで個人の感覚によるカテゴリです)

 

では、本作のマーガレットはどのカテゴリでしょう?
と言うと、これが難しく、

サバイバル系でもあり、
叫ぶし、
セクシーだし、
ダミアンを産むし、

全部の要素を含んでいると言えます。

そういう意味でも、
本作のマーガレットを演じたネル・タイガー・フリーは、
印象的でした。

 

 

 

初代『オーメン』をリスペクトしつつ、
真面目に作ったホラー映画『オーメン:ザ・ファースト』

手堅い面白さがありますが、

主演のネル・タイガー・フリーの印象で、
確かに、ホラー映画と感じさせる作品であると言えるのではないでしょうか。

 

 

 

 

 

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