2017年紹介書籍10選

2017年に本ブログで紹介した書籍の中で、特に印象に残った10作品を紹介したい。

面白さもさることながら、自分の中でのインパクトを重視した作品を選んだ。

本ブログでの紹介という括りなので、特に本年の新刊に限っている訳では無いので御了承頂きたい。

また、個人的な好みで選んでいるので、ジャンルが偏っている点もご容赦願いたい。

 


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渡辺浩弐(著)

角川ホラー文庫から突如現れた傑作。

レーベルは一応ホラーだが、その内容はエンタテインメントのごった煮となっている。
ラノベ的ボーイミーツガール展開から始まり、短篇、サバイバル、設定SF、モンスターホラー、アイドル論、と兎に角面白いと思うものを全部ぶち込んで見ました!という心意気が良い。

ボリュームも600ページ超とタップリ。
内容も盛り沢山。
幕の内弁当では足りずに日替わり弁当まで食べてしまったかの様な満足感が得られるだろう。

 


シルヴァン・ヌーヴェル(著)

ロボットSF。

ではあるが、本作では戦闘シーンが殆ど無い。
描かれるのは、出土された謎のロボット兵器を巡る権謀術数、所持権争いにパイロット同士の人間関係。

ど派手なアクションシーンは無いが、
どんな犠牲を払ってでも未知の物に挑もうとする開拓者の熱いスピリットの様なものを感じる作品だ。

 


ステファン・グラビンスキ(著)

火とそれにまつわる妄執の物語

怪異を起こすのは、凝り固まった一念の煮こごり。
自らの「想い」に囚われ、それにより破滅する人間の性が描かれる。

作者はポーランド出身。
年末には同じポーランドのスタニスワフ・レムがTVで紹介されたり、
2018年のワールドカップでの日本の対戦相手であったり、
ポーランドの次世代原子炉に日本の技術が提供される事に決まったり、
歴史的にも互いにソ連に侵略された過去を持つもの同士であったり、
最近なにかと接点が多い国の作家でもあるのだ。

 


今日泊亜蘭(著)

王道傑作SF作品。

数年前から、出る出ると出版予定表には名前が挙がりは消えていた今日泊亜蘭の諸作品。
去年から今年にかけて、遂に復刊が叶ったが、
これが読む作品読む作品全てが面白い。
中でも、個人的に一番面白かったのがこの『光の塔』である。

サスペンスフルな展開、SF的設定、戦争、アクション、政略、言語遊戯、ミステリー、メロドラマとエンタテインメントの見本市
それでいてラストに向け次々と伏線が収束して行くのは見事という他無い。

短篇が上手い作家が、長篇を面白く書いたらこんな傑作が生まれるのだ。

 


オーガスト・ダーレス(著)

怪奇短篇集。
ナイトランド叢書」の一冊。

ホラーとは一体何か?
それは人を驚かせるのみに非ず。

本作のホラーは弱きを助け強きを挫く
ホラーには理不尽な恐怖がある一方、声なき弱者の代弁であったり、力の無い者の復讐の代理人であったりもするのだ。

本作品にはそういう、ある種の優しさが通底しており、怪奇小説を読んだのに、何処か清々しい感じすら漂うのだ。

 


エヴァンジェリン・ウォルトン(著)

ファンタジーの英雄譚。
マビノギオン物語の第2話。

掟や習慣、そういうものに縛られた人生は何とは無しに窮屈に感じる。
そういう旧弊を打破する時、それに私利私欲が混じってしまったら
そして、そういう個人が多数集まれば欲望が際限なく膨らむ事となり、悲劇が爆発する原因となる。

そういう避けられない悲劇に突き進んで行く人間の果敢無さが染み入る様に描写される、忘れ難い印象を残す。

一方でファンタジー的アクションもあり、読み応え十分だ。

 


ジョージ・R・R・マーティン(著)

権謀術数のファンタジー大河ドラマ
「氷と炎の歌」シリーズの第一作目。

ラスト目前で盛り上がるドラマ『ゲーム・オブ・スローンズ』の原作、その第一作目が本作だ。

この『七王国の玉座』を読んだ時の印象は忘れ難い。
人並み以上の傑物が誠意を持って世界を良くしようとしても、必ずしもそれが叶う訳では無い
現実以上に厳しい現実を見せつけてくる。

勝つのはより自分の欲望とゲームに忠実なプレイヤーである。

数本分の作品の筋を用意し、それが並行して進んで行く群像劇が圧倒的リーダビリティでよって描かれる傑作である。

 


羽生善治(著)

今年、遂に永世七冠を達成、来年の国民栄誉賞受賞も内定している羽生善治先生の語る勝負論。

対人型のゲームが好きな人なら必読の書である。

私の場合は、長年自分の中で概念化されずに堪っていた経験則が、本書を読む事で言語化し、一気に対戦レベルが上がったという経験がある。

また、対人ゲームとは結局コミュニケーションの一種であるので、日常の生活でも役に立つ所があるだろう。

 


舞城王太郎(著)

漫画『ジョジョの奇妙な冒険』のノベライズ作品。
数ある中でも、本作が最も「奇妙」と言えるだろう。

本作を一言で言えば、「ワイドスクリーン・バロック」である。

一地方で始まった物語が、いつの間にか時間も空間も越えて
更に「ジョジョ」作品の登場人物や設定をこれでもかとぶち込んで、それでいて一つの作品として破綻するギリギリのラインで成立させている奇跡の作品

楽しめるのは『ジョジョ』を第6部まで完読している人のみという、勿体なくも贅沢な作品だ。

数年前から始まったジョジョブーム、
くじ、フィギュア、ゲーム、アニメ、そして今年の実写映画化で「あがり」の感が漂う。

その玉石混淆の中でも、本作は最高部類の作品である。

 


スティーヴン・キング(著)

モダンホラーの帝王と言われ、数々の名作を生み出してきた著者の最高傑作とも名高い作品。

過去にTV映画として映像化されていたが、
今年劇場公開作品としてあらためて映画化された。

細かい描写をねっとりと積み上げる恐怖の描写もさる事ながら、
本作の肝はジュブナイル部分である。

誰にでもある、大人になる前の幼年期
その頃の悩み、喜び、恐怖と哀しみがみずみずしくも美しく描かれている

初めて読んだのは20年以上前。
そして、今改めて読むと、また当時とは違った感動がある。

時を経て読んでも、昔よりさらに面白く読めるというこの奇跡。
時の経過が、かつての旧友に出会った様な感慨をもたらし、感動も一入であった。

 

 

 

如何だっただろうか?
基本、本ブログでは読んで面白かった作品を上げているので、実際は全部面白い作品である。

その中でも、今年の映画や諸々の出来事を絡めて紹介してみた。

いずれも絶対オススメの傑作なので、未読の方で興味があれば是非読んで頂きたい。

それでは、よいお年を。

 


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