ドラマ『孤独のグルメ Season3 第三話 静岡県賀茂郡河津町の生ワサビ付わさび丼』感想 あらすじと解説

孤独のグルメ Season3 第三話
静岡県賀茂郡河津町の生ワサビ付わさび丼

 

監督:溝口憲司
脚本:田口佳宏

 

出演:
井之頭五郎:松重豊

佐々木義輝:小島康志
かどや・お母さん:三谷悦代
かどや・お父さん:渡辺哲 他

ふらっとQUSUMI:久住昌之

 


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*タイムラインはBDソフト準拠となっております

 

 

  • ドラマパートあらすじ

静岡県伊豆半島を走る列車に乗っている井之頭五郎。
行き先は河津町

 

『伊豆の踊子』の舞台となったのはこの辺り。

駅で降り、バスに揺られながら向かった先は国民宿舎「かわづ」。
佐々木さんの注文の「パイプ」のサンプルを持って来た五郎さん。
佐々木さんは「良いですねぇ」と満足げ。

 

その佐々木さん、この土地の良い景色に惚れて働いていると言う。

「便利さばかりに頼ってると、心を何処かに置き忘れちゃうような気がして」

「私達がお客さんをもてなす心を忘れたら、洒落になりませんもんね」

そんな事を言う佐々木さんに、良いこと言うと頷く五郎さん。

 

仕事も終わり、散歩する五郎さん。
七滝茶屋にて一休み。(01:14:47)

イチゴ推しのこの店にて、五郎さんクラッシュド・ストロベリーを注文する。

隣の席にはオバチャン3人組がかしましく騒いでいる。

オバチャンって、脳と口が直結してるよなぁ」(01:16:23)

 

クラッシュド・ストロベリー。(01:16:44)

「おお、これは良い。おお、冷た、クラッシュしてる」

イチゴって、改めて向き合うとちょっとキュンと来るフルーツだなぁ」(01:17:44)

「けなげでラブリィ」

伊豆でラブリィ、伊豆n’t she lovely」(01:17:57)

 

さらに散策を楽しむ五郎さん。

露天の土産物屋を物色したり、
先ほどのオバチャン3人組と再び遭遇したりする。

「踊子」の像の手を、失礼しますと握ってみる五郎さん。

「うーん、滝はいい」

「たんぶん、マイナスイオンの所為か」

 

  • 「何だかとっても、腹が減った」(01:20:29)

ポン、ポン、ポォン

「よし、店を探そう」

再びオバチャン達とすれ違い、店を探す五郎さん。
流水でワサビを冷やしている店を見つける。

「天城名物、ワサビ」

「うん、伊豆に来たからにはワサビ物を一発、入れておきたい」

「踊子さんにはあんまり関係なさそうだけど、ここにしよう」

 

  • かどや(01:21:38)

座敷席に座る五郎さん。
「良い感じ、この店、当たりなんじゃないか」
と好印象。

メニューの短冊を眺める五郎さん、
「何ワサビで行くか?」
無難にソバかと考えていた所、
「生ワサビ付 わさび丼」の文字を見つける。

自らワサビをダブらせたドンブリ」(01:22:51)

「聞いた事が無い、どんな物なんだ?ようし、勝負に出てみよう」

「しかし、400円、ますます想像が付かない」

五郎さん、興味津々のわさび丼を注文する。

 

如何にもな食事処の雰囲気を堪能する五郎さん。
テーブルにある星座占い?のオモチャに100円入れてみる。
出て来たおみくじを読み、鼻を鳴らす五郎さん。

「ハイハイ、ま、こんな所か」

 

先ずは、生ワサビがやって来る。(01:24:33)

ワサビの茎を折って、その折った方から摺り下ろして行くとの事(セルフサービス)。
まぁるく、摺って下さいねとアドバイスされる。

「まぁるく、まぁるく」

家族連れも、にこやかにワサビ摺りを楽しんでいる。

「…何処まで摺ればいいんだろう。こんなもんか?」

水を注文する五郎さん。

「一生懸命ワサビ摺ってたら喉が渇いた」

思わず匂いを嗅いでみた五郎さん、ツーンと来る。

「キタキタキタキタ」

 

そして待望のわさび丼、登場。(01:26:50)
ご飯にはかつお節が載っており、付け合わせとのセットである。

「かつお節か、踊ってる、おかかの踊子」

摺ったワサビを真ん中に載せ、醤油を周りにぐるっと垂らし、良くかき混ぜて食べるとの事。

「おお、コレ、良い、うんまい」

「ご飯とかつお節とワサビだけなのに」

 

付け合わせの[わさび丼盛り上げ要因]は、
1:わさび味噌
2:わさびのり
3:わさび漬
4:わさびのくき、三杯酢漬
の4品。

わさび味噌(01:28:54)
「うん、ナイス」

わさびのり(01:29:05)
「みんな少ぉし、ワサビ入れてる。成程、成程」

わさび漬(01:29:21)
「うんうん」

わさびのくき、三杯酢漬(01:29:37)
「あ、酢漬け、これもイイ」

次々と口に運び、味を楽しむ五郎さん。

 

「折角摺ったんだし、ガツンと行っちゃえ」

五郎さん、摺ったワサビを全部入れして、ご飯を掻き込む。

「ん!!おお、来た」
フンと息が鼻から漏れる。

「いかん、入れ過ぎた」
フン!

「いやぁ、でも、こうで無くっちゃ、わさびだもの」

 

美味かったぁ、と嘆息する五郎さん。
なんと同じ物を再び注文する。

「わさび丼をもう一杯下さい」

「え?良いんですか?」と尋ねる店員のお母さん。

「これ初めて食べました。美味しいですねぇ」と大絶賛の五郎さん。

有り難う御座いますと店員さんは答える。

 

再びワサビを摺る五郎さん。(01:31:32)

「まぁた摺ってる、俺」

その眼差しは真剣そのものである。

家族連れは去り、カップル客はワサビを摺らずに携帯をいじっている。

そんなカップルに店員さんがアドバイス、
わさび摺って下さいね、お料理来てからだと、冷めちゃいますよ、と。

ちょっと考えれば分かる段取りじゃないか」(01:32:13)

段々目が据わってきた五郎さんの独白のツッコミである。

 

そこに、店のお父さんが帰って来る。
お母さんがわさび丼を褒められた事を伝えると、お父さんは気をよくしたのか五郎さんの方にやって来る。

「あんまり美味しくてビックリしました。やっぱりワサビが違うんですかね」と尋ねる五郎さん。

すると、お父さんは語り出した。

 

いやぁ、今では伊豆の名産ですけど、元々は違うんですよ。
今でもワサビについて残っている、一番古い資料は飛鳥時代なんです。
685年に奈良県飛鳥村の遺跡にワサビの事が書かれた木簡が残っていたんですよ。

「ちょ、ちょっと待って下さいね、ちょっとね」
と資料を持って来たお父さん、再び語りだす。

その木簡に、こういう漢字が書かれてたんですよね。

これで 委 佐 俾 (わ さ び)

これって、魏志倭人伝の「倭」に似てるでしょ。
これもにんべんだったら、卑弥呼の「卑」でしょう。

そういう事ですよ。(01:33:15)

?どういう事だ?」(01:33:16)

 

さらに続くワサビトリビア。

ワサビが普及し始めたのは、江戸時代に野生のワサビの栽培を初めてからなんですが、
徳川家康がワサビを独占しちゃったんですよ。
しかも栽培方法を門外不出にしちゃったんですね。
その時、命懸けでワサビの苗を天城に持って来たのが、板垣勘四郎(いたがきかんしろう)って人なんですよ。
フフ。
これはもう、本当にノーベル賞モンですよ、ンフンフ。

「川端康成じゃなくて?」(01:33:44)

 

さらに続く、お父さんのトークショー。

ワサビにはねぇ、アリルイソチオシアネートっていう物質がありましてね、殺菌作用があるんですよ。

「今は、蘊蓄、結構です」(01:33:55)
と、独白する五郎さん、段々渋い顔になっている。

 

ワサビは何故辛いかっていいますとですねぇ、
「お父さん、お客さんが食べられないでしょ」

「すいません、話し出すと止まらなくて」

と、わさび丼を持って来たお母さんによって制止が入る。

五郎さん、「いやぁ全然大丈夫ですよ」

と、言いつつも、顔の表情は苦み走っている。

 

2杯目のわさび丼。(01:34:15)

「改めまして」いただきます

ンフ!「やっぱり美味いなぁ」

「うん、醤油が良い働きをしている」

俺は、最終的にはこういうシンプル極まりないご飯が一番好きな気がする」(01:35:12)

 

お茶を飲み、アァ~と一息、ご馳走様でした。

見ると、お父さん、カップル相手に再び蘊蓄を語っている。

「でも、こういうご主人の話ってのは、ネット情報とは味わいが違うんだ。多少面倒くさいケド」(01:36:11)

「あぁ、食ったら眠くなって来た、朝早かったしなぁ」

「急ぐ事は無い、パソコン仕事は明日にするか、ちょいとゆっくりしよう」

と、壁によりかかり目を閉じて一休みする五郎さんでした。

 

五郎さんの食事はコチラのページにてまとめられています

 

 

  • ふらっとQUSUMI(01:37:23)

伊豆急行河津駅からバスで15分の場所にあるという、「わさび園 かどや」。


*2013年当時のデータですので、お店に行く時は要確認

 

久住さんは、早速ビール。

先ずはビールのお供に、お通しのわさびのくき三杯酢漬が来る。

「これは、割と生っぽいってのか、新鮮な感じですね」

 

ご主人登場、オリジナルメニューのオクラのわさび和えを持って来る。

塩辛とオクラを混ぜて食べるとの事。

ご主人、さらに自分で作ったというわさび焼酎を持って来る。

「私が作った焼酎なんですけど、わさびをね、漬け込んだんですよ」
「ロックでやってみて下さい」

飲んだ久住さん
「あ、ワサビの香りがする!」

「これ美味しいね、なんか、ワサビがかえって甘い感じにさ、しているような感じがね」

そして、オクラのわさび和えも頂く。

「思ったよりこう、もっと辛いのかと思ったら」

「良いでしょ」とご主人。

 

ご主人が主張を語り出す。
「割にね、今の人ってね、あのワサビってツンて来るから嫌だって、そんな事無い、マイルド、本物はね、もっとマイルドなんですよ」(01:39:03)

 

塩辛のわさび和えを食べる久住さん。

「酒飲みの友達の様なもんですからねぇ」

と、そこにまたご主人
「2杯くらいいいんじゃない」とわさび焼酎のお替わりを注ぐ。

出来上がっちゃいそうだな、午前中から」(01:39:38)

 

 

そして、本命、生わさび付わさび丼

「あぁ、美味い、シナリオ読んだ時から美味しそうだなって」

「いや、凄いな、コレなんか、極めてますね」

「美味しい、ホントに美味しい」と絶賛する久住さん。

その様子にご主人が出て語る。
Simple is Best ですよ、正に」(01:40:18)

「俺、久しぶりに本気で食べてしまった」と久住さん。

「いや、今日はもう堪能です」

大満足の様子の久住さんでした。

 

ふらっとQUSUMIでの食事はコチラのページにてまとめられています

 

  • 声に出して言いたい!五郎さんの名台詞

今回の「声に出して言いたい」五郎さんの名セリフは、

 

?どういう事だ?」(01:33:16)

勢いに流されてスルーするより、
分からない物は分からないと正直に告白する事も、時には大事なのです。

 

俺は、最終的にはこういうシンプル極まりないご飯が一番好きな気がする」(01:35:12)

食事の好き嫌いはあれど、やっぱりシンプル伊豆ベスト、という事で、
伊豆で食べるなら、このセリフを是非とも口にしたいものだ。

 

名セリフはコチラのページにてまとめられています

 

  • 感想と解説

注文の品を届けに、ちょっと遠出をした五郎さん。
静岡の地で、わさび丼に出会ったお話です。

 

今回のドラマパートと食事シーンを繋ぐキーワードは、「シンプル」

パイプの注文主、てるリン事・佐々木義輝の言う、
「便利さばかりにかまけない感じ」
この主義は、シンプルさと直結している気がします。

敢えてゴテゴテ身につけて便利さを追求するより、
シンプルに身軽にした方が上手くいく事もある

本エピソードで言うと、
シンプルなわさび丼こそ、至高の食事だったという事です。

 

テーマとしては、シンプルさの礼賛を謳っていたエピソードですが、
その一方で出演者の様子がちょっと濃かったのが面白いですね。

 

先ず、五郎さん。

「オバチャンって、脳と口が直結してるよなぁ」(01:16:23)

「ちょっと考えれば分かる段取りじゃないか」(01:32:13)

これらのセリフで見られる通り、若干いつよりツッコミが鋭いです。

そして、かしましいオバチャンが騒ぎ、

延々蘊蓄を語るお父さんなんかも出て来ます。

 

この、濃い人達と対比するからこそ、
シンプルさの素晴らしさが際立っているんですね。

 

しかし、今回のゲストキャラ、渡辺哲さんは、あれだけの蘊蓄の長ゼリフを
しかも表情と抑揚を豊かに表現しながらこなして見せたのは流石と言えるでしょう。

でも、この渡辺哲さんのお父さん、
「ふらっとQUSUMI」での、本物のご主人の世話焼き具合を見るに、実際に熱くワサビの事を語っているのだろうと想像出来て、面白いですね。

 

さて、その渡辺哲のお父さんが蘊蓄で言いかけた事、これを補足しますと、

ワサビの辛さ成分というのは、前述の「アリルイソチオシアネート」であり、
これはワサビを摺り下ろす時、酸素に触れる事で生成されるそうです。

つまり、細かく摺って酸素に良く触れれば触れるほど辛くなるという訳です。

 

補足ついでに、パイプを注文した佐々木さん、
五郎さんが用意出来ると言ったのは、
イタリア製のサビネリ(サヴィネリ)
アメリカ製のカーステン、です。

どちらも有名メーカー、
とは言え全くパイプに疎い私はその違いが分かっておりませんが。

 

さて、補足ついでに、
野暮だとは重々承知ですが、五郎さんの渾身のギャグを解説したいと思います。

「伊豆でラブリィ、伊豆n’t she lovely」(01:17:57)

これの英語部分、
「伊豆」と「Is」を引っ掛けているんですね。

つまり、「Isn’t she lovely」といっているのです。

これを訳しますと、「彼女って、愛らしくない?」位の意味でしょう。

つまり、イチゴの愛らしさを愛でていると共に、
おそらく、若干『伊豆の踊子』にもかけていると思われます。

また、この『Isn’t she lovely?』は
スティーヴィー・ワンダーの曲名でもあります。
彼の娘、アイシャの誕生を祝って作られた曲だといいます。

一言で、二重三重の意味を込められている、
渾身の比喩表現。

親父ギャグの域を遙かに超えています

 

五郎さんの比喩表現は、Season 1 や 2 ではナチュラルでシンプルでストレートな物が多かったです。

しかし、Season 3 からは、
かなり凝った、
敢えて名言を狙ったセリフが多い印象です。

その中でも、ここまで作り込まれると、流石に感心してしまいます。

 

シンプルさをテーマにしたエピソードで、
これ程凝ったセリフをぶっ込んでくる

これもまた本物エピソードの面白い所なのです。

 

また、面白いと言えば、
物語の共通した舞台として『伊豆の踊子』の事を何度も言及していながら、
ストーリーのモチーフにしていない所も興味深いです。

それは何故かって?

勿論、五郎さんが心奪われているのは、女性では無くワサビだからなんですよね。

 

これだけ色々注目点のあるエピソード。

今回はなかなかの盛り沢山でした。

 

 

 

 


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