小説『ヤギより上、猿より下』平山夢明(著)感想  下衆の極みこそ、傍から見ると、面白い!!?


 

父親に売られ「フッカーズネスト」にやって来たマーガレット。名前が気に入らないと、「おかず」と改めて名付けられた。「ネスト」の商売は、いわゆる淫売。メンバーは3人居り、全員50代だった、、、

 

 

 

 

著者は平山夢明
アウトローの奏でるヴァイオレンス作品と、
実話怪談系の作品、
この両輪で成り立つ作家。
主な著書に、
『メルキオールの惨劇』
『独白するユニバーサル横メルカトル』
『大江戸怪談 どたんばたん』
『ミサイルマンー平山夢明短編集』
『他人事』
『DINER ダイナー』
『或るろくでなしの死』
『暗くて静かでロックな娘』
デブを捨てに

恐怖を語った新書の
恐怖の構造

実話怪談系の、
「超」怖い話シリーズ 等がある。

 

 

先日、
小泉進次郎と、滝川クリステルの結婚が発表されました。

さて、
ごくごく私見ですが、
滝川クリステルの事を、
「滝クリ」って略するのは、あまり、良くないと思うのですが、
皆さんはどうでしょうか?

なんか、ちょっと卑猥じゃないですか?

「お・も・て・な・し」ってプレゼン自体、
なんか、エロかったし。

 

ほら、
年頃の年代の子が聞くと、
フェラーリとか、
アナリストとか、
コカトリスとか、
エロく聞こえるのと、同じ理由です。

 

なんだか、
東京五輪を招致した女神であり、
将来の首相夫人という地位を手に入れた、
やんごとない女性ではあるけれど、

「滝クリ」という呼び方で、
衆人環視の中、公然に汚してやるという、
歪んだ欲望が垣間見られるのが、嫌らしいと、
私は思うのです。

まぁ、そんな事思うのは、私だけでしょうが。

 

という訳で、ここで一首。

滝クリが
クリをいじって
「クリリン!」と
喜んでるよ
栗饅頭

栗饅頭を食べた滝クリが、
口の中の栗が美味しくて、
『ドラゴンボール』のクリリンを思い出しながら、
感動している、という意味の短歌です。

特に深い意味はありません。

 

で、何が言いたいのかと言いますと、

本書は、
そんな感じの内容ですね、ええ。

 

 

…え~、
この例えでは、
何が何だか解らないという方の為に、
もうちょっと、詳しく説明してみますか。

 

本書、
先ず、帯にこういう文句が躍っています。

「どうぶつ好き あつまれ~」と。

この帯を見て、
先日公開された映画『ライオン・キング』とかが好きな人が、本書を読むと、

地獄を見ます。

 

何故なら本書は、

ド畜生どもが奏でる、人生哀歌

 

であるからです。

「わくわく動物ランド」とか「どうぶつ奇想天外!」とかを観ていた
ちびっ子が喜ぶ要素は皆無ですね。

 

内容の傾向は、
先日発売された姉妹篇の『デブを捨てに』と同じと言えます。

『デブを捨てに』が好きな人なら、
本書も、間違い無く楽しめるでしょう。

 

本書の内容は

ヴァイオレンス、無情、下品、
しかし、
どうしようも無い状況に陥った下衆の足掻きを見るにつけ、
そこに、そこはかとないユーモアを感じずにはいられない

 

そういう物語なのです。

 

本書は、
短篇3つと、
中篇1つからなる作品集です。

読み易く、独特の言語選択とリズムのある文章にて、
サクッと読めますが、

それでいて、
昼に食べたカツ丼みたいに、
何時までも、五臓六腑に居座る様な読み味があります。

 

誰が読んでも面白い、
などとは、口が裂けても言えませんが、
しかし、
好きな人は、クセになる、
そんな作品集『ヤギより上、猿より下』です。

 

 

  • 『ヤギより上、猿より下』のポイント

エロと、無情と、ヴァイオレンス

傍から見ると、笑うしかない最悪の状況

独特の言語選択とリズム感のある台詞回し

 

 

以下、内容に触れた感想となっております

 


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  • 収録作品解説

それでは、収録作品を簡単に解説してみたいと思います。

本書『ヤギより上、猿より下』は、
3篇の短篇と、
1篇の中篇からなる作品集です。

 

パンちゃんとサンダル
容赦の無い、DV話

その昔、
「ザ・ブルーハーツ」が『トレイン・トレイン』にて、
弱い者達が夕暮れ、更に弱い者を叩く」と歌いましたが、
本作で描かれるDVは、正にソレ。

というか、
世の中にある「イジメ」の構造が、
押し並べてそうであり、
それが「家庭内」で起こった時、
逃げ場の無い地獄が現出するのです。

オチは凄惨でありながら、
ある種の爽快感があるというアウフヘーベンぶりが凄い所。

 

婆と輪舞曲
展開的には、珍しく、
正統派(?)のアウトローの探偵物語であり、
ストーリーも、普通に面白い感じ。
…なのですが、
その内容はやはり、一癖ありますね。

「とにかくババアを拗らせるな。ババアのマン汁で飯喰ってんなら、それぐらいちゃんとやれ!」
(p.56 より抜粋)
という台詞は、ベストオブザイヤーを提供しても良いレベル。

 

陽気な蠅は二度、蛆を踏む
自営業者であるハズの殺し屋でも、
自分の意思より、雇い主の意向を尊重している様では、
社畜と変わらんな、という話。

糞にたかる蠅の様に、
何も考えず生きるというなら、
それは、自分の子供さえも、踏みつぶす事になりかねない。
そういう、
無責任さが招く、来るべき人生の負債、を描いた作品と言えます。

 

ヤギより上、猿より下
タイトルロールともなった本作は、
あくまでも、卑猥に、下品に

客観的に見れば不幸のどん底でも、
どっこい、我達は生きて居る、
言い訳と無軌道な生き方でも、
それを傍目で見る分には、
ある種の逞しさと、ユーモアを感じずには居られません。

世知辛く、生きづらい渡世では、
この様な図太さが必要なのだと、
本作を読むにつけ、感じずには居られません。

…と、思うのは、まぁ、事実ですが、
帯の「どうぶつ好き」という言葉の意味は、
「ケモナー」という意味で使われているとか、いないとか…

なんだか、
爽快感のあるエンディングですが、
獣姦したオッサンが猿に遺産相続させるという超展開を冷静に考えると、
「ネスト」側も、家族側も、
どっちもどっちだな、と思い至りますが、
まぁ、それはそれで。

 

 

最近の社会にて思う事は、
「社会身分の固定化」が促進されたという事です。

貧乏人は、何時までも貧乏人もままでいてくれ、
「上級国民」は、既得権益を守る為に、
人を蛆の如く、2度と言わず、百度でも踏みつぶす事に汲々しています。

「下層民」は、それが分かっているからこそ、
金を使わず、経済が回らず、
景気が良くならないのですよね。

 

だからこそ、
本作で描かれる「ド底辺」が、
上級国民をスッコスコにイわすのが爽快なんですよね。

実際には、
一発逆転なんてファンタジーは起こりっこ無い。

下層民は、
上級国民に成るより、ド底辺に堕とされる事の方が可能性が高いと知っているからこそ、
本作にて描かれる下克上が、判官贔屓的に楽しめるのです。

 

 

世知辛い世の中の世相を反映し、
そういった世間を極端に戯画化した物語を描くのが平山夢明であり、
本作『ヤギより上、猿より下』。

それならば、
ファンタジーにて、読む人間を救済せんとする。

そういう意図が、
本作には込められているのかも、しれませんね。

 

 

姉妹篇の『デブを捨てに』に付いて語ったページは、コチラ

 


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