映画『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション 前章』感想  日常系SFからの、想定通りの想定外!!

東京上空に突如現れた宇宙船。米軍が新型爆弾を放って3年。しかし、日常は続いていた。表面上は…
高校3年生の小山門出と中川凰蘭は、女子の仲良しグループ5人組の中でも親友同士。卒業を間近に控え、人生の転機を迎えていた。そんな日常の中でも、非日常である宇宙船は暗然と影響を与えており、、、

 

 

 

 

 

アニメーションディレクターは黒川智之
OVA『MURDER PRINCESS マーダープリンセス』(2007)にて監督デビュー。
『心霊探偵 八雲』(2010)
『ぼくらのよあけ』(2021)等を監督、
本作が劇場長篇アニメ映画初監督作。

 

原作は、
浅倉いにおの漫画『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション』。

 

出演は、
小山門出:幾田りら
中川凰蘭:あの
栗原キホ:種﨑敦美
出元亜衣:島袋美由利
平間凛:大木咲絵子

竹本ふたば:和氣あず未
田井沼マコト:白石涼子

小比類巻健一:内山昂輝
渡良瀬:坂泰斗
大葉圭太:入野自由
中川ひろし:諏訪部順一
小山ノブオ:津田健次郎

イソベやん:杉田智和
デベ子:TARAKO 他

 

 

皆さんは、
「ジャケ買い」ってした事ありますか?

ジャケ買いとは、
レコードやCDを、
音楽を聴かずに、パッケージの絵や写真で「何となくの雰囲気」を察して、
購入する、という行為です。

ガチャを引く気分で「当たり」があったらいいな、
って感じです。

 

同じノリで、
小説や漫画を、
表紙だけ見て買う行為も、
ジャケ買いって呼ばれます。

まぁ、しかし、
漫画の場合は、
小説や音楽よりも、
表紙で「ピン」と来た信頼度が、
内容の好き嫌い云々と直結する度合いが高い様に思われます。

何せ、「画」で売ってますからね。

 

で、私が書店で見かけて、
長年気になっていた漫画が、
『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション』です。

「デデデデ」には、
その表紙絵のデザインに惹かれた点もありますが、
何と言っても、その題名。

 

全く、意味不明じゃないですか?

な~んでそんなに「デ」が多いの?

気になるじゃないですか!

…で、気になってはいたのですが、
何せ、所持している漫画が多すぎて、
現在、新刊は殆ど購入していない状況。

なので、
長年見て見ぬ振りをしていたのですが、

今回、
前章、後章の2本構成にて映画化されるとあって、
観に行ってまいりました。

 

因みに、
内容は殆ど、知らない状態です。

予告篇を、チラッと、眺めた程度です。

小学館漫画賞を受賞した作品ですし、

何より、ファンが多い作家で、

しかも
原作が完結済みという事もあり、

迂闊な事は言えませんが、
「デデデデ」初心者が観た感想として捉えて下さい。

 

先ず、本作、

前章だけでも、面白かった!

 

DUNE/デューン 砂の惑星』(2021)の場合は、
続き物と告知せずに公開した挙句、

全然物語が進まず、
ブツ切りで終わった作品でした。

幸い、先頃公開された続篇の
デューン 砂の惑星 PART2』(2024)が面白かったので救われましたが。

その点、
本作は予め前・後篇と告知してあるので、良心的です。

それに加え、
物語が、面白く、グイグイ来て、
しかも、続きが気になる感じで終わるという、
最高のバランス。

例えるならば、
『スターウォーズ/帝国の逆襲』(エピソード5)(1980)の
内容、終わり方というか、

冒険譚で面白く、
ドキドキ、ハラハラ、意外な展開の連続で、
続きが気になって終わり!
みたいな。

 

スターウォーズと違うのは、
本作は冒険というより、
日常描写、心理描写が多目って所ですかね。

所謂、
日本の漫画がお得意とする

日常SF系

 

の作品です。

 

「非」日常が、
当たり前の如くに
日常と化している状態。

宇宙船の影響で、
世界が変わりそうで、あまり変わらず、

しかし、
主人公の二人、
小山門出と中川凰蘭は、
高校三年生というお年頃であり、
否応無く、人生の転機を迎えております。

変わらざるを得ない状況で、
そして、
変わらなかった日常も、
段々と変化している…

日常描写、ギャグ、
シリアス、意外な展開
この温度差が、本作の魅力の一つと言えます。

 

絵も、
最近の漫画にしては珍しく、
デフォルメが効いており、

その辺りも懐かしさと、

反面
アニメとしての「絵」の迫力、技術の進歩っぷりとのギャップで、

こんなにグネグネ動くのか!という驚きもあり。

動きの躍動感と絵としての遠景の説得力など、
アニメとしてのクォリティの高さも素晴らしい作品です。

 

物語自体は続きますが、
単体でも満足があり、
ちゃんと、続きが気になって、
続篇を観たくなる作品

『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション 前章』

ファンの方も、
気になっている初見の人も、

先ずは観てみては如何でしょうか?

 

 

  • 『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション』のポイント

日常系SF

日常、ギャグ、シリアス、ストーリー展開、このバランス感覚の良さ

アンファン・テリブル

 

 

以下、内容に触れた感想となっております

 

 

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  • 日常系SF

上空に宇宙船があり、
侵略されている?
現状を「日常」として受け入れ、
国民は見て見ぬ振り?

国としては、
相手側とのコミュニケーションを放棄し、

宇宙船に大する防衛手段を先鋭化して、
武力行使をエスカレートさせていっている状況。

「前章」のエンディングでは、
来たるべきカタストロフィを予感させる
「人類終了まで あと半年」のテロップが映し出されます。

 

原作重視の、可愛いデフォルメ調の絵がグリグリ動き、
背景や遠景などの、美術面の細やかさなど、

日本のアニメ映画の良さを前面に押し出しつつ、

ストーリー面も、
「変わっていない」ハズの日常が、
徐々に浸食されていく様子が、
もどかしい焦燥感と共に描かれており、

日常系SFとしても、
面白いものとなっております。

 

そんな本作『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション 前章』ですが、

緊張感が一気に増したのは、
過去篇のパート。

門出と凰蘭の小学生時代が描かれる場面です。

 

高校生パートでは、
アクティブな凰蘭と、
消極的な門出、みたいなイメージで、

高校時代の門出の過去回想でも、
「凰蘭がイジメられていた私を救ってくれた」と言っていました。

 

しかし、
実際に描かれた小学生時代の過去パートでは、
門出がアクティブで、
凰蘭が消極的という、

高校時代とは逆の立ち位置。

この描写における、
「何故今と違うの?」という置いてけぼりの混乱具合が、

謎が謎を呼び、
本作の出色の面白さと言えます。

 

  • アンファン・テリブル

過去パートで明かされますが、

どうやら、
宇宙人(?)は、
以前から人類に注目しており、

度々、視察をしていた模様。

 

しかし、久々に行った視察にて、
過度な技術進歩に精神性が追いついていない現状を観察し、
このまま人類進歩を看過して良いのか?

それとも介入して
人類を滅亡させた方がいいのか?

その判断を
先遣隊が報告する
という状況だったと描かれるのです。

 

過去パート、
小学生時代の門出と凰蘭は、

「人類には良い所がある」という事を示す為に、
個人で慈善活動を行います。

しかし、
宇宙人から借り受けたテクノロジーを使用する度に、

徐々に行動がエスカレート、

アメコミのバットマン以上に行動が先鋭化し、
門出は、
独り暴力自警団と成り果ててしまいます

 

小学生パートでは、
漫画『ドラえもん』を本歌取りした物語となっています。

『ドラえもん』では、
ダメなのび太の為に、
ドラえもんが未来のひみつ道具を駆使して
すったもんだのトラブルが巻き起こります。

そこには、
教訓とギャグが描かれており、
国民的な作品として、現代においても愛されております。

 

本作では、
『ドラえもん』そのものは出て来ませんが、
それを、作中作品の
「イソベやん」という漫画に変換して、取り込んでいます。

そして、
「イソベやん(=ドラえもん)」のファンの門出は、
謂わば、闇堕ちしたのび太

人類の有用性を示す為に、
宇宙人テクノロジー(=ドラえもんのひみつ道具)を駆使する門出は、
自らの正義を標榜し、
それに反する人間を排除するという独善性を発揮してしまいます。

 

まるで
権力を手にした独裁者が陥る腐敗、
ナチスのヒトラーの如くに、

また、
漫画『DEATH NOTE』のキラの如くに。

そう、
本作の小学生時代の門出は、
リュークから「デスノート」を譲り受けた夜神月と同じなのです。

 

アンファン・テリブルというフランス語があります。

「恐るべき子供」と訳され、

意味としては、
革新的で、
大人をギョッとさせる様な言動で、
世の中に影響をもたらす子供、というニュアンスです。

「既存の固定観念に囚われない、幼い実力者」という意味でも良く使われますが、

映画に於いては、
社会倫理に囚われず、
独善的に行動する子供として描かれる事も多いです。

 

最近の映画で言うと
ブライトバーン/恐怖の拡散者』(2019)や
イノセンツ』(2023)等があり、

力を持った子供の恐怖と悲哀が描かれます。

 

闇堕ちしたのび太である門出は、その顛末にて、
小学生時代のラストシーンで飛び降り自殺した様な描写がなされます。

そして、現代パートへと帰還し、
謎の登場人物「大葉圭太」が
「恐らくシフター」という言葉を残して去って行きます。

シフターとは、
「シェイプシフター」の事で、
変身能力を持つ怪物の意味。

シフターとは、門出の事なのか?凰蘭の事なのか?

小学生時代と
高校生時代で、性格が逆っぽくなっているのは何故なのか?

門出の行動が、
後の宇宙人に与えた影響は何なのか?

 

色々と謎を残しつつ、
後章でどう展開し、伏線回収となるのか、気になる所です。

 

 

コチラが浅倉にいおの原作漫画の第1巻です

 

 

 

 

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