映画『ゲティ家の身代金』感想  ドケチは身代金すら出さず!!だからこそ、金持ちなのか!?

 

 

 

1973年、ローマにて誘拐された一人の青年。彼の祖父は世界一の大富豪、石油王のジャン・ポール・ゲティ。犯人グループは1700万ドルを要求。母親のゲイル・ハリスはお金を持っておらず、祖父の援助を期待するが、ジャン・ポール・ゲティは一銭も払う気が無いとマスコミに語った、、、

 

 

 

 

監督はリドリー・スコット。
齢80歳。
押しも押されぬ巨匠だが、未だ創作意欲は衰えず。
最近の監督作に
『悪の法則』(2013)
『エクソダス:神と王』(2014)
『オデッセイ』(2015)
エイリアン:コヴェナント』(2016)がある。

 

主演のゲイル・ハリスにミシェル・ウィリアムズ
何だか、いっつもハードな母親を演じていますね。
主な出演作に
『ブロークバック・マウンテン』(2005)
ブルーバレンタイン』(2010)
『マリリン 7日間の恋』(2011)
マンチェスター・バイ・ザ・シー』(2016)
グレイテスト・ショーマン』(2017)等がある。

 

ジャン・ポール・ゲティ役は、クリストファー・プラマー
主な出演作に
『サウンド・オブ・ミュージック』(1965)
『人生はビギナーズ』(2010)
『ドラゴン・タトゥーの女』(2011)
『手紙は憶えている』(2015)等がある。

 

他、共演にマーク・ウォルバーグ、チャーリー・プラマー、ロマン・デュリス等。

 

本作、『ゲティ家の身代金』は、実話ベースの映画作品。
実際の事件に、映画なりの脚色を加えたものです。

 

1973年7月3日、ローマのファルネーゼ広場で誘拐された、
ジャン・ポール・ゲティ3世。

父の2世は酒と麻薬の不摂生で、母のゲイル・ハリスと離婚、
ゲイルはお金を持っておらず、
ポールの祖父のジャン・ポール・ゲティをあてにするが、なんとゲティは支払いを拒否。

さらに、自分の息のかかった元CIAのチェイスを呼び、
犯人グループとの交渉役にあてるのだが、、、

 

本作、派手なシーンは映画の脚色ですが、
本筋は事実というのが驚き。

誘拐されたお気に入りの孫の身代金を出し渋るという、
この精神構造。

 

そうです、一応は母親のゲイル・ハリスが主役という形ですが、

本作の真の主役は
アンチヒーローたるジャン・ポール・ゲティです。

 

演じたクリストファー・プラマーは、
本作でアカデミー賞の助演男優賞にノミネートされています。

しかしなんと本作、
元々は別の俳優(ケビン・スペイシー)がジャン・ポール・ゲティ役をしていましたが、

セクハラ問題で降板したため急遽取り直し、

公開まで約一ヶ月の時点で追加撮影を強行し、
完成させているのです。

 

この切迫感が映画にも影響したのか?

焦燥感と疲労感が画面からも伝わってきます。

 

苦悩する母親、
誘拐された息子、
犯人グループ、
交渉役のチェイス、
そして大富豪のジャン・ポール・ゲティ。

それぞれの立場の人間の関わり、
それぞれの哲学で動く人間達の

交渉という形の闘争。

 

それぞれの思惑が交錯する様を刮目する作品、
それが『ゲティ家の身代金』なのです。

 

 

  • 『ゲティ家の身代金』のポイント

それぞれの立場のそれぞれの主張

まさかの実話ベース

アンチヒーロー、ジャン・ポール・ゲティの魅力

 

 

以下、内容に触れた感想となっております。

 


スポンサーリンク

 

  • 降板からの、最撮影

本作『ゲティ家の身代金』のジャン・ポール・ゲティ役は元々ケヴィン・スペイシーで撮影されていました。

しかし、ケヴィン・スペイシーがかつて少年に性的暴行を加えていた事が暴露され、
それに呼応して、過去、ケヴィン・スペイシーに被害に遭ったという男性が多数声を上げる事態になりました。

これを受けて、
ケヴィン・スペイシーは自らが主演、製作総指揮をしていたドラマ『ハウス・オブ・カード』を降板、

さらには、本作からも降板する事態になったのです。

 

そして、最撮影にあたり、白羽の矢が立ったのがクリストファー・プラマー。

公開まで、約一ヶ月という状態での、強行軍でしたが、
実際の完成した映画を観るに、
とても代役とは思えない、
むしろクリストファー・プラマーを当て書きした様な印象すら受けます

それ程、雰囲気や佇まいが役にフィットしていたジャン・ポール・ゲティ。

本作は、このキャラクターの魅力が一番の見どころだと思います。

 

  • ジャン・ポール・ゲティ

ジャン・ポール・ゲティは孫の誘拐にビビる事なく、むしろ身代金を値切る様な強心臓の持ち主。

全14人の孫が居るというジャン・ポール・ゲティからすると、
一人にお金を払うと、
「誘拐は金になる」という前提を作ってしまうので、他の孫が危なくなる

だから、払えないと言う屁理屈をこねます。

 

言っている事は正論、事実なので、
その発言を聞いた人間は反論が出来ません

しかし、勿論、

本心は別の所、
ケチなジャン・ポール・ゲティはお金を払いたくない、
それどころか、交渉でも何でも、相手を屈服させる事が好きなのではないかとすら思います。

 

ジャン・ポール・ゲティは、
ゲイル・ハリスがジャン・ポール・ゲティ2世と離婚する時の交渉時、
慰謝料の受け取りを拒否し、子供の養育権のみを要求したゲイルに面食らわせられた経験がありました。

彼の経験では、金を得られる時に、それを放棄する事など有り得ないんですね。

この時の事を憶えていたのか、
「お前の子供は一銭の価値も無い」
慰謝料がゼロの子供なら、身代金もゼロだと言わんばかりの拒絶振り

離婚時、ゲイルに一杯食わされた事への、意趣返しの意味も確実にありますね

 

さて、感情的に考えると、
孫が誘拐されているのに交渉とかお金の出し渋りとか、
ちょっとおかしいんじゃないの?
と思われるかもしれません。

母親のゲイル目線では確実にそうです。

ですが、
端から冷静な目線で見ると、
確かにジャン・ポール・ゲティのやり方は理に適っているんですよね。

実際に、要求額は1700万から400万まで下がっていますし。

さらに、譲渡という形をとって税金対策をし、
瀬戸際外交みたいな事をゲイルに強いて、まんまと養育権を獲得するという火事場泥棒みたいな事までします。

ここまでやられると、逆にスッキリ、
あくど過ぎて笑いがでます

 

このゲティの強かさに比べれば、
誘拐犯達のなんと稚拙な事よ。

突発的な事態を利用し、自分の利になる様に最大限利用する。

「ガキがガキを誘拐し、おままごとをしよるわ」
そういうゲティの言葉は聞こえてきそうです。

ゲイルから見れば、
誘拐犯から息子の身を守るという事もそうですが、
むしろ、ゲティから如何にお金を引き出すか、それが最も困難な事件だったと言えるのではないでしょうか。

 

 

 

世界一の大富豪、
マスコミの狂乱、
耳を切り落とすという残虐性、

色々な要因にてある種の伝説となった事件。

しかし、孫の身代金すら貸し渋る人物の人間描写や哲学
大っぴらには言えませんが、
なんとも悪の魅力というか、独特のカリスマ性があります。

自分の事をカリギュラ(=ユリウス・カエサル)の生まれ変わりだと断言したり、
美術品の中に、自分のバストアップの像を紛れ込ませたり、
誇大妄想甚だしいです。

そして、そこまでしてお金を貯めて、
一体何になるのか?
ジャン・ポール・ゲティの哲学について、思いを巡らす事が楽しい、
『ゲティ家の身代金』はそういう映画なのではないでしょうか。

 

 

現在公開中の新作映画作品をコチラのページで紹介しています。
クリックでページに飛びます

 

 

より現実に近い!?原作本です

 

 


スポンサーリンク