「変転」した世界において、最後のガンスリンガー（拳銃使い）であるローランドは黒衣の男を追って砂漠を渡っていた。未だ姿は見えずとも、黒衣の男の野営の跡を見つける度、距離は確実に狭まっていると感じている、、、
著者はスティーヴン・キング。
当代きってのベストセラー作家。
モダン・ホラーの帝王とも言われる。
代表作に、
『キャリー』
『シャイニング』
『ザ・スタンド』
『IT』
『スタンド・バイ・ミー』
『ミザリー』
『グリーンマイル』
『11/22/63』等多数。
本作、「ダーク・タワー」シリーズは著者スティーヴン・キングが３０年近くの構想と執筆期間を経て完成させた作品。
全７部構成の大長篇ともとれる作品である。
そのシリーズは
ダーク・タワーⅠ ガンスリンガー（本巻）
ダーク・タワーⅡ 運命の三人
ダーク・タワーⅢ 荒地
ダーク・タワーⅣ 魔道士と水晶球
ダーク・タワーⅤ カーラの狼
ダーク・タワーⅥ スザンナの歌
ダーク・タワーⅦ 暗黒の塔
という構成になっている。
世界観を同じくする短篇に「エルーリアの修道女」がある（『第四解剖室』収録）。
映画化作品として『ダークタワー』が公開された。
本作はスティーヴン・キングがロバート・ブラウニングの詩『童子ローランド。暗黒の塔に至る』や、Ｊ・Ｒ・Ｒ・トールキンの『指輪物語』に影響を受けて執筆を開始したというファンタジー。
しかし、そこはスティーヴン・キング。
ハードボイルド西部劇ファンタジー
と言えるミックスジャンルとなっている。
本巻「ガンスリンガー」はその壮大な物語の導入部。
まずは主人粉ローランドの目的とメンタリティが描写される。
その世界観は退廃と荒廃にさらされ、ローランドの道行きは苦悩に塗れたものだ。
決して甘くは無い、しかし、それでも本巻はまだ始まりに過ぎない。
骨太のダーク・ファンタジーの開幕である。
以下、内容に触れた感想となっています
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ザ・ハードボイルド
本作「ダーク・タワー」シリーズは、著者スティーヴン・キングがライフワークとして３０年の構想と執筆期間を経て完成させた作品だ。
偉大なる先人、トールキンの『指輪物語』を読んで自分もファンタジーを書きたいと思ったそうだ。
そこに、西部劇の映画『夕日のガンマン』のテイストを加え『童子ローランド、暗黒の塔に至る』から着想を得て作り上げた世界観が「ダーク・タワー」の基になっている。
ＳＦファンタジー的な世界観。
しかし、武器は拳銃。
主人公は無愛想な放浪者。
そう、本作はハードボイルドなのだ。
西部劇風の街並みを思い起こさせるが、機械文明の名残が退廃したものとして残っている。
どうやら、我々読者とは別の世界が舞台の様だが、現代のニューヨークと思われる場所も出てくる。
大まかな世界観のアウトラインは見えつつも、細部は未だ多くは語られず。
この世界を語るのに、先ずは乾いた砂漠を舞台の始まりとして選び、厳しい試練の開始を予感させるのだ。
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ローランドという男
本巻「ガンスリンガー」では主人公ローランドの目的とメンタリティについて描かれている。
ローランドの目的は「暗黒の塔」へと至る事。
しかし、「何故暗黒の塔へ行くのか？」という理由は明かされていない。
どうやら、過去の何らかの事件が契機となっている様だが、それはおいおい明かされるか？
そしてローランドはその目的の為には手段を選ばない。
様々な困難、肉体的、精神的な障壁を乗り越えて行く。
情を交わしたアリスをためらいも無く（というか、条件反射で）撃ち殺し、
旅の道連れとなったジェイク少年を、運命に薄々気付きながらも側に置き、その時が来たら捨て駒にする。
これ程までに果断な決断をしてでも「暗黒の塔」へと行かねばならぬ理由とは何か？
その理由が、今後明かされてゆくのであろう。
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気になる設定？今後の伏線？
まず気になるのが冒頭の「１９」と「再開」という言葉だ。
「１９」は黒衣の男がアリスに仕掛けた呪いの手紙の文言にもあり、
また、ローランドが母の記憶と共に思い出す詩「十七、十八、十九」でも見られる数字。
伏線として今後何らかの説明がなされるだろう。
また、環状列石の妖魔と黒衣の男の予言が概ね一致している。
今後の展開として予想されるのは、３人の者と出会い、何らかの（誰かの）死を以て暗黒の塔へと至る。
ハッピーエンドっぽい感じだが、ガンスリンガー自身はその幸せに浴せない、
といった感じか。
全巻書き上げた後に、再び第Ⅰ部に戻って細部を書き直したというので、その辺の細かい伏線にも期待したい。
そして、＜カ＞とは何か？
まずこの文字が「か」なのか「ちから」なのか、それがよく分からない。
見た感じでは「か」の片仮名に見えるが、その意味は果たして？
本巻「ガンスリンガー」は、著者自身、修飾過多で読みにくいと言っている。
それを忠実に再現（？）したのか、人によっては訳文も硬質で読みにくいと感じる様だ。
おそらく、スティーヴン・キング自身、「凄いモノを作ってやるぞ」との肩肘張った意気込みのもとに力を入れまくった結果なのだろう。
そういう熱量を秘めつつも、ローランドは冷酷苛烈。
このハードボイルドぶりの格好良さ、
そして、何故そこまでするのか？という謎の部分。
これらが物語の先が読みたいとの期待を喚起する。
先の展開、
そして、今後様々な著者の過去作品ともリンクするという設定、
いずれも期待しつつ、次巻も楽しみにしたい。
＊シリーズ毎の解説ページは以下からどうぞ。
ダーク・タワーⅠ ガンスリンガー（本巻）
ダーク・タワーⅡ 運命の三人
ダーク・タワーⅢ 荒地
ダーク・タワーⅣ 魔道士と水晶球
ダーク・タワーⅤ カーラの狼
ダーク・タワーⅥ スザンナの歌
ダーク・タワーⅦ 暗黒の塔
映画版『ダークタワー』
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さて次回は、遙かな旅とは、時間を超える事なのか？小説『ロマンティック時間ＳＦ傑作選 時の娘』について語りたい。