幻想・怪奇小説『黒面の狐』三津田信三(著)感想  目を逸らしている、不都合な真実こそ、最も怖ろしい!?


 

日本は戦争に負けた。今まで信じていたものを失った物理波矢多(もとろいはやた)は、南へ向かって、あてどな無い旅に出た。汽車が、九州・福岡のとある駅に着いた時、波矢多はハッとした。自分が満州で学んだ新京の駅に、印象が似ていたからだ。その地で出会った合里光範(あいざとみのる)との縁故で、炭鉱で働く事になるのだが、、、

 

 

 

 

著者は三津田信三
ホラーとミステリを融合した作風が特徴的。
著書に、
『忌館 ホラー作家の棲む家』、
「刀城言耶」シリーズ、
「死相学探偵」シリーズ、
『禍家』
『のぞきめ』
どこの家にも怖いものはいる
誰かの家
怪談のテープ起こし』 等がある。

 

 

 

ご存知、三津田信三の登場です。

いやぁ、
本ブログでは、早4度目の登場。

最早レギュラーと言えるのではないでしょうか?

 

やっぱり、
小説というものは、どうしても、
合う、合わないがありますよね。

私にとって、
三津田信三という作家は、鉄板の面白さと言えます。

 

こういう、
自分にとって鉄板の面白さを提供してくれる作家を見つけていると、
色々良いことがあります。

 

例えば、
自分に合わない本を読んだ後とか、
気分が優れない時とか、

そういう時のテンションを上げる時に、
お気に入り作家の作品を読む事は、
大いに役立つのです。

 

 

という訳で(!?)、
三津田信三の文庫最新作『黒面の狐』です。

 

 

時は戦後、
舞台は九州・福岡の炭鉱。

苛酷で危険な重労働の現場においては、
験を担ぐ神頼みと、
不運を怖れる迷信とがリアルに息づいている。

戦争の結果、理想が打ち砕かれた物理波矢多は、
大学出のインテリでありながら、
「戦後の復興を支える現場を見る」という思いのもと、
敢えて、炭鉱で働く事にする。

しかし、
その抜井(ぬくい)炭鉱、の鯰音(ねんね)坑で事故が発生、
そこから、
次々と人が死んで行くことになる。

そして、
その影には、「黒面の狐」がいるとか、、、?

 

 

ホラーとミステリを融合したというのが、
三津田信三の作風。

とは言え、
本作『黒面の狐』は、
どっち寄りかと言われると、

ホラー風味のミステリ作品と言えます。

 

あくまで、
現実的な「ミステリ展開」が基本に座っている印象です。

しかし、
そこは三津田信三作品、

現実的な出来事に、
ホラー的な怪談が加わる事で、

幻想的な雰囲気が立ち上がって来ます。

 

とは言え、
ミステリの謎の部分は、割とギリギリのネタ。

脳みその発想を柔らかくしないと、
謎の解明は困難でしょう。

 

 

怪談要素、
ミステリ要素、
それぞれ楽しめるのが三津田信三作品の魅力ですが、

本作においては、
さらに、

舞台設定の魅力

 

というモノが挙げられます。

戦後という時代、
炭鉱という舞台、

そこで語られる、
日本人が目を逸らし続けてきた、

近現代史という不都合。

 

ミステリの仕掛けのみならず、
時代、舞台設定においても物議を醸す、

『黒面の狐』はそういういう作品と言えるでしょう。

 

 

  • 『黒面の狐』のポイント

信仰と迷信が導く怪談の恐怖

無理矢理!?レベルのミステリトリック

外国人労働力

 

 

以下、内容に触れた感想となっております

 


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