孤独のグルメ Season3 第八話
台東区鶯谷のアボカド鶏メンチと鳥鍋めし
監督:溝口憲司
脚本:田口佳宏
出演:
井之頭五郎:松重豊
長沼:大杉漣
喜多:マギー
柴:深沢敦
幸代:宮本裕子 他
ふらっとQUSUMI:久住昌之
スポンサーリンク
*タイムラインはBDソフト準拠となっております。
-
ドラマパートあらすじ
台東区鶯谷にやって来た井之頭五郎。
朝顔にも水をやってふらりと歩んで行く。
「根岸の里の侘住まい」
「柳がいいなぁ、涼しげで絵になる町だ」
とは言え、暑い事は変わらず、
五郎さんは涼む為に個性的な店名の喫茶店に入る。
「デン」という名前のその店。(01:43:22)
五郎さんはコーヒーフロートを頼む。
他のお客の席に届けられた「グラパン」。
一斤のパンの中身をくり抜いて、そこにグラタンを入れたインパクトある商品。
そして、コーヒーフロートも、なんと上にアイスのコーンが逆さに載っている。(01:45:00)
「オイオイ、なんだコレは」(01:45:03)
「コレ、どうしろって言うんだ?」
「このコーン、邪魔」
その逆さまのコーンの中にアイスを入れて、パリッ。
「お、味は至って真面目」
「でも、コーンが付いてる分、普通のコーヒーフロートよりお得と言えない事も無い」
「お、コーヒーが見えて来た。井の中のコーヒー」
「変な感じ、俺、バカみたいじゃないか?」
「風流とか、小粋とは正反対のセンス。でも美味しいからいいか」(01:46:44)
今日の約束の場所、「東京キネマ倶楽部」にて長沼さんと打ち合わせ。(01:46:55)
現在、イベントスペースで使っているこの場所で、
かつて演っていたグランドキャバレーを再現しようと言うのだ。
そして、備品も本格的にフランス製にし、
そのコーディネートを五郎さんに任せたいとの事。
「井之頭さんも、通った口でしょ?」と尋ねる長沼さん。
いつもの如く五郎さん「いえ、一滴も飲めないんで。全くの下戸なんで」
と、様式美のやり取りをする二人。
長沼さん、携帯が鳴り、ちょっと中座する。
「久しぶりに大きな仕事になりそうだ」
「ここは腹を括って頑張らねば」
と、大の字に体を伸ばす五郎さん。
-
「いかん、腹を括ったら、腹が、減った」(01:49:53)
今週中にはリストを作ってお送りします、と五郎さん。
下戸ってのは、冗談でしょ?と長沼さんは言う。
「ホントに本当です。では失礼します」
「今度飲みに行きましょうよ」
「あぁ、無理です」
「ねぇ」
「御免なさい」
「いや、行きましょう」
「すみません」
と、素早く立ち去る五郎さん。
町を歩く五郎さん、「俺は今、何が食いたいんだ?」
中華は昨日食べたし、「呑兵衛」ってのもなぁ、
と店を物色する五郎さん、「炭火焼 鳥椿」の看板が目に留まる。
開店は朝10:00~、とある。
「また、朝っぱらから酒のむ輩達の店か」
「いあ、炭火焼き、焼鳥と白い飯、悪くない。GOだ」
-
鳥椿(01:51:20)
皆が皆カウンター席に座っている、五郎さんもカウンター席。
早速ウーロン茶を注文する。
「予想はしていたが、やっぱりどいつもコイツも呑んちゃん、兵衛ちゃん」
奥のイカツイ二人組は「メガまだ?」と言っている。
「メガ?最近は何処でもやたらとメガメガって」
そう思った五郎さん、
しかし、実際に来た隣に置かれたメガ(1000㎖のジョッキ)を見て驚愕。
「メッガー!ありゃ本当にメガだ。ごめんなさい」
「いかんいかん、飲んべえ組の空気にのまれて出鼻を挫かれてる場合じゃ無い。メガじゃなく、メニューだ」
改めて壁の短冊メニューを眺める五郎さん。
場違いの「ホットケーキ」の文字に困惑、
さらに、「メガ」をお替わりしている奥の二人組に気を取られる。
「駄目だ、空腹に対して集中していない。無になるんだ」(01:53:29)
気を静める五郎さん、改めて手元の立てメニューを見る。
ウーロン茶も来る。
「うん、見えて来たぞ」
100円おつまみ、150円おつまみとあって、
400円以上は高級品扱い
「店の全貌が掴めて来たぞ」(01:54:10)
甘い物も、立てメニューではきちんと並んでいる。
「これは下戸への直球か、上戸への変化球か」(01:54:24)
そして見つけた「油淋肝」。
これを軸に組み立てる事にした五郎さん。
そこに、眼鏡の客が注文する。
「ポテマヨとチーズ焼きと磯辺焼きちょうだい」
五郎さんメニューで確認、
「ん?両方とも高級品だぞ、俺も負けられん」
「いや、引っ張られるな!ブレるな!マイペース、マイウェイ。心のままに頼むんだ」(01:55:08)
五郎さん、平常心でやや声のトーンを落し注文する。
油淋肝、ハムカツ、おろしポン酢、ライス、みそ汁のラインナップ。
「時間は掛かったが、最後は立て板に水の注文だ」(01:55:50)
五郎さん、隣の女性の酔客に絡まれる。
「昼に飲めないタイプでしょ、真面目なんだぁ」
「すみませんねぇ、酔っちゃってるんで」と連れの男性。
五郎さん、そのお姉さんの飲みっぷりに感嘆、
「敵ながら天晴れ」
そう言い、自分は豪快にウーロン茶を飲んでみる。
五郎さん、ホワイトボードのメニューを発見、
追加でアボカドメンチとウーロン茶をもう一杯注文する。
カウンターの眼鏡の客は、これから仕事というのに日本酒を注文している。
「俺ねぇ、酔ってる位が丁度いいんだよ」
「ふん、シビアな話がどんぶり勘定になっちまうんじゃないのか?」
と、心の中でツッコむ五郎さん。
奥の二人組はチューリップ唐揚げをムシャムシャ。
隣のお姉さんも肉にかぶりついている。
注文の品が来る。
しかし、ポン酢は真っ白。
尋ねると、白いポン酢との事。
眼鏡の客が話しかける、
「それ、ポン酢かかって無いと思ったでしょ。俺も最初そう思った。紛らわしいよね、へへへ」
「はははは」とお姉さんも笑う。
いよいよ食事。
先ずは、油淋肝から。(01:59:48)
「おお、レバーだレバー、肝臓らしいみっちり味」
「飯に合うレバー、イコール、レバニラだったが、油淋、飯に合う、アウストラロピテクス」(01:59:48)
お次はハムカツ、分厚い。(02:00:06)
もじもじする五郎さん、鞄からメジャーを取り出し、
思わず厚さを測ってみる。
「2.5センチ。驚異的な厚さだ。」
その様子を眺める眼鏡、「ハムカツ、美味いよ」
ソースをたらす五郎さん、
「こういうのは塩分がどうのこうのだのつべこべ言わず、ドバドバ行くのが良いんだよ」(02:00:53)
「そんで、カラシさぁ」
「おお、これだよ、コレ。このソース味で俺はいつだってガキ大将になれるんだぁ」(02:01:22)
眼鏡の客が日本酒を飲み終える。
もう一杯行きますか?と勧める店員さんに、
駄目だよ、若いもんがオトナに酒勧めちゃぁ、と言いながら、もう一杯、と頼む眼鏡。
追加で注文したアボカドの鶏メンチも来る。(02:02:08)
「ナイスタイミング」
熱々なのを、ハフ、ホフフ、シュルルっと食べる。
「うまいうまい、これはいい、アボカドが暴れてる」
「鶯谷のメンチでうぐいす色。だったらこの店の主、センス良い。ケド、偶然だろうけど」(02:02:53)
「おかず、よく見たら揚げ物ばかりだ」
「そうなると、コイツが意味を持って来るぞ」
と、おろしポン酢に行く五郎さん。(02:03:12)
「あ、ちゃんとポン酢」
ご飯に載せ、
「おお、白ポン、サッパリする」
「揚げ物、白ポン、揚げ物、このコンビネーションパンチ、イイゾ」
さて、どうするかと、再びメニューを眺める五郎さん。
「折角の鳥料理屋、止めのパンチは鳥鍋めし、これしかないだろう」
と、注文する。
眼鏡の客が「ツケといて」と去り、
お姉さんと連れの男性も、「じゃ、兄さん、またね」とおあいそして立ち去る。
そしてやって来る鳥鍋めし。(02:06:16)
「へぇ、こういう感じなんだ。どれどれ」
「ハッハーン、鳥のすき焼きぶっかけ飯ね、だったら」
と、五郎さん、生卵を注文し鳥鍋めしにかけ、レンゲでパクリ。
「ほうら、思った通りだ、生たまご、大正解の大活躍」
まとめにかかる五郎さん。
「安いおかずを玉子と飯で流し込む」
「鶯谷の昼飲み屋で、こんな昼飯食ってる俺、カッコイイ」(02:08:55)
完食した五郎さん。
新しく客が入って来るが、その客は開口一番「メガ」を頼んでいる。
退店。(02:09:56)
店員さんが見送りに出てくる。
「気持ちのいい若者だな」
「アクの強い酔客相手に若者が頑張っている店か。いいじゃないか」
「あの若者こそ、鶯谷のうぐいすかもしれない」
「酔っ払いの谷間で、健闘を祈る」
そう言い、フラリと去って行く五郎さんであった。
*井之頭五郎食事全集はコチラのページにまとめられています。
-
ふらっとQUSUMI(02:10:50)
朝10時の開店からお酒が飲める店、鳥椿。
*2013年当時のデータですので、お店に行く時は要確認
久住さん、早速メガジョッキ(1,000㎖)のビールに挑戦。
時刻はリアルタイムでまだ午前10時半である。
「これ飲むかねぇ、えっへへ」
「ちょっと重いよ」
「あーっ、手強いですね」
壁にはチューリップ唐揚げの値段表がズラリ。
1~30までは一本ずつの値段、
30~60までは5本おき、
60~99までは10本おきの値段が記されている。
(一本90円の掛算)
「チューリップ唐揚げのアレは、おかしいですね。観念の様なものですね、これは」(02:11:32)
店員さん曰く、
最高は二人で60本食べた人間が居たとの事。
刺身はんぺんを食べる久住さん。
「かぶのぬか漬けみたいに見えちゃうね」
「はんぺんです。ふわふわで」
お次は鳥の一夜干し。
「あら、こういう物だとは思わなかったよ」と久住さん。
料理は、肉がほぐしてある。
「これはおつまみだわ」
「イカ燻とか、ああいうのに近いんだけど、鳥」
名物チューリップ唐揚げも食べる。
「結構デカイよ、これ」
「これ60個って二人で。もっと凄い小っちゃい、一口で食べれるものなのかと思ったら」
「これで90円って安いと思いますよこれ」
「これ一個頼んで、190円のお酒4本で、1000円以下でベロベロだと思います」
と、酒飲みらしい見解を披露した久住さんでした。
*ふらっとQUSUMIの食事全集はコチラのページにてまとめています。
-
声に出して言いたい!五郎さんの名台詞
今回の「声に出して言いたい」五郎さんの名セリフは、
「いや、引っ張られるな!ブレるな!マイペース、マイウェイ。心のままに頼むんだ」(01:55:08)
下戸の人間が飲み屋で注文。
完全アウェー状態だが、雰囲気にのまれるな!
心の足並みを乱さず、自分の構成を信ずるべき時に呟くセリフである。
「こういうのは塩分がどうのこうのだのつべこべ言わず、ドバドバ行くのが良いんだよ」(02:00:53)
ジャンクな物をバクリと食べる時に、
健康がどうのこうのと一々気にするのか?
否!否否否!
欲望のままに美味しさを追求する時に、このセリフを口にしたい。
*『孤独のグルメ』の名台詞はコチラのページにてまとめられています。
-
感想と解説
東京都台東区では、毎年7月初めに
入谷あさがお祭り(朝顔市)があります。
作中で、「行灯朝顔」と書かれていますが、それはどういう意味なんでしょう?
いわゆる、「行灯仕立て」とか「行灯作り」という物は、
蔓状の植物を育てる時の方法です。
朝顔で言いますと、
蔓が生長し、上に伸びやすいように、鉢植えに支柱を4つほど立て、橋渡しすると、
それを囲む様に朝顔が伸び、「行灯」の様な形になるのですね。
こんな風流な感じで始まったエピソードですが、
今回の内容は、「五郎さん VS. 飲んべえ」となっています。
ドラマパートでは、大杉漣さん演じる長沼といつもの様式美、
「~下戸なんです」をやって、
その後の丁々発止の
「飲みに行きましょう」「無理です」
にて軽妙なやり取りを見せてくれます。
このやり取りが頭にあったからか、
五郎さん、何故か今回のお店は完全アウェーの飲み屋を選択。
いつもとは違う雰囲気に、
「駄目だ、空腹に対して集中していない。無になるんだ」(01:53:29)
と自分で自分に言い聞かせる始末です。
その後も、ちょっと色っぽいお姉さんに絡まれたり、
トイレの往復で眼鏡のオジサンにまとわりつかれたりします。
この、ちょっと馴れ馴れしい感じが、
何となく昔ながらの飲んべえのウザさというか、
緩い感じの酒場の連帯感みたいなものがあります。
こういう雰囲気は楽しくて良いですよね。
ですが、実際は、
デリカシーの無い言動を「酔っている事」を理由にさらけ出し、露出狂的にストレス発散している人間もまた、多数います。
その時に絡まれる素面の下戸は、不愉快でしか無いんですよね。
なので、飲んべえと下戸には、
楽しく食事出来るラインが根本的にズレており、
その意味で棲み分けしないと食事が楽しめません。
今回はそれを踏み越えた五郎さん。
不愉快まで行かない、
楽しい雰囲気での飲み屋の描写、
そこまでに留めていたからこそ、
『孤独のグルメ』的食事シーンになり得たのです。
…では、本格的に五郎さんが絡まれどうなるかって?
その時は五郎さんの必殺技、アームロックが炸裂するのです!!
*『孤独のグルメ』の一覧は、コチラのページにてまとめられています。
スポンサーリンク