宇宙帝国クリーの精鋭部隊「スターフォース」の一員であるヴァースは、過去の記憶に欠落があり、そのフラッシュバックに悩まされていた。ある日、宿敵のスクラル人との戦闘にて拉致されたヴァースは、その失われた記憶をスクラルに掘り起こされるが、辛くも脱出に成功し、地球に降り立つ。何故、スクラルはヴァースの記憶を狙うのか?、、、
監督はアンナ・ボーデン&ライアン・フレック。
マーベル映画初の女性主人公を、女性が監督する。
二人のコラボレーション監督作品に
『ハーフネルソン』(2006)(監督:ライアン、製作アンナ)
『sugar』(2008)
『なんだかおかしな物語』(2010)
『ワイルド・ギャンブル』(2015)等がある。
出演は、
キャプテン・マーベル/ヴァース/キャロル・ダンヴァース:ブリー・ラーソン
ニック・フューリー:サミュエル・L・ジャクソン
ヨン・ロッグ:ジュード・ロウ
タロス:ベン・メンデルソーン
マリア・ランボー:ラッシャーナ・リンチ
メンディ・ローソン:アネッット・ベニング
フィル・コールソン:クラーク・グレッグ
グース:猫 等
皆さん、「キャプテン」と言われたら、
何を思い浮かべますか?
クラブ活動の先輩?
仕事の担当責任者?
それとも、
『キャプテン・ハーロック』?
「キャプテン・ファルコン」?
『キャプテン・スーパーマーケット』なんて人も居るかもしれません。
勿論、
「マーベル・シネマティック・ユニバース」においては、
「キャプテン・アメリカ」が最も最初に思い浮かぶ存在だと思います。
しかし、
今回、もう一人の「キャプテン」が誕生します。
それが、本作
『キャプテン・マーベル』なのです。
『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』のラスト、
ニック・フューリーが、その土壇場にてポケベルで助けを求めた、
彼が最も信頼する相手であるキャプテン・マーベル。
時代は遡り、1995年、
ニック・フューリーが「アベンジャーズ」結成を目指す、
その契機となる事件
が本作にて描かれます。
そのニック・フューリーが出会う、
型破りなお転婆、
それが本作の主人公、ヴァース。
本作は、彼女が、
ヴァースから「キャプテン・マーベル」となる、
そのオリジン・ストーリーでもあるのです。
謂わば本作は、
裏「アベンジャーズ」結成秘話、
そんな印象を受ける作品です。
本作、「マーベル・シネマティック・ユニバース」を追っている人に楽しめるのは勿論の所、
単品としても楽しめる映画になっているのが凄い所。
そもそも、
最初の20分位は、
宇宙SFアクションみたいなノリで楽しめます。
まるで、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』的な感じで楽しめる所から、
地球に降りたって、雰囲気が一変するのも、
本作の特徴的な展開です。
地球に降り立った後は、
ヴァースの記憶の謎に迫る形で、
スクラルとの戦闘も交え、サスペンスチックに物語は進みます。
彼女の記憶の謎とは?
スクラルの狙いとは?
ストーリー的なサスペンスに加え、
やはり気になるのは、
彼女の戦闘力。
アベンジャーズシリーズの最終作である『アベンジャーズ/エンドゲーム』、
まさかの、
最終回直前に新キャラ投入!!
対サノスの切り札になるのか?
そこの所も刮目して観る、
『キャプテン・マーベル』とは、そういう映画とも言えるでしょう。
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『キャプテン・マーベル』のポイント
キャプテン・マーベルの戦闘力
逆境を乗り越えて、立ち向かう勇気と気概
1995年という時代背景
以下、内容に触れた感想となっております
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真打ち登場!?
アベンジャーズシリーズが終わる、
『アベンジャーズ/エンドゲーム』。
その、最終回の直前、
まさかの新キャラ投入となった、本作
『キャプテン・マーベル』。
ニック・フューリーがその消滅の直前、
最後の切り札として連絡をとった相手である、
「キャプテン・マーベル」。
その実力は如何に?
対サノス戦の切り札になるのか?
『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』を観た人間なら、
誰しもそれが気になる所です。
而して、その実態は?
いやぁ、
強い、強すぎる!!
ぶっちゃけ、
キャプテン・マーベルこと、
キャロル一人でもサノスに勝てるレベルなんですけど!!
映画開始当初、
ヴァースの戦闘力は、
『ドラゴンボール』で喩えると、
天下一武道会でジャッキー・チュンと戦っていたレベルでしたが、
それが、キャロル=キャプテン・マーベルとして覚醒した後は、
まるで「サイヤ人襲来」時、
界王拳を使えるレベルの悟空くらいに、
急激にレベルアップしています。
間違い無く、
アベンジャーズ最強と言っていいですね。
それにしても、
覚醒シーンの格好良さと言ったら、
正に、スーパーサイヤ人レベルでしたね。
『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』のラストが衝撃過ぎて、
実際、どうやって勝つのかという疑問と命題が与えられた訳ですが、
まぁ、これだけの戦闘力があるキャラが加わったとなると、
逆に緊張感が無くなってしまった。
そんな印象を受ける位、
キャプテン・マーベルは強いですね。
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不屈の精神が、ヒーローの証
まぁ、そんな「アベンジャーズ」絡みの感想はさておき、
本作独自の作品感想へと移ります。
本作『キャプテン・マーベル』のヴァースは、
自分がキャロル・ダンヴァースである事を知り、
そして、自分が尊敬していたウェンディ・ローソンの遺志を継ぐと覚悟し、
覚醒します。
しかし、
キャロルが覚醒した、その最も重要なトリガーとなったのは、
その不屈の精神と言えるでしょう。
「スターフォース」のリーダー、
クリー人のヨン・ロッグはヴァースに、
「たかが人間が、何も出来ずに屈服せよ」と迫ります。
しかし、
元々の友人であるマリアは、
キャロルという人物は、
私が尊敬し、敬愛する素晴らしい人間であると、彼女に告げます。
そう、
キャロルは、
クリー人のエリートであるヴァースでは無く、
「ただの人間」である事を受け入れる事で、
逆にその壁を突破するのです。
キャロルの前に立ち塞がる壁。
それは、
暴力であったり、
偏見であったり、
女性蔑視であったりします。
しかしキャロルは、
その壁に臨む度に、
何度打ち倒されようとも、
立ち上がってきました。
自身の記憶を巡る旅の中で、
自分のそういう本来の気質、
それは、不屈の精神と、それを支える勇気、
そして、自らの意思を実行出来る行動力です。
それを称賛してくれる友人親子の存在に再会し、
キャロルは、人間である自分の力に気付くのです。
そこから、彼女を制限していた枷を外し、
それどころか、相当のレベルアップを果たすのです。
本作、
その評価は、
女性主演、女性監督という事で、
女性蔑視主義者から、大変なバッシングを受けたと言います。
しかし、
本作で描かれているのは、正にそれ。
未だ根強く残る、
偏見という壁を打ち壊す事こそ、
本作が目指したものであり、
それに、世間が過剰に反応した事こそ、
逆に、世間には偏見や差別が満ちている事の証左となっています、
哀しい事にね。
しかし、
そういう社会的な困難というものは、
人間、生きていると、度々直面します。
親の理想の押し付けであったり、
いじめっ子の暴力であったり、
学校の先生の依怙贔屓だったり、
会社の非常識な社風だったり、
サービス残業、休日出勤だったり、
取り引き先の理不尽な要求だったり、
社会の常識だったりします。
しかし、
そういう外的要因による、
個人の資質の規制は時に、
可能性すら規制する事にも繋がります。
自分が押し付けられている「枠」に安住する事は、
時に、安心感が得られますが、
しかし、
同時に、自分の可能性、潜在能力を殺す事でもあるのです。
むしろ、
そういう「壁」を打ち壊し、乗り越える事が、
時には必要になる、
その勇気を本作は示していると言えるのでは無いでしょうか。
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クリーとスクラル
単品でも、
そのテーマ性で楽しめる『キャプテン・マーベル』。
しかし、
過去作を知っていれば、より楽しめる事間違い無しです。
先ず、真っ先に気付くのは、
スターフォースの一員の「コラス」の存在。
「マーベル・シネマティック・ユニバース」でのコラスの初登場は、
『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』です。
ピーター・クイルと再会した時の、
「スター…ロード!」と言ったシーンが印象的でした。
初登場は『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』ですが、
時代としては、
本作の方が、過去に位置します。
そして本作には、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』での悪役であるロナンも、
「スターフォース」の協力者として登場します。
これらの関連から、
過去作を観ている人間だと、
「あれ?スターフォースって腹に一物持っているな」
という事に気付くのです。
自分達はヒーローであり、
悪のスクラル人を倒す正義の味方だ。
そう標榜していますが、
その実態は、帝国主義を掲げる武装国家でもあります。
主観的、表面的な主張は、
客観的に見れば、必ずしも真実とは言えない、
その現実を表しており、
与えられた「枠」を疑わなければ、
気付かない事でもあります。
一方のスクラル人は、
その爬虫類的な緑の見た目、
見た相手をDNAレベルで擬態するという特殊能力(シェイプシフター)、
また、
ゲームの『マーヴル VS. カプコン3』でも、
「スーパースクラル」とうキャラクターが悪役として登場しており、
ぱっと見では完全な悪役です。
本作では、
主義主張の違う相手、
一見して、違う人種、
そういう相手を、即、悪と断じる事の危うさを、
ストーリー展開の面白さで表現しているのですね。
さて、
『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』も含めて、
ちょっと設定を整理してみます。
宇宙の列強である、
クリーとスクラルは、供に長年に渡り敵対を繰り返していた。
スクラルには擬態能力があり、
クリーには、主に3種類の人種が存在し、
集合知性である超高度なAI「シュプリーム・インテリジェンス」の決定に従っている。
この後、
サノスと結託したロナンは、
クリーの主流派に反旗を翻し、
インフィニティ・ストーンの力(パワー)によって、
覇権を目指す事になるのですね。
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1995年
本作『キャプテン・マーベル』の時代設定は1995年です。
90年代と言えば、
ド派手でお気楽なハリウッド映画が全盛の時代。
しかし気付けば、
90年代も、最早一昔前の時代となってしまったのですね。
作中でも、例えば、
ニック・フューリーがポケベルを持っていたり、
スマッシング・パンプキンズの『Mellon Collie and the Infinite Sadness』(メロンコリーそして終わりのない悲しみ)のアルバムジャケットのポスターが張ってあったり、
アーケードゲーム『ストリートファイターⅡ』が画面に映ったりしています。
1995年と言えば、
「ストⅡ」を始め、
『キング・オブ・ファイターズ’95』や、
『バーチャファイター』
『鉄拳』など、
対戦格闘ゲームが群雄割拠していた時代。
そして、
『マーヴル・スーパーヒーローズ』(1995)というゲームも発売された年です。
『マーヴル・スーパーヒーローズ』は、
アメコミの『インフィニティ・ガントレット』、
つまり、
現在「マーベル・シネマティック・ユニバース」で進行中のサノス中心のエピソードを元ネタとした作品です。
知名度の関係で、
映画には「ストⅡ」が出たのでしょうが、
個人的には『マーヴル・スーパーヒーローズ』だったら、
メタ的な面白さがあったと思います。
また、
キャロルの記憶のフラッシュバックと「ストⅡ」が重なっていましたが、
ゲームの『ストリートファイターⅡ』がリリースされたのは1991年。
キャロルの記憶は6年前、1989年のもののハズなので、
記憶の中では「ストⅡ」をプレイする事は不可能です。
現代と記憶のシンクロが、
映像的な混同を招いた、と解釈しましょう。
そして、
ヴァースが墜落した場所である「Blockbuster」(ブロックバスター)は、
当時、全米各地で店舗を展開していたレンタルビデオ店だそうです。
ここのシーンも印象的なので、
少し解説してみたいです。
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『トゥルーライズ』と『ライトスタッフ』
「ブロックバスター」に墜落したヴァースは、
『トゥルーライズ』(1994)の看板にフォトンブラストを打ち込み、
『ライトスタッフ』(1983)のビデオを手に取ります。
『トゥルーライズ』は、
ジェームズ・キャメロン監督、
アーノルド・シュワルツェネッガー主演のアクション大作。
制作費は、当時としては破格の120億円。
1分一億として、有名だった作品です。
(実際の上映時間は141分)
スゴ腕スパイのアメリカ人が、
コメディタッチに、中東のテロリストを倒すという、
まぁ、当時のハリウッドの傾向そのままの、
テンプレお気楽エンタテインメント作品と言えます。
しかし、
ヴァースは、その『トゥルーライズ』の看板をフォトンブラストで破壊するのですね。
これはつまり、
「見たままのテンプレ」に拘るな、
という事を、象徴する行為なのではないでしょうか。
一見して、テロリスト扱いされる中東、
『キャプテン・マーベル』でも、
一見して、悪者扱いされるスクラル。
中東だから、スクラルだからと、
即、悪と決めつける事の危険性、
そして、そういうテンプレ概念を映画の冒頭で破壊してのける、
そういうシーンでもあるのです。
そして、『ライトスタッフ』。
『ライトスタッフ』は、
アメリカ、NASAの「マーキュリー計画」について描いた作品です。
「マーキュリー計画」とは、
人類を軌道上に打ち上げ、
しかる後に安全に帰還させるという宇宙作戦です。
また、
Wikipediaを参照すると、
「ライトスタッフ」という言葉の意味は、
「己にしかない正しい気質」との事。
『キャプテン・マーベル』においても、
キャロルが、自らの中の「ライトスタッフ」に気付く事で、
彼女が「キャプテン・マーベル」へと覚醒します。
また、
『ライトスタッフ』はそのテーマとして、
それぞれの立場、生き方が違っても、
その人生の中で勇気を持って生きる人間の尊厳を讃えています。
不屈の精神を持つキャロル、
スクラルの為に命を賭したローソン、
飛行機に乗り、娘を育て、偏見と戦ったマリア、
アベンジャーズ結成を目指す事になるフューリー。
本作では、
市井の人間も、ヒーローも、
それら別々の道を歩む者を等しく描いており、
これは正に、テーマ的に、
『ライトスタッフ』で描かれたものを目指しているとも言えます。
『トゥルーライズ』を破壊し、
『ライトスタッフ』を手に取る、
本作は、「ブロックバスター」のシーンにおいて、
そのテーマ性を象徴するシーンを、どうしても入れたかった、
そういう意図が見えるのですね。
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出演者補足
本作で、スクラル人のリーダー的存在、
タロスを演じたのはベン・メンデルソーン。
素顔でも、ニック・フューリーの上司であるケラーを演じています。
『アニマル・キングダム』(2010)
『プレイス・ビヨンド・ザ・パインズ/宿命』(2012)
『エクソダス:神と王』(2014)
『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』(2016)
『ウィンストン・チャーチル ヒトラーから世界を救った男』(2017)
『レディ・プレイヤー1』(2018)など、
多数の作品に出演。
威厳のある役、嫌らしい悪役、渋い隣人など、
特に、最近は印象的な役に多く出演しています。
キャロル・ダンヴァースの幼少時代を演じたのは、
マッケナ・グレイス。
『gifted/ギフテッド』(2017)
『アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル』(2017)
『レディ・プレイヤー1』(2018)等で、
印象的な子役を演じており、
今後の飛躍が期待されます。
因みに、
『gifted/ギフテッド』では、
「キャプテン・アメリカ」役のクリス・エヴァンスと共演しています。
そして、
キャプテン・マーベル/キャロル・ダンヴァースを演じたのは、
ブリー・ラーソン。
出演作に
『ショート・ターム』(2013)
『ルーム』(2015)
『キングコング:髑髏島の巨神』(2017)等があり、
『Unicorn Store』(2017)では、監督業にも挑戦している。
彼女は美人ではありますが、
体型は、ちょっとちんちくりんで、
エラが張っており、小顔とは言えない感じです。
しかし、
その眼差しと相俟って、
お転婆であり、意思の強さを感じさせる顔貌、
そして、ドッシリとした立ちポーズが魅力的です。
演じる人間が持っている雰囲気が、
役柄そのものに共通する、
そういう、希有でベストな配役であると言えます。
「アベンジャーズ」シリーズの最終回目前に、
対サノスの最終兵器として、
最も遅れてやって来た主人公、『キャプテン・マーベル』。
自分を封じる「枠」や「枷」を壊す事で、
自らの可能性を解き放つ、
そこを目指す、勇気を意思を称賛する作品、
『キャプテン・マーベル』は、
ただの「アベンジャーズ」の繋ぎでは無い、
そういう人間を信じた作品と言えるのではないでしょうか。
*現在公開中の新作映画作品をコチラのページで紹介しています。
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アメコミ原作は、コチラ
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