映画『ソー:ラブ&サンダー』感想  好きな人の前では、自分を良く見せようとしてしまうものよ

サノスとの戦いの後、ガーディアンズ・オブ・ギャラクシーの面々と共に宇宙への旅に向かったソー。ダイエットを敢行し、メタボを克服した彼は、無双の強さを誇っていた。
ある日、クルーは救難信号を受信する。数多ある救難信号の中に、ソーは旧友のシフが自らを呼ぶ声を聞く。ガーディアンズと別れ、コーグと共にシフの元へ向かったソーは「神殺し」ゴアの存在を知る、、、

監督は、タイカ・ワイティティ
ニュージーランド出身。俳優業や声優もこなす。
監督作に、
マイティー・ソー バトルロイヤル』(2017)
ジョジョ・ラビット』(2019) 等がある。

出演は、
ソー:クリス・ヘムズワース
ジェーン・フォスター/マイティー・ソー:ナタリー・ポートマン
ヴァルキリー:テッサ・トンプソン
コーグ(声の出演):タイカ・ワイティティ

ゼウス:ラッセル・クロウ

ゴア:クリスチャン・ベール 他

アベンジャーズのメインメンバーの中でも、
当初は、イマイチ、人気が盛り上がらなかったソー。

しかし、
単独主演映画の3本目『マイティー・ソー バトルロイヤル』が、
バツグンに面白かった!!

これまで、
ちょっとスカした印象だったソーのキャラクターをイメチェン、
ドジでお間抜けだけど、決めるところはキメるという、
まるで、少年漫画の主人公の様な活躍で、人気を博しました。

因みに
『マイティー・ソー バトルロイヤル』は、
2017年公開映画の個人的「ベスト1」として、
当ブログでも推しております。

その後、「マーベル・シネマティック・ユニバース」の、
アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』(2018)
アベンジャーズ/エンド・ゲーム』(2019)での
ソーの活躍、描写も神がかっており、
(まぁ、神ですが)

また、
直近のマーベル映画シリーズ最新作品、
スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』(2021)
ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』(2022)も
名作だった事もあり、

必然的に、
本作『ソー:ラブ&サンダー』に対する期待も爆上がりしていました。

で、実際の映画を観て思ったのは、

それなりに面白かったけれども、
爆上がりしたハードルを超えるまでは至らず

と言った所。

アクションもあり、
ギャグもあり、
奇想天外な冒険もあり、

面白い!!けれども、

なんだか、ちょっと、
堅苦しい感じがしました。

流石に、
事前の期待が大きすぎて、
スタッフ全員が力を入れすぎて、
緊張、萎縮しているのかな?

ほら、
オリンピックとかで、
事前に「金メダル確実!!」とか煽られまくった選手が、
銅メダルを獲ったとして、

まぁ、銅メダルでも凄いのに、
本人も、観ているだけの人も、
何だか、ガッカリするみたいな、
そんな印象ですね。

しかし、
本来、戦闘能力なら、アベンジャーズの中でも随一のソーの単独主演映画という事で、

アクションシーンは、
過去のシリーズと比べても、遜色ないレベルの派手さがあります。

そして、観て欲しいものが、

出演陣の筋肉美!

事前のプロモーションにて、
「なかやまきんに君」が、日本語吹替え声優と共演していましたが、

きんに君を起用したのも頷ける、
出演陣のパンプアップぶり。

主演のソーを演じる、クリス・ヘムズワースは、
過去一のモリモリ増量だし、

本作にヒロインとしてシリーズに復帰した、
ジェーン・フォスター演じる、ナタリー・ポートマンも、
二の腕が凄い事になってます

細い眉毛とか、
顔が痩せこけているので、印象に残り難いですが、
彼女の腕の太さを見ると、
役を演じるにあたって、
どのくらい鍛え上げ、苦労があったのか、
想像に難く無いです。

ヴァルキリー役のテッサ・トンプソンも鍛え上げており、

成程、
これはきんに君みたく、
「パワー!!」と言ってしまうのも、頷ける映画です。

で、逆に、
本作でヴィラン(悪役)、ゴアを演じるクリスチャン・ベールが、
その真逆のベクトルで、
ガリガリ。

クリスチャン・ベールは、
筋肉質な役をやったり、
反対に、ガリガリの役をやったり、
肉体的に忙しいタイプの役者ですが、

今回は、
ガリガリタイプの役柄。

味方が筋肉モリモリで、
敵は、病的なガリガリというのも、
対象的で面白い描写ですね。

事前の爆上がりしたハードルを越えるには至りませんでしたが、

それでも、
アクションSFアドベンチャー作品として、
ギャグあり、ロマンスありで、
安心して楽しめる、

『ソー:ラブ&サンダー』は、
出来の良い、エンタテインメント作品なのです。

  • 『ソー:ラブ&サンダー』のポイント

アクションとロマンスとギャグのSF大冒険

好きな人の前では、堅くなっちゃうよね

喪失からの再起と、覚悟

以下、内容に触れた感想となっております

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  • 高すぎたハードル、超えられなかった二つの要因

『マイティー・ソー バトルロイヤル』や、
『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』
『アベンジャーズ/エンド・ゲーム』での活躍、キャラクター描写が
神がかっていたソー

アベンジャーズのメインの二人、
アイアンマンとキャプテン・アメリカが表舞台から去った今、

4本目の単独主演映画を張るソーの期待は大きく、

更に、
直前の「マーベル・シネマティック・ユニバース」映画、
『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』
『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』が名作だった事もあり、

本作への期待値は、
嫌が応にも爆上がりしていました。

そんな本作『ソー:ラブ&サンダー』は、
確かかに、面白かったですが、
期待を超えるまでは至らず、といった印象。

個人的に気になった部分を、
指摘してみたいと思います。

先ず、一つ目は、
ソーが堅苦しい所。

具体的に言いますと、
ロマンス関連のエピソードが、
かったるい印象でした。

実は、元々「ソー」が主演の映画には、
共通したテーマがあって、
それは、「喪失からの再起」というものです。

第一作目の『マイティー・ソー』(2011)は、
弟の裏切りと、
ムジョルニアを持ち上げる資格の喪失からの再起。

第二作目の『マイティー・ソー/ダーク・ワールド』(2013)は、
母親の喪失。

第三作目の『マイティー・ソー バトルロイヤル』(2017)は、
父親の喪失、
ムジョルニアの喪失、
奴隷に堕ち、そこから再起するも、
故郷を喪失。

『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』(2018)では、
弟の喪失、
国民の虐殺からの、復讐の決心。

『アベンジャーズ/エンド・ゲーム』(2019)では、
自信の喪失からの、
母親、ムジョルニアとの再会から、再起を目指す。

という流れで、
本作、

『ソー:ラブ&サンダー』(2022)では、
恋人との喪失を描いています。

なので、
実は、基本的にソーの物語は、
暗くなりがちなのですが、

その路線に、
分かりやすいギャグテイストを混ぜる事で、
硬軟織り交ぜたバランス感覚を作品に注入したのが、

第三作目の「~バトルロイヤル」(監督:タイカ・ワイティティ)からなのです。

「バトルロイヤル」以降のソーは、
まるで、少年漫画の主人公の様に、
ギャグキャラでありながら、
締める場面は、カッコ良く締めるというポジションを確立していました。

  • 好きな人の前で堅くなる問題

そして、
本作でも、そのタイカ・ワイティティ路線を継承しているのですが、

ソーが、
シリアスというか、堅苦しくなる場面があります。

それは、
ジェーン・フォスターと絡む場面です。

男性でも、女性でも、
同性同士ではハッチャケたノリで楽しんでいても

ここに、異性が混じると、
途端に、猫を被った様な、
自分を、必要以上に格好良く見せようとする心理が働いてしまいます

ぶっちゃけ、
本作では、ソーとジェーンが絡むシーンは、
全て堅苦しく、
「イケメン」ソーが顔を出して、
子供でも共感出来る「悪ガキ」ソーの顔が引っ込んでいるんですね。

つまり、
ロマンスを描いた本作、

好きな女子の前で、
堅くなる男子のノリであるが故に、

新たに獲得した、
男子学生の悪ノリとか、
復讐に燃える闘士、
といった側面が、引っ込んでしまい、

それが、ちょっと期待外れではありました。

まぁでも、
女子の前で気持ちを伝える時、
緊張して、萎縮してしまうソーの心情は、
それはそれで、
可愛く、微笑ましく感じますがね♡

  • ヴィランのインパクトが弱い

二つ目の要因が、
敵(ヴィラン)のインパクトが弱いという点です。

第一作目は弟。

第二作目は、
母親を殺害したダークエルフのマレキス。

第三作目は、
最強の武器「ムジョルニア」をあっけなく破壊したインパクトがもの凄い、
ヘラ。

「インフィニティ・ウォー」と「エンド・ゲーム」で対峙した
ラスボス、サノスは、
故郷を追われたアスガルドの民を虐殺し、
ハルクをステゴロでぶちのめし、
弟、ロキと盟友、ヘイルダムを殺害したという凶悪ぶり。

で、
本作のゴアですが、
今までのヴィランが凄すぎて、
ポッと出の「あんた、誰?」状態で、因縁が無いのです。

ぶっちゃけ、本作は、
途中で現われた、ゼウスの方が、インパクトが大きいです。

というか、
ゼウスが出て来る辺りのエピソードが、
本作で一番面白い所。

救援を求めてかしづいたのに、
その期待を裏切られた喪失と、
友人、コーグの(体の)喪失、
そこからの復讐が描かれて、
如何にも、ソーらしい展開が、
短い時間に、
ギャグとアクションと悪ノリを盛り込みつつ、描いているからです。

そのゼウスに比べて、
ゴアの描写は弱いです。

ゴアは、
娘を喪うという、
感傷的なエピソードを冒頭に持って来てしまい、
凶悪さより、哀しさが際立ってしまっています。

更には、
「神殺し」という異名を持ちつつも、
神を打倒した場面が少ない。

それこそ、
出陣したゼウスの軍勢を相手にするとか、
ソーの影に隠れて、神の集会に侵入して、
ゼウスや神の面々に手傷を負わす位の活躍があっても、
良かったんじゃないかな、と思います。

また、
ゴアに取り憑いた「ネクロソード」という武器が、
どういうものなのか、
その因縁が全く作中で描かれなかったので、

その点も、
イマイチ、強さの後付けになっていなかったのが、
惜しいと思いました。

ゴアを演じるクリスチャン・ベールの演技自体は、
雰囲気が良かっただけに、

もうちょっと、
ゴアの心情面にプラスして、
戦闘面もフューチャーして欲しかった所です。

  • 意外な出演陣

本作『ソー:ラブ&サンダー』は、
意外な出演陣にも、注目です。

先ず、
ニューアスガルドで劇中劇が演じられる場面がありました。

それに、前作「~バトルロイヤル」に引き続き、
ロキを演じる役者:マット・デイモン
ソーを演じる役者:ルーク・ヘムズワース
オーディンを演じる役者:サム・ニール
ヘラを演じる役者:メリッサ・マッカーシー(今回初出演)

という、
無駄に豪華な役者が出演しています。

ソーを演じる役者役のルーク・ヘムズワースは、
ソーのソックリさんですが、それもそのはず、
ソーを演じるクリス・ヘムズワースの実兄なのです。

で、
他の出演者を、Wikipediaで確認した所、

幼少期のソーを演じたのは、
サシャ・ヘムズワースと、トリスタン・ヘムズワース、

ゴアの娘、ラブを演じたのが、
インディア・ローズ・ヘムズワースとなっております。

!?
へムズワース一族、出演多すぎィ!!

家族的な絆を重視する、
タイカ・ワイティティ監督ならではのキャスティングと言えるのではないでしょうか。

  • お気に入りのシーン、あれこれ

因みに、
ラストシーンにて、

ラブがストームブレイカーの方を使っていたのは、
未だ、ムジョルニアを使う資格が無いという点と、

より、強力な武器を、
愛する者に使わせているという側面があるのではないでしょうか。

この場面、
「エンド・ゲーム」で、
ストームブレイカーを手にしたキャプテン・アメリカにムジョルニアを渡し、
「それ(ストームブレイカー)を渡せ、お前には小っこい方(ムジョルニア)をやる」と言っていたシーンと対象的で、
面白かったですね。

又、お気に入りのシーンと言えば、
本作で新たに登場した、
ヤギの二匹の
トゥースグラインダーと
トゥースナッシャーの二匹。

ギャーギャー喚いていたのに、
ソーが「ミーティング(話し合い)しよう」と言った言葉を
「ミート(挽肉)にしよう」と聞き間違えて、
瞬間に黙るシーンが良かったですね。

他にも、
復活したムジョルニアに興味津々なソーを、
ストームブレイカーが、度々、牽制している場面が面白いです。

まるで、
元カノに近付く男を、
今カノが無言の圧力でもって掣肘するかの如くの、
ストームブレイカーの様子に、

もの言わぬ武器にも、
感情や意思があるのかと、
面白くも、興味深い描写でした。

ギャグ大目で、
アクションもぶっちぎり、
ロマンスもあって盛り盛りな内容ですが、

ちょっと、
自分を着飾った感じがする『ソー:ラブ&サンダー』。

今までは、自然体のソーの喜怒哀楽がウケていたので、
本作では、堅苦しい場面もあり、
期待を超えるまでは行きませんでした。

いや、ちゃんと、面白かったけれども、ね。

ストーリー、テーマ的にも、
数々の喪失を経験したソーが、

愛して、喪う哀しみに直面するより、
心を閉ざした方がいい、
と自暴自棄になっていた「エンド・ゲーム」の頃より、
心情に変化が見られ、

愛して喪う事も、
それも、喜びの一部なのだと、
精神的に成長した覚悟が見られたのが、良い所です。

お決まりのエンドクレジット後のオマケ映像で、
ゼウスの息子、ヘラクレス(ハーキュリーズ)の登場が予告され、

「ソー」の単独主演映画が続く事が示唆されております。

今後も、
ソーの活躍に期待して、
続篇を待ちたいですね。

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