集団セラピーに、ド派手なステージ衣装で現われたエルトン・ジョン。アル中でヤク中で性格最悪と自称する彼は、自分の半生を語り出す。それは、5歳のあの日、初めてピアノを弾いた日の記憶に纏わるエピソードから始まる、、、
監督は、デクスター・フレッチャー。
俳優業を経て、監督作に、
『ワイルド・ビル』(2011)
『イーグル・ジャンプ』(2016)がある。
昨年大ヒットした『ボヘミアン・ラプソディ』(2018)でも、
監督降板騒動の後に、
映画の仕上げを行った、
実質的な監督業を行っている。
製作総指揮は、エルトン・ジョン自身。
出演は、
エルトン・ジョン:タロン・エガートン
バーニー・トービン:ジェイミー・ベル
ジョン・リード:リチャード・マッデン
シーラ・フェアフラザー:ブライス・ダラス・ハワード 他
2018年の9月17日のツイッター、
そして、9月20日の国連演説にて、
アメリカのトランプ大統領は、
北朝鮮の金正恩最高指導者を、
「ロケットマン」と非難しました。
そして、現在、
北朝鮮は、依然、ロケットの威嚇射撃を続け、
しかし、
日韓の軍事協定である「GSOMIA(軍事情報包括保護協定)」を破棄。
結局これは、北朝鮮の利する所になると目されていますが、
今後の日本の安全保障の問題は、果たして?
そんな、金正恩の物語が、
本作『ロケットマン』…ではありません。
本作は、
歌手、エルトン・ジョンの半生、
おおよそ、1950~1989年迄の期間を描いた作品です。
ド派手なステージ衣装とパフォーマンス、
ポップでキャッチーでありながら、
人の共感を呼ぶ、歌声と、歌詞。
当代随一のリビング・レジェンド、
その栄光と苦悩の日々が、
数々のエルトンの名曲に乗せて、
ミュージカル風に描写されます。
ことある毎に挿入される、
エルトン・ジョンのヒット曲の数々。
それを、
主演を演じる、タロン・エガートンが、
エルトンに成りきって歌い上げます。
(つまり、劇中の歌は、ほぼ、タロン・エガートン)
タロン・エガートン、
よく頑張った!
また、
歌もさる事ながら、
エルトンは、ゲイ。
ちゃんと、ラブシーンも、
誤魔化す事無く挑戦しています。
おっさんずラブ、何するものぞ!
コチラはガチのおっさんずラブシーンじゃわい!
…という、エルトンとタロンの声が聞こえて来そうです。
ストーリーは、
こういう、アーティスト系の映画に鉄板の
栄光、成功と孤独、苦悩、
友情と家族関係、酒、ドラッグ、セックスの物語。
あれ?
最近でも、この設定、この展開、
何処かで観た事あるぞ!?
これ、
「ボヘミアン・ラプソディ2」?
という人も居るかもしれません。
まぁ、
それは、否定しません、
ぶっちゃけ、そう言えなくも無いですから(!?)。
しかし、
中身はエルトン・ジョン。
監督自身が言う様に、
正に、ファンタジーの様な半生をリアルに生きた人間の物語である本作に、
成功とは、
有名であるとは、
そして、
人生における、本当の幸せとは何か?
改めて、考えさせてくれる、
『ロケットマン』とは、
そういう作品と言えます。
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『ロケットマン』のポイント
エルトン・ジョンの音楽に乗せたミュージカル風ストーリー
スターの栄光と孤独
人との縁
以下、内容に触れた感想となっております
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エルトン・ジョンとタロン・エガートン
本作『ロケットマン』は、
エルトン・ジョンの半生、
大体、1950年代~1989年ほど、
エルトン・ジョンが、
挫折から立ち直る迄を描いた作品です。
本作にて主演を演じるのは、
タロン・エガートン。
実は、
本作以前から、
タロン・エガートンとエルトン・ジョンは関係があったのです。
タロンは、
イルミネーションのアニメ映画『SING/シング』(2016)にて、
エルトン・ジョンの「I’m still standing」を歌っています。
また、
エルトン・ジョンは、
タロン・エガートン主演の映画『キングスマン:ゴールデ・ンサークル』(2017)に特別出演しています。
『キングスマン』(2015)にて、
圧倒的な身体能力を披露したタロン・エガートン。
しかし、
本作を観て解るのは、
彼は、歌唱力も、並では無いという事。
何しろ本作では、
エルトン・ジョンの歌を、
タロン・エガートンが歌っているからです。
タロンは、
よっぽど、エルトンに気に入られたのか、
役作りの前に、
エルトンの自宅に何日か泊まりに行き、
プライベートな自伝なんかも拝見したとの事。
あ、因みに、
エルトンの自宅には、
タロンは、恋人同伴で行ったとの事。
…ファンの方は、
ご安心を(何を?)。
こういう、人との縁が繋がって、
一本の映画を作るまでになると思うと、
ちょっと、感慨深いものがありますなぁ。
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アーティスト系の映画のテンプレ?
前年、
『グレイテスト・ショーマン』(2017)
『ボヘミアン・ラプソディ』(2018)
『アリー/スター誕生』(2018)といった、
音楽をその基調とする、
ミュージカル映画/アーティスト系映画の名作が相次いで公開されました。
それ故、本作、
これらの名作と比べると、
ぶっちゃけ、二番煎じ感が免れない感じがします。
特に、
ストーリー展開が、
昨年、日本で大ヒットした『ボヘミアン・ラプソディ』と酷似しているのが、
残念ポイント。
しかも、その上で、
『ボヘミアン・ラプソディ』は、
フレディ・マーキュリーの歌声と、
それ以外のシーンでも、
フレディ自身とソックリな声にて、映画を彩っていたのに対し、
本作は、
歌のシーンは、タロン・エガートン。
映画としての完成度では、
役者本人が歌う事に意味がありますが、
「ファンが鑑賞する」という観点においては、
エルトン・ジョン自身の歌が聴きたかったという側面もあるのです。
また、ストーリー面でも、
『ボヘミアン・ラプソディ』は、
家族、仲間との和解を経て、
ラスト、ウェンブリーでのライブエイドのシーンというクライマックスがありました。
一方『ロケットマン』は、
家族とは訣別、
仲間との和解は描かれますが、
そこで、再起を誓う形で、物語りが終わります。
『ロケットマン』は、事実に即した描写故に、
人生は、そうそう物語の様にクライマックスがある訳ではありません。
リアルな、
「スターの栄光と苦悩」を描いた故に、
ちょっと、ラストがまとまらなかったなぁ、
という印象を受けたのが、残念な所です。
まぁ、
まだ、生きている人間ですしね。
それでも、
エルトンのステージパフォーマンスの様子や、
当時のド派手衣装を映画用に再現しているのは、
拘りポイント。
そういう、美術面での頑張りがあるが故に、
脚本、編集面でも、
本作ならではの、オリジナリティを出して欲しかったと思います。
エルトン・ジョンの半生を、
ダイジェスト的に、ファンタジー的に再現した、
『ロケットマン』。
栄光を得たその反面、
それが故の苦悩に見舞われる様子を描いています。
あくまで、エルトン目線とは言え、
父からは腫れ物扱い、
母からは「お前の親で私は損した」などと言われる始末。
有名人という特殊性、
ゲイという性的指向、
卵が先か、
鶏が先か、
そういう、家族関係の孤独が、
人生に通底している、
エルトン・ジョンの圧倒的孤独感を描いた作品と言えます。
成功する為には、
過去の自分を捨て、成りたい自分になれ。
そうして、エルトン・ジョンとなったレジナルト・ケネス・ドワイト。
しかし、
そのペルソナは、
人生を孤独に歩む事を、エルトンに強いるのです。
それでも、
依存症に逃げる事なく、
人に求められる「音楽」を、今も提供し続けているエルトン・ジョン。
ダイジェストの様な、本作では、
エルトンの人生を語り尽くせていない印象を受けます。
例えば、エルトンは、
親しくなった相手にカルティエの時計を贈るというエピソードがありますが、
本作では、父親に、それを贈るシーンがあります。
さりげなく、触れているんですね。
確かに、映画の物語としては類型的ですが、
それでも、
特別な人間でも、人と同じに、感情があり、色々と悩む、
人生の幸せとは何か、
そういう事にも思いを馳せる映画なのではないでしょうか。
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