活劇スパイ小説「アーガイル」4巻目を出版したエリー・コンウェイ。ファンミーティングにて次回作の事を尋ねられたが、実は、5巻目もほぼ出来上がっていた。
結末について、母に相談しようと実家へ向けて列車に乗ったエリー。向かいの席に不躾に座った男は、彼女のファンだと名乗った。しかも、本物のスパイだと言うのだ、、、
監督は、マシュー・ヴォーン。
イングランド出身。
監督作に、
『レイヤー・ケーキ』(2004)
『スターダスト』(2007)
『キック・アス』(2010)
『X-MEN:ファースト・ジェネレーション』(2011)
『キングスマン』(2015)
『キングスマン:ゴールデン・サークル』(2017)
『キングスマン:ファースト・エージェント』(2021)がある。
出演は、
エリー・コンウェイ:プライス・ダラス・ハワード
エイダン:サム・ロックウェル
リッター:ブライアン・クラストン
ルース:キャサリン・オハラ
アルフレッド・ソロモン:サミュエル・L・ジャクソン
アーガイル:ヘンリー・カヴィル
ワイアット:ジョン・シナ
キーラ:アリアナ・デボーズ
ルグランジェ:デュア・リパ
アルフィー(猫):チップ(監督の飼い猫) 他
マシュー・ヴォーン監督の
シリーズ化された、ヒット作の『キングスマン』はスパイ映画。
英国紳士+スパイアクションといえば
「007」シリーズが思い浮かびますし、
毎回ド派手なスパイアクション映画
「ミッション:インポッシブル」シリーズという
競合がありながら、
ケレンミと悪ノリを同居させたアクションという
監督ならではの持ち味を活かして、
スパイ映画に新たなるシリーズを誕生させました。
さて、
そんなマシュー・ヴォーン監督が、
まさかのスパイ映画の別モノを作った!?
それが本作『ARGYLLE/アーガイル』です。
エリー・コンウェイは大ヒットスパイ小説「アーガイル」の作者。
列車で複数の暴徒に襲われた彼女は、
スパイを名乗るエイダンに助けられます。
エイダンが言うには、
彼女が書いた小説の内容が
現実で進行しているスパイの陰謀そのものであり、
エリーは謂わば、予言者的な存在としてマークされているとの事。
エイダンは小説の続きを書け=
次に現実で起こる事を予言しろと促しますが…
一風変わったストーリーにて物語が開幕する本作、
つかみはバッチリですが、
全体的にどうだったかと言いますと、
どんでん返しと、
やっぱり、ケレンミと悪ノリが同居するアクション
そして、ロマンス
何と言うか、
「キングスマン」シリーズと、
やっている事は同じというね。
つまり、
良くも悪くも、
「キングスマン」が好きならば、
本作も楽しめるかと思われます。
違う点と言えば、
ストーリー展開の意外性を目指している点ですかね。
とにかく、
観客をビックリさせよう、
そういう、ある種のサービス精神、
若しくは、
天邪鬼さが目立ちます。
意外性に満ちたストーリー展開は、
観ている時は、
「ほへ~」となって、それなりに面白いンですが、
しかし、
冷静に考えてみると、
アレ?
何か、論理的に破綻してない?
と、思う所もしばしば…
ケレンミがあるシーンは、
それ即ち、
ツッコみどころとイコールであるので
物語に整合性とか、
論理とか根拠とか、
そういうのを求めてはいけないタイプの作品です。
大らかな気持ちで、
ド派手はアクションとケレンミとツッコみを楽しむ、
それが『ARGYLLE/アーガイル』を楽しむコツだと思われます。
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『ARGYLLE/アーガイル』のポイント
ケレンミと悪ノリが同居したアクション
どんでん返しの連続に疲れる
「幸せ」とは、その当人のもの
以下、内容に触れた感想となっております
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アーガイル模様
本作の題名は『ARGYLLE/アーガイル』。
そうはいっても、
「ストリートファイター」に出て来る、
画面端でウンコ座りしているデッキブラシみたいな頭の軍人とは何にも関係はありません。
「アーガイル(argyle/argyll)」とは、
複数色から成る、菱形、もしくはダイアモンド柄の模様の連なり。
その中心を、辺と平行した線が交差している。
本作では、
メインビジュアルとかに使われていますが、
ぶっちゃけ、
この模様が本篇の内容と密接に関わっているのかというと、
そうではありません。
単に、
エリーの小説の主人公の名前を、
映画の題名に使っただけに留まっています。
スペルも、
アーガイル柄(argyle)から、
アーガイル(argylle)と「L」が多かったり、
ちょっと、
意図する所が何かあるのでしょうが、
それが分からなかったりします。
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どんでん返しも程ほどに
本作『ARGYLLE/アーガイル』は、
ケレンミと
それとスレスレの悪ノリが同居したスパイアクション映画。
マシュー・ヴォーン監督と言えば、
そういうアクションがウリの一つ。
『キングスマン』の教会でのバトルロイヤルがケレンミの代表なら、
『キングスマン:ゴールデン・サークル』でのエルトン・ジョンのシーン全部が悪ノリの代表と言えます。
本作で言うなら、
スモークを炊いて銃を撃つシーンや、
ナイフをスケート靴のように使って、タールの上を滑るシーンなど、
ケレンミのあるアクション場面が印象的です。
さて、それに加えて本作は、
ちょっと、ツイスト(捻り)を入れたストーリー展開となります。
正に、
どんでん返しの連続です。
以下、内容をガッツリネタバレしていきます
エリー・コンウェイは予言者だった
→記憶を失ったスパイエージェントが実体験を書いていた
→アーガイルの正体は自分だった!!
→敵の組織を壊滅させよう!
→と、思ったら、自分は敵側の人間だった
→と、見せかけて、ダブルスパイでやっぱり味方だった
みたいな、ね。
これ、
観ている瞬間は、
おお~そうきたか!
と、一瞬思いますが、
そう感心するのも「アーガイルの正体はエリーだった!!」
という時点くらいで、
何度もどんでん返しを喰らうと、
「もうええて」「どうせ助かるンだから、余計な手順を踏むなや」と、
冷めたメタ目線が、どうしても入って来てしまいます。
人間、騙され続けると耐性が出来て、
素直さが失われてしまうのです。
本作上映時間は139分。
マスターファイルに載っていた、
悪事を働くスパイ連中の中に、
エリーの顔もありましたが、
どうせ、敵側だった、
と見せかけて、
やっぱり、エイダンの味方になる。
という展開は見え透いているので、
この下りは要らなかったと、個人的には思います。
139分は長すぎるので、
私なら、
この下りをカットして、20分は短縮していましたね。
それでも119分で、
ちょっと長く感じます。
スパイものは、
100分位で丁度良いよ。
(個人の感想です)
昔、
ジョディ・フォスターや、
メル・ギブソンが出演していた『マーヴェリック』(1994)という西部劇の映画がありましたが、
これも、
どんでん返しの連続で、冷めてしまった覚えがあります。
「意外な展開」も、
用法、用量を守って正しく使わないと効果が薄くなります。
又、
本作の場合、
ストーリー展開に意外性、
観客の意表を突く事に注力するあまり、
ストーリーそのものの整合性を犠牲にしている感があります。
そもそも、
マスターファイルの行方を探しているのなら、
洗脳して本を書かせて、
5年近くの年月をかけるよりも、
催眠にかけて、
手っ取り早く聞き出した方が、よっぽど物事が早く進みます。
人生丸々洗脳出来るのに、
催眠をかけて聞き出す事は出来ないのか?意味不明です。
又、
エリーがエイダンの胸を打ちますが、
その弾丸が都合良く、心臓の血管を傷付けず素通りしますかね?
服の上から狙って出来ますかね?
意外性はありますが、
納得は出来ませんよね。
と言うか、
「エリーは予言者」という、
超常現象的な展開の方が、面白かったのではないでしょうか。
「実体験の記憶だった」というオチは、
合理的な回答ではありますが、
しかし、
観客の意外性を求めて、
合理的な答えに着地するのは、
物語のスケールを縮めていると感じました。
物語作者の小説が、
現実世界に影響を及ぼす、
そういう現実改変能力に対し、
スパイ連中が右往左往する展開の方が、
面白かったのでは?
それなら、
段々と現実と物語の境目が無くなって行くとい、
メタ的な危うさで、
スリリングな展開になったと思いますが、どうでしょう。
その為の、
ヘンリー・カヴィルやジョン・シナといった、
豪華キャストだったのでは?
実は、記憶でした!!
というオチだったので、
「アーガイル」の物語がストーリーの主流だったのに、
途中から切り捨てられてしまっていた事が、
勿体ない使い方だなぁと思いました。
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幸せの形は、本人のもの
そんな感じのどんでん返しの連続で、
『ARGYLLE/アーガイル』のストーリーは残念な感じになっていますが、
個人的に、描かれているテーマには、
面白いものがあったと思います。
本作はスパイアクションであるのと同時に
ロマンスものでもあります。
冒頭、作中劇「アーガイル」にて、
カッコ良いの代名詞みたいなヘンリー・カヴィルと、
セクシー過ぎるラグランジェを演じたデュア・リパのダンスシーンが描かれます。
映画の主役と言えば、
こういう美男美女の活躍が思い浮かびます。
しかし、
本作の現実パート、
実際の主人公は、
『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』(2022)の頃より、更にムチムチというか、
顔の良さでデブを誤魔化しているブライス・ダラス・ハワードと、
ちょっと冴えない、脇役顔というか、
ジョージ・W・ブッシュ顔のサム・ロックウェルです。
ブライス・ダラス・ハワードなんて、
スパイの「ケリー」時のオールバックの髪型なんて、
二回りデカいフローレンス・ピューみたいになってますもんね。
そんなデブとオッサンのロマンスなんて観て、
面白いのかね?
い~や、
これが面白いのです!
何が良いのかと言いますと、
エリーとエイダンが、
人に恥じる事なく、愛情表現している所です。
本作、
やろうと思えば、
本篇をヘンリー・カヴィルとデュア・リパの二人で作れたハズです。
しかし、
この見目麗しい二人は、
フィクションの中にとどめた。
現実の二人は、
ちょっとデコボコ具合が目立ちます。
それでも、
アクションシーンの白眉の一つである、
色取り取りの発煙筒の煙の中で、
ダンスを踊りながら銃を撃つシーンに、
本作のハイライトが観て取れます。
冒頭の「アーガイル」でのダンスシーンと対となるこのシーンは、
まるで、
セックスの疑似表現であるかの様なイチャイチャぶり。
窮地に陥りながら、
完全に二人の世界に浸りきっています。
このシーン、
赤外線映像に切り替えたリッターの視点では、
普通に二人で交差しながら銃を打っている様にしか見えないんですよね。
しかし、
二人にとっては、
組んず解れつ、
足を広げてリフトアップしつつ、
両手の銃を回転しながら撃つ、
的な、曲芸をしている感じなんですよね。
愛というものは、
主観と客観で、これだけ違う。
観ている方は、
ヘンリー・カヴィルの方が良かったと
最初は思うかもしれない。
しかし、
相手を想い、愛するという事には、
余人が入ってどうこう言う余地など無いのではないか?
二人の世界を如何に築くか、その方が、
見た目云々言うより、よっぽど肝要なのだと、
本作は、訴えているのではないでしょうか。
敢えて、
デブとオッサンのロマンスを描く事で、ね。
ストーリーにはダメだししたいですが、
ロマンスの描き方は、
私は結構、好きですね。
ケレンミと悪ノリが同居するアクション、
どんでん返しの連続のストーリー、
それに、ロマンス風味を加える…
『ARGYLLE/アーガイル』は、
その説明だけ聞くと、
傑作の様に思えますが、
う~ん、惜しい、
もう一声!!というのが正直な感想です。
でも、観ている間は楽しい作品と言えるのではないでしょうか。
さて、
ラストシーン、
キングスマンとの関係や
現実にアーガイルが存在している事の謎が描かれます。
どうやら、
続篇も意識しているっぽいですが、
続く…のか!?
何だかんだ、今後もマシュー・ヴォーン作品は観て行きますので、
その辺も注目したいです。
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