映画『ザ・スイッチ』感想  女子高生と殺人鬼が!?「私達、入れ替わってるゥ~!!??」」

可愛いのにスクールカースト低めのミリー。若干嫌がらせを受けつつも、友達2人と学園生活を楽しみつつ、着ぐるみを着てアメフトの応援をしていた。
その夜、酔いつぶれて迎えに来ない母に放置されたミリーは、連続殺人鬼に襲われる。危うい所で駆け付けた警官の姉のおかげで九死に一生を得たミリーだが、どうも様子がおかしい。
翌日、13日の金曜日、何が起こる?、、、

 

 

 

 

監督はクリストファー・ランドン
日本でもスマッシュヒットした(!?)
ハッピー・デス・デイ』(2017)
ハッピー・デス・デイ 2U』(2019)の監督。

 

出演は、
ブッチャー(殺人鬼):ヴィンス・ヴォーン

ミリー:キャスリン・ニュートン
ナイラ:セレスト・オコナー
ジョシュ:ミーシャ・オシェロヴィッチ
ブッカー:ユリア・シェルトン
シャーリーン:ダナ・ドローリィ
コーラル:ケイティ・フィナーラン 他

 

 

 

皆さん、最初に貰えるポケモン、いわゆる「御三家」で一番好きなのは、
どのポケモンですか?

私は「ワニノコ」ですね。
やっぱり、一番最初にやった『ポケットモンスター金』で、
一番最初に選んだポケモンですので。

まぁ、
人に拠っては、「ヒトカゲ」とか「ポッチャマ」だったり、
思い入れはそれぞれだと思います。

 

で、
アニメのポケモンのヒロインと言えば、
誰を思い浮かべますか?

私はやっぱり、カスミかなぁ?
そのカスミのポケモン「マ~イ、ステディ」達の中でも、
トゲピーやヒトデマンと共に印象的なのが「コダック」です。

このコダックというポケモンは、
開発者の増田順一のお気に入りという事でも有名。

そして、映画『名探偵ピカチュウ』(2019)でも
ヒロイン枠のルーシーがパートナーとして使っていたポケモンでした。

 

 

と、いう事で長くなりましたが、
『名探偵ピカチュウ』でルーシーを演じていたのが、
本作での主人公、ミリーを演じるキャスリン・ニュートンなのです。

本作の監督クリストファー・ランドンが脚本を手掛けた『パラノーマル・アクティビティ4』(2012)にて主役級を演じており、

他にも、
『レディー・バード』(2017)
スリー・ビルボード』(2017)
ベン・イズ・バック』(2018)等の注目作にも出演し、
マーベルシリーズの「アントマン」の続篇にも出演しているとの事。

今、最も注目の若手の一人と言っても過言では無いでしょう。

 

注目の若手が、
そのキャリアの初期にホラー映画に出演する。

これはよく有る事ですが、
そのホラー映画というのが、
あの『ハッピー・デス・デイ』の監督の作品に出た!

これは、一筋縄では行かない、と予測されますが、

まぁ、
予告篇で散々ネタバレされているので、
設定をぶっちゃけますと、

女子高生と殺人鬼の中身が入れ替わる!?
言うなれば、ホラー映画版『君の名は。』的な映画です。

 

もう、この設定を思い付いただけで正解の様な気がしますね。

 

 

連続殺人鬼ブッチャーに襲われた翌日、13日の金曜日。

目覚めたミリーは、自分がブッチャーの体である事に気付き、
また、
ブッチャーの方も、ミリーの体で目が覚めました。

どうやら、襲われた時に使われた、
古代アステカの謎のナイフの特殊効果の所為だとの事。

24時間以内に、もう一度刺さないと、
永遠にこの入れ替わった体のままなのだが、
ミリーの運命や如何に、、、

 

 

そういう意味で、
本作はコメディタッチな描写も多いですが、

基本はあくまでもホラー映画

結構、残虐なシーンも多いですので、
その辺が苦手な人は、引くかもしれません。

 

とは言え、
ホラーとコメディ、そしてサスペンスのバランスも良いし、
女子高生と殺人鬼の体の入れ替わりというアイディアも秀逸。

意外と、この一手間が、
中々、思い付かないんですよね。

ホラー映画という事で、
B級感は否めませんが、

それでも、

高級なB級料理的な感覚を味わう事が出来ます。

 

 

でもな~。

惜しい事に、
日本では『君の名は。』(2016)という先行作品があるんですよね~。

これが、
一手間どころか、
二手間、三手間くらい、アイディアを詰め込んでいたので、

どうしても、
『君の名は。』と比べてしまうと、
ちょっと見劣りしてしまうのもまた、事実。

なので、
鑑賞時は、一旦、『君の名は。』は忘れよう!

そしたら、
フラットな目線で、
ワンアイディアが秀逸なホラー映画として、純粋に楽しめる事でしょう。

『ザ・スイッチ』は、
そんな作品ですね。

 

 

  • 『ザ・スイッチ』のポイント

女子高生と殺人鬼が、「入れ替わってる~!?」

ホラーとコメディの融合

ワンアイディアを活かした脚本の勝利

 

 

以下、内容に触れた感想となっております

 


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  • Don’t think! Feeeel!!

ホラーとミステリの融合を図る作家の三津田信三が、
その著書の中で、登場人物に、
「ミステリなら謎の理屈の解明が必要だが、ホラーならその必要は無い」
的な事を言わせています。

これは、言い得て妙の指摘で、

ホラーならば、
設定の細かい事を気にする必要は無いと言っているんですよね。

作る方も、
鑑賞する方も

 

本作『ザ・スイッチ』で言うと、

体の入れ替わりの原因となる、
古代アステカの謎のダガーの事です。

 

ブッチャーがミリーを襲った時、
謎の効果が発動して、
まるで、『ジョジョの奇妙な冒険』の第一部の冒頭の、
「オサ、オサ」のシーンみたいな場面になるのも謎ですが、

何故、殺害に失敗すると体が入れ替わるのか?
そのメカニズムもまた、謎です。

 

そもそも、
古代アステカのアイテムなのに、
スペイン語で解説がなされているのもまた、
ツッコミどころ

アステカ文明は、
その使われていた言語は、古典ナワトル語だそうです。

つまり、ダガーにスペイン語が使われていたという事は、
スペインがアステカを侵攻した後の遺物なのか?
それとも、
古代アステカのダガーを使ったスペイン人が、
その効果を警告するために、解説文をダガーに彫り込んだのか?

ダガーの設定だけでも、
これだけ妄想が膨らみますが、結局その設定は放置。

 

まるで、
ゲームのレアアイテムの特殊効果みたいなノリで、

「このダガーを使ったら、この効果」
という設定を、
何の疑問も無く受け入れて、映画は進んで行きます。

 

けれども、
細けぇ事は、いいんだよ!
本作は、ホラー映画なんだから!

ブルース・リーも『燃えよドラゴン』言ってたでしょ、
「Don’t think! Feeeel!!」(考えるな、感じるんだ!)とね。

 

  • ホラー映画的冒頭とラスト

さて、本作『ザ・スイッチ』の冒頭。

それは、
いちゃついているカップルは、
殺人鬼にシメられるという、
古き良きホラー映画の常套手段を踏襲しているモノでした。

 

その連続殺人鬼ブッチャーが、
身体能力から、仮面を付けている所から、
どことなく、
ホラー映画「13日の金曜日」シリーズのジェイソンを想起させます。

それは、
タイトルが、謎の「ジャーン」という効果音と共に、
画面にデカデカと表記されたり、

主な舞台の日付が「13日の金曜日」だったりして、

明らかに、
意識した作りとなっています。

 

また、仮面を付けているというのはジェイソン的ですが、

その仮面の造型が、
これまたどことなく、

「悪魔のいけにえ」シリーズの殺人鬼、レザーフェイスも想起させる所もポイント。

ラスト近くのシーンで、
ミリーの体のブッチャーが、
チェーンソーや肉吊り鉤爪を武器として使用している所もまた、
レザーフェイス的です。

 

冒頭から、そういう過去のホラー映画の「本歌取り」をしつつも、

本作のラストは、
最近のホラー映画的な手法を取り入れています。

 

過去のスラッシャー映画、
「13日の金曜日」シリーズや、
「エルム街の悪夢」シリーズなど、

また、スリラー映画の、
『ソウ』(2004)や
『フォーン・ブース』(2002)のラストシーンなどの、

「倒したハズの殺人鬼が、実は生きて居て、ラストシーンで主人公に襲いかかる」とか、
「主人公を罠に嵌めた真犯人が、のうのうと生き残る」的な、
胸クソ悪いラストシーンが、
過去のホラー映画の常套手段でした。

しかし、近年は、
鑑賞後のスッキリ感を意識しているのか、

最終盤、襲いかかって来た殺人鬼を、
キッチリと返り討ちにしてシメるという作品が、
最近のホラー映画の主流のラストシーンになっています。

最近で言うと、
ハロウィン』(2018)や、
ホーンテッド 世界一怖いお化け屋敷』(2019)が、そんな印象を受けます。

 

この傾向は、
『ホステル』(2005)のDVDのオーディオコメンタリーで、
監督のイーライ・ロスが、

「ラストシーンは、サイコが自己満足して終わるものでは無く、主人公が反撃して終わった方が観客もスカッとして面白い」
的な事を指摘した辺りから流れが変わったと、
個人的には思っています。

 

まぁ、映画のラストとしてどっちが良いのかは、
実際に出来上がった作品を観ないと、何とも言えませんよね。

『キャビン』(2012)や、
『ドント・ブリーズ』(2016)
サマー・オブ・84』(2018)など、

何とも言えない感じのラストシーンでも、
ホラー、スリラー映画の傑作はありますしね。

 

  • 殺人と脚本

本作『ザ・スイッチ』は、
ホラー映画でありながら、
女子高生と殺人鬼が入れ替わっているという設定も活かし、
コメディタッチな場面も多いのが、面白い所。

特に、
中身が女子高生の体はオッサン状態のミリー」の演技が、
本作のキモなのではないでしょうか。

「キャー」と言って叫んでドタバタドンくさく走ったり、
親友と「友達サイン」をしたり、
赤面モノのポエムを朗読したり、
好きな男子とチューしたり、

本作のコメディ部分を担う存在となっております。

 

一方、
「中身は殺人鬼の体は女子高生状態のブッチャー」は、
従来のスラッシャー映画のお約束通りに、
様々な手法で殺人を行う事になります。

 

冒頭、
ブッチャーは、残虐無比に犠牲者に襲いかかります。
このシーンは、
まぁ、ホラー映画でいちゃつくというフラグを立てたという罪はありますが、
基本的には、無作為の殺人という態です。

しかし中盤以降、
ミリーの体のブッチャーが行う殺人の犠牲者には、
共通点があるんですよね。

それは前半、
普段のミリーの学園生活で、
彼女を苛めていたヤツ達なのです。

 

中身が殺人鬼とは言え、
やはり、見た目はミリーという事で、

女子高生が無差別連続殺人を行うという絵面は、
観客の心理的に、ストレスを感じるものとなってしまいます。

しかし、
その犠牲者が、ミリーを苛めていたヤツ達ならどうでしょう?

観客は基本、心理的に、主人公に感情移入するもの。

そして、
ホラー映画の愛好家という、私の様な陰キャ寄りの方々ならば、
いじめっ子がぶっ殺される場面で溜飲が下がるという、
暗い喜びを感じてしまうんですよねぇ。

 

着ている服、恰好をイジる同級生、
授業で嫌味と偉そうな説教を垂れる教師、
顔を見なければヤれるとか、何様のつもりなのかという筋肉バカ。

犠牲者は、前半の学園生活で、失礼なヤツばっかり、
死んで当然とまでは行きませんが、
彼達が死ぬ事に、心理的な障壁は大分下げられているんですよね。

 

思えば、
監督の前作の『ハッピー・デス・デイ』でも、
何度も死ぬ主人公のツリーが、
ビッチでタフだったからこそ、
主人公の死から、観客の受ける心理的なストレスを軽減していました。

一見、コメディタッチな部分にだけ目が行きがちですが、
こういう、細かい、徹底した設定が、
本作の面白さでもあるのです。

 

  • ラストシーンの一つの解釈

細かい設定と言えば、
体が殺人鬼のミリーが、スーパーで、
試着室の壁越しに彼女の母親と会話するシーンが好きです。

サングラスをかけると、世界が違って見えて、
自分が、違う人間に思えるのと同じで、

(体が)別人というフィルターがある事で、
ミリーも、母親の方も、
普段言えない本音の部分を、お互い素直に打ち明けている場面です。

話の本筋とは関係ありませんが、
後に、
親子関係の進展に繋がっているというシーンであり、

こういう余白というか、
お遊びの場面は、私は好きです。

 

個人的には、こういった、
もっと入れ替わりを活かした場面があっても良いと思いました。

例えば、
殺人鬼の身体能力を活かして、もっと大胆な事をしたり、

また、
ミリーの体を活かして、
『バトル・ロワイヤル』(2000)の柴咲コウみたいに、
SEXで釣って殺すみたいなシーンなど。

しかし本作は、
そういった本筋と関係無い無駄を極力省いて
コンパクトに、シェイプアップした作りで、テンポを重視している様にも感じました。

そのテンポ重視の姿勢は、
『ハッピー・デス・デイ』でもそうでしたし、
監督の持ち味なのだと思います。

 

さて、そんな本作のラストシーン、
生きていたブッチャーが、ミリーの家にやって来ます。

普通は、
ブッチャーがミリーを殺しに来たシーンに見えますが、

まぁ、一つの解釈ですが、
私にはこのシーン、

逆に、
ブッチャーが、ミリーに殺される為に来た様にも見えました。

 

体が入れ替わるとは、どういう事でしょうか?

思考が、体を制御しますが、
逆に、思考の方も、体(が本来持っていた記憶)の影響を受けているという事にも成り得ないでしょうか

実際、
ミリーはブッチャーの体で大胆になりましたし、

ブッチャーは、
その殺人を行うのは、ミリーを苛めていた相手だし、
姉に劣等感を抱えて云々と指摘もしていました。

 

そういう二人なので、
入れ替わりが、元に戻った後も、
互いの影響から抜け切れていないのかもしれません。

ブッチャーが敢えてミリーを狙い、
そして、
「お前の自信の無い人生を『fix』する」と発言したという事はつまり、
言い換えると、

お前の人生を「確固たる」自信のあるものとする為に、
俺はやって来たんだ

とも受け取れるのではないでしょうか。

 

殺人鬼の「自信」というものは、
いざとなれば、相手を殺す事が出来るという覚悟、
それを、
自らの体をもってして、相手に提供した

そしてミリーは、
蹴りでブッチャーの体に刺さった木の杭を貫通させて、止めを差す事で、
その期待に応えた。

そういう風にも、考える事が出来ます。

 

本作、
ミリーは父親を喪っています。

しかし、試着室の場面で、
まるで、父親の様な台詞で、
ミリーは自らの母親と会話します。

その時の体は、ブッチャーの体。

そのブッチャーは、
死んだ父親の代わりに、
死でもって、父親代わりの事をする

何だか、そういう、
父の入れ替わりと、負の父親像、
また、
親やコンプレックスを乗り越える、子供の葛藤も、

本作は描いているのかも、しれませんね。

 

 

 

「体の入れ替わり」というワンアイディアを、
ホラー映画を基本として、
コメディタッチに、テンポ良く描いた作品『ザ・スイッチ』。

前作の『ハッピー・デス・デイ』同様、

ホラー映画の佳作として、
中々面白い作品に仕上がっているのではないでしょうか。

 

さて、監督によりますと、
『ハッピー・デス・デイ』と同じDNAをもつのが、
『ザ・スイッチ』という事。

もしかして、将来的に、
『ハッピー・デス・デイ』の主人公ツリーと、
本作のミリーが共演する様な作品も、
出来るかもしれません。

そういう意味で、本作は、
今後も目が離せない作品、監督であるとも言えます。

 

 

 

 


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