ドラマ『ツイン・ピークス』第29章 解説  物語の終わり、悪夢の始まり!!

第29章の解説をしたい。

この第29章にてツイン・ピークスの旧シリーズは幕を下ろす。

この最終回があったればこそ、今の今まで『ツイン・ピークス』というコンテンツは死なずに生きており、遂に新シリーズが制作されるに至ったと言っても過言ではないだろう。

最終回にしてこの衝撃、恐るべし。

 

第29章
監督:デヴィッド・リンチ
脚本:マーク・フロスト&ハーレイ・ピートン&ロバート・エンゲルズ

 

 

以下ネタバレあり


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  • 本エピソードのチェックポイント

3月25日深夜から
保安官事務所に待機しているクーパーとホーク。
ハリーが帰って来るがウィンダム・アールは見つけられないでいる。

そこにピート・マーテルが入って来る。
ピートのトラックをログレディが盗んだと訴える。
追ったが、森に入り見失ったと言う。

クーパーはゴーストウッドの森が怪しいとにらんでいる。
ピートが荷台の12匹のニジマスの事を訴えると、その数字にひらめいたハリーが「グラストンベリー・グローブ」の事を思い出す。
そこは12本の円形に並ぶシカモアの木に囲まれた場所である。
ホーク、その場所は血塗れのタオルとローラの日記の断片をみつけた場所だと言う。
伝説のアーサー王が眠る墓所、グラストンベリー。
そこが、問題の場所だろうと合点がいくクーパー。

ノックの音がして、ログレディが入って来る。
ピートはトラックの事を尋ねるが、真犯人はウィンダム・アールだとクーパーは宥める。
ログレディはオイルのビンを持ってきていた。
そのオイルはログレディの夫が死の直前に持ち帰り、「このオイルが入り口を開ける」と言ったそうだ。
その臭いを嗅ぐ。
クーパーとハリーはDr.ローレンス・ジャコビーの証言「焦げたエンジンオイル」(scorched engine oil)を思い出す。
そして、ロネット・ポラスキーにもその臭いを嗅いでもらう。
ロネットは知っている様子で動揺している。

森の中、トラックを運転するウィンダム・アール。
アニーを連れてグラストンベリー・グローブにたどり着く。
ウィンダム・アールがアニーを選んだのは、クーパーが恋したからであった。
抵抗していたアニーだが、シカモアの輪の中に入ると途端に静かになる。
そして、アールはアニーを連れて出現した赤いカーテンの向こう側へ消える。

ハーリー家では「ミス・ツイン・ピークス」の混乱で頭を打ったネイディーンが記憶を取り戻す。

ヘイワード家では出て行こうとするドナをアイリーンとベンジャミン・ホーンが宥めている。
真実を言って善行を積みたかったと言うベン。
そこにDr.ウィリアム・ヘイワードが帰宅してくる。
修羅場を察し、ベンに出て行けと警告する。
ドナは泣きわめき、ベンの妻シルヴィアも入って来て一同パニックになる。
Dr.ウィルがベンに殴りかかると、ベンは暖炉に頭をぶつけ倒れる。

マーテル家ではアンドルー・パッカードがケーキ入れの鍵を自分の貸金庫の鍵と入れ替えている。
その様子を帰宅したピートに目撃される。

森の中でクーパーとハリー、ピートのトラックを見つける。
足跡を見つけ後を追うが、クーパーはここからは一人で行くという。
しかし、ハリーも距離をとり静かに付いてゆく。

グラストンベリー・グローブを発見したクーパー。
赤いカーテンが出現して中に入ってゆく。
ハリーはクーパーが消える様子を目撃する。

赤いカーテンによって仕切られた白黒床の通路(1)
左手奥にヴィーナス像がある
クーパーヴィーナス像の前から部屋へ入る。

赤い部屋(A)
中には歌っている黒人と小人がいる。
椅子が3脚ある。

グラストンベリー・グローブの前でハリーは待っている。
アンディがハリーに呼びかける。

10時間後(3月26日)。
ハリーはまだ待っている。

銀行にオードリー・ホーンがやって来る。
ゴーストウッド開発計画の資金融資に対する抗議行動として、貸金庫の入り口に自分を鎖で繋いでしまう。

そこへ貸金庫の鍵を開けにアンドルーとピートがやって来る。
金庫を開けると装置が作動し、爆発が起こる。(AM.8:25

ダブルアールダイナーにて、ガーランド・ブリッグス少佐が妻のベティといちゃついている。
その様子を見ながら、ボビーはシェリー・ジョンソンにプロポーズする。

そこへ、Dr.ローレンス・ジャコビーがセーラ・パーマーを連れて少佐に会いに来る。
セーラが伝えたい事があると言い、口を開く。
変な声で
「私はクーパー捜査官とブラックロッジにいる」

赤いカーテンに仕切られた白黒床の通路に小人の声が響く。
ヴィーナス像は無い
「私はあなたを待っている」

赤い部屋(A)、クーパーと小人がいる。
小人
次に会う時の私は私ではない。
ここは待合室だ。
コーヒー飲むかね?
君の友達がここにいる。

ローラ・パーマーが来る。
ローラ
こんにちはクーパー捜査官。
25年後にまた会いましょう。
では、それまで
と言って消える。

ローラが消えた場所に、グレートノーザンホテルのおじいちゃんウェイターがコーヒーカップを持って座っている。
ハレルヤ!!
と言い、コーヒーをクーパーに持ってくる。
ふと気付くと、おじいちゃんウェイターは巨人になっていた。
「一つにして等しきもの」
と言い、巨人は消える。

クーパー、コーヒーを飲もうとするが固まっていて飲めない。
と、思うとこぼれる。
そして、次の瞬間にはドロドロになっている。

小人、「わぁお!ボブ」と言い、クーパーの方を向き、
Fire walk with me」と言う。

火にイメージと共に部屋が明滅する。
小人もいなくなり、クーパーは部屋を突っ切ってカーテンを潜る。

赤いカーテンに仕切られた白黒床の通路(2)、左手奥にヴィーナス像がある。
像の前のカーテンを潜ると一見先程と同じ赤い部屋(B)がある。

クーパーは通路(2)を戻り、先ほどの部屋(A)へ戻ると小人がいる。
「ここじゃない」と言われたので再び引き返し、部屋(B)にむかう。

同じ所から入ったのに、部屋の対角線から入ってしまう。
小人「違う友達だ」と言い、椅子の後ろに消える。

カーテンに女性の影が映り、マデリーンが入って来て言う。
私のいとこに気を付けて。
クーパーが背を向けると、マディは消える。

また、通路(2ヴィーナス像ありに戻り、部屋(A)に行くとなにもない。
足下を見ると、ミニチュアの小人がいる。目が青い
「ドッペルゲンガー」と言う。

気付くと青目のローラがいる。
ローラが叫びだし部屋は明滅、クーパーに近付いてくる。
ウィンダム・アールのイメージが重なり、クーパーは通路(2)へと反転する。
ヴィーナス像の前からカーテンを潜る。

部屋(B)に入るが、気付くと手は血塗れ、腹部から出血している。
振り返って、カーテンを潜る。

赤いカーテンに仕切られた白黒床の通路(3)に出るがヴィーナス像は無い。
いつの間にか床に血痕が垂れており、それを辿って通路を戻り、部屋(A’)へ入る。

そこには腹部から出血した自分と、花柄のドレスのキャロラインが倒れている。
動き、起き上がると、それはアニーだった。
しかし、クーパーの呼びかけには応じない。
部屋が明滅する。

*ここで描写が曖昧になる。

通路(3ヴィーナス像は無いに戻り、部屋(B’)へむかったのか?
あるいは、部屋を突っ切り、通路(4:ヴィーナス像は無いへ出て部屋(Cへ向かったか?
ここでは下の通路(4)と部屋(C)の説を採りたい。

そこには黒い服のアニーがいる。
「私を殺した男の顔を見たわ」と言う。
クーパー
君を殺した?
アニー
わたしの夫よ。
クーパー
アニー…
アニー
アニーって誰?

いつの間にか青い目のキャロラインになっている。服は花柄。
キャロライン
私よ。
クーパー
キャロライン。

アニーに戻るが、服は花柄。
「誤解しないで、私は生きているわ」

青目のローラに変わる。
ローラは叫ぶ。

クーパーがぴくりと反応すると、目の前にはウィンダム・アールがいた。
服が薄汚れている。
黒い服のアニーが現れ、消える。

ウィンダム・アール
お前の魂をくれるのなら、アニーは助けよう。
クーパー
そうしよう。

ウィンダム・アール、右手のナイフでクーパーを刺す。
その時、炎のイメージ。
動きが巻き戻り、倒れたクーパーは起き上がり、ナイフが刺されなかったことになる。

明滅する部屋。
気付くとボブに捕まったアールが喚いている。
アールに黙れと言い、クーパーには行けと言う。

ボブ
コイツは間違っている。
コイツはお前の魂を望めやしない。
俺が、コイツのを取ってやる。

叫ぶウィンダム・アールの頭から炎が吹き出す。
それをボブが吸収したかの様に見えた途端、炎はおさまりアールは黙り込む。
得意げに笑っているボブを残してクーパーは去る。

奥のカーテンに人影が映る。
カーテンを潜り、奥からやって来たのは青い目のデイル・クーパー

部屋(C)から通路(4ヴィーナス像は無いに出たクーパー。
歩き出すと左手のカーテンから青い目のリーランド・パーマーが出てくる。
「私は誰も殺していない」と言う。

クーパー部屋(A’)へ入ろうとする所に、部屋(C)から青目のクーパーが現れる。

カーテンを潜り、通路(3?ヴィーナス像は無いを走るクーパー。(奥から手前へ)

明滅する部屋(ここがA’か?)を突っ切り、通路(?ヴィーナス像は無いを走る。(手前から奥へ)

同じ経路を辿りクーパーを追いかける青目のクーパー
笑いながら、カメラからこちらを見ている。

通路(?ヴィーナス像は無いを走るクーパー、すぐ後ろに青目がいる。(手前から奥へ)

部屋(A)らしき所でクーパー、青目に捕まる。
部屋が明滅し、笑うボブが現れカメラからこちらを見る。

グラストンベリー・グローブに赤いカーテンがゆらめく。
外は、再び夜になっている。
ハリー、クーパーが倒れているのに気付く。
近くには顔が血に塗れたアニーもいる。
クーパーは反応するが、アニーは全く動かない。

翌朝(3月27日グレートノーザンホテル、部屋で寝かされているクーパー。
ハリーとDr.ウィルもいる。

クーパーは目を開ける。
本人は寝ていなかったと主張している。
アニーの事を尋ねると、ハリーは病院にいて大丈夫だ、と答える。
しかし、Dr.ウィルの反応は怪しい。
クーパーは歯を磨くと言い、起き上がり洗面所へ行く。

クーパー、左手で歯ブラシを持ち、右手の磨き粉を握りしめて洗面所に垂らす。
そして、おもむろに鏡に頭突きをする。
その鏡像はボブ
異変に気付き、クーパーを呼ぶハリー。
クーパーも鏡像のボブも額から血を流している。

揶揄するように「How’s Annie?」(アニーはどうした?)と繰り返し、クーパーと鏡像のボブが笑っている。

 

  • 本エピソードの謎

謎:143 オードリー、ピート、アンドルー達の安否は? (
謎:144 ローラの言う「25年後に会いましょう」とはどういう事か? (
謎:145 誰が何の為にガーランド少佐に呼びかけたのか? (
謎:146 青目は一体何なのか? (
謎:147 ウィンダム・アールの頭から吹き出た火は何か? (
謎:148 ボブは何故ウィンダム・アールの魂は取ったのに、クーパーは行かせたのか? (
謎:149 青目のクーパーは何? (
謎:150 アニーの容態は? (
謎:151 クーパーはボブに取り憑かれてしまったのか? (A)(

 

*(推)は私が独自に解釈して答えを推測したページに飛びます。

 

  • 本エピソードによって解明された謎

謎:33 12本のローソクと盛り土の意味とは? (第2章
答え: グラストンベリー・グローブを表していたと思われる。

謎:34 赤い部屋は何? (第2章
答え: ブラックロッジ。

謎:54 公園でマデリーンを見つめているのは誰? (第6章
答え: 第14章でのマデリーンのセリフ、第8章でのDr.ジャコビーの証言を勘案すると、ボブまたはブラックロッジと関わった臭いだと分かる。つまりリーランド・パーマーだと思われる。

謎:55 Dr.ジャコビーを襲ったのは誰? (第7章
答え: 謎:54と同じく、リーランド・パーマー。

謎:58 ルームサービスのおじいちゃんが「あなたを存じております」と言った意味は? (第8章
答え: 巨人の時に会った記憶が残っていた様だ。

謎:64 巨人は何者? (第8章
答え: おじいちゃんウェイターを依り代にしている。ジェラードに憑いているマイクの様なもの。

謎:69 Dr.ジャコビーの嗅いだ「焦げたエンジンオイルの臭い」とは? (第8章
答え: ブラックロッジの入り口に溜まっているタール状の液体の臭い。ボブが出現する時にも臭ってくる。

謎:99 ボブは今、何処へ? (第16章
答え: ブラックロッジに潜伏していた。新たな宿主を探している?

謎:106 ブラックロッジとは? (第18章
答え: 赤い部屋。

謎:115 ガーランド少佐が言う「恐ろしい事が起こる」とは? (第21章
答え: 今回の一連の事件の事であろう。

謎:140 ブラックロッジへと至る時と場所とは? (第27章
答え: 時間は夜、場所はグラストンベリー・グローブ。

謎:141 ボブと赤い部屋が出現した場所は何か? (第27章
答え: グラストンベリー・グローブ。ブラックロッジへの入り口。

謎:142 箱から出て来た鍵で何が開く? (第28章
答え: 銀行の貸金庫だが、トーマス・エッカートの意趣返しであった。

 

 

本エピソードは第7章を思わせる怒濤の展開が繰り広げられるが、その中でも出色なのがやはり、赤い部屋=ブラックロッジの描写だ。

悪夢をそのまま映像化したその描写は、夢であるが故の対処不能さをまざまざと見せつけてくる。

ハッキリとは明言されず、しかし多くの謎が解明されつつも新たにまた謎が発生したこの第29章。

ボブに憑かれた?クーパーの笑いで終わるという衝撃の結末は不満を残しつつも、「謎の解明が謎を生む」という『ツイン・ピークス』ならではの結末であった。

 

そして、物語と謎は『ツイン・ピークス ローラ・パーマー最期の7日間』へと託される。

 

 

 

 

 

 


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次回は、悪夢的状況をも打破した男の話、映画『ビニー/信じる男』について語りたい。